著者
田尻 聡 河嶋 洋一 樋本 勉 門 武博 佐渡 一成
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
pp.76, 2006 (Released:2007-05-09)

【目的】点眼容器の識別性補助のために2003年12月より『点眼容器用識別シール』を提供し、評価を得ているが、その識別シールでも点眼容器(ディンプル®ボトル)間の識別が困難な重度のロービジョン患者を対象とし、点眼容器底部に装着するプラスチック製のアタッチメントを開発した。点眼容器識別のアイデアの一つとして考案されていた底部アタッチメントは、これまで画像のみであった(佐渡:眼紀54:647_-_651,2003)が、そのアイデアをベースに、試作品を作成し、ディンプル®ボトルへの装着性を検証した。 【対象および方法】丸型、三角型、四角型の3つの形状でエッジ部分が角ばっているタイプとなだらかになっているタイプの計6タイプの底部アタッチメント試作品を製作しロービジョン専門医を含む複数の眼科医にその試作品について意見聴取した。一方品質面においては、底部アタッチメント試作品を用いて、温度や材質劣化によりディンプル®ボトルの抜けなどが生じないか、また落下により簡単に外れないかの苛酷使用試験を行った。 【結果】意見聴取の結果、形状については丸型、三角型、四角型の3形状を支持する意見が多く、またエッジ部分については、点眼動作への影響が少ない、なだらかなタイプが支持された。一方品質面については、3年予測結果のアタッチメントの抜け圧は基準となる初期切削品の数値より高い値が得られ、苛酷使用下における抜けに問題はないことがわかった。また、落下については、抜け、外れ、割れは発生しなかったが、当たり所により徐々に抜けかかることがわかった。 【考察】手指の感覚が著しく低下している患者であっても、底部アタッチメントを装着することで、ディンプル®ボトル間の識別性は向上すると考えられる。今後、ロービジョン患者の実際の使用感も踏まえて、底部アタッチメントのさらなる改良も検討している。
著者
守本 典子 松尾 俊彦 大月 洋
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
pp.70, 2006 (Released:2007-05-09)

目的:網膜色素変性の白内障手術の有効性と危険性、および患者のQOLの変化と満足度を調べること。 方法:岡山大学医学部・歯学部附属病院眼科にて、平成16年6月から18年3月までに白内障手術(無着色眼内レンズ挿入)を施行した12人21眼について、受診経過、手術合併症、視力変化などを診療録から検索し、術前の情報、見え方の変化、生活の変化、期待との乖離、手術して良かったか、などを患者から聞き取った。 結果:ロービジョン外来で初めて白内障手術を勧められたものが4人あった。難しいから、改善が期待できないからと、手術を保留にされていたものが1人ずつあった。同病の仲間からネガティブな情報を得ていたものが2人あった。しかし、全員が病態をよく理解し、主治医を信頼して手術を受けていた。矯正視力は改善17眼、不変2眼、低下2眼であった。自覚的変化は、視力の改善10人、不変2人、羞明の改善4人、悪化8人であった。また、読み能力は改善8人、不変4人、移動能力は改善6人、不変6人、日常生活全般では改善10人、不変2人であった。合併症は、後発白内障(レーザー治療)が7眼に生じ、一過性高眼圧(薬物治療)が1眼、前嚢収縮(レーザー治療)が1眼あったが、治療が奏効した。期待との乖離は、期待以上7人、期待通り2人、期待以下3人であった。全員が「手術して良かった」と回答した。 結論:1)8割以上で日常生活が改善し、悪化したものはなかった。2)後発白内障以外の合併症は少なく、重篤なものはなかった。3)羞明の増強が多かったため、今後は着色眼内レンズに変更する。4)「期待通り」より「期待以上」が多かった背景に、手術に消極的な医師と過度に不安を抱く患者の問題があると思われ、予後推定の手がかりを得るための検査法の探求と定期受診の徹底が望まれる。5)インフォームド・コンセントができていれば、結果に関係なく、満足が得られる。
著者
平原 尚武 園 順一 松坂 治男 新井 愛一郎
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
pp.90, 2006 (Released:2007-05-09)

【目的】 視覚障害者を対象にした、パソコン指導方法について、電話による遠隔講座の可能性を探る 【対象と方法】 視覚障害者でパソコンに興味は持っているが、近くに教えてくれる場所がない、または、一人で出かけるのは困難な方達を対象に実証実験を行った。 IP phone など、通信コストの安価な手段を利用し、実運営でも実現性のある手段を利用した。 使用パソコンは原則として、主催者で準備したものを使用したが、パソコン保有者の場合は希望により、個人のものを使用した。 スクリーンリーダとしては95READERを、文字入力練習にはメモ帳または、ワードパッドを使用し、メーラーとして、MMメールを使用した。 今回の指導目標はメールの送受信が自由に行えるようになる事とした。 時間は、合計20回、30時間で学べることをを目標とした。 【結果】 1度に、5人に対して指導を行い、これを4回開催した。 講師は11人、そのうち視覚障害者が8人であり、視覚障害者の社会活動への参加という意味においても、意味のある講座形態であると言える。 受講生は19名であった。 始める前は、windowsの起動や終了方法も知らないものが、全員がメールの送受信ができるようになった。 また、この講座を受けたことにより、パソコンを6名が購入した。 購入はしていたが、操作方法が分からなくて困っている人も何名かいた。 【結論】 スクリーンリーダを使用することにより、受講生の操作が電話を通じて手に取るように分かる。 また、マウスカーソルのように位置が固定しない装置を使用する必要がなく、絶対位置のはっきりとしたキーボードのみの操作方法なので、 受講生の画面が見えなくても充分に指導できることが確認できた。 問題点としては、何らかの理由により、スクリーンリーダが音声を発声しなくなった時の対応方法である。 今回は実証実験と云うことで、家族、または、近くに晴眼者がおられて、いざと云う時には画面の状態を説明してもらえる事が可能な人を受講生とした。 今後のテーマとして、リモートメンテナンス方法について調査を始める。 以上