著者
石川 哲
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.47-52, 2001-07-15 (Released:2009-10-29)
参考文献数
14

最近話題のシックハウス症候群、化学物質過敏症(MCS)に関してその要点を総説的に解説した。本症は微量化学物質の慢性接触により生じた生体の自律神経、中枢神経、免疫系、内分泌系を中心とする過敏反応である。感覚器としての眼は視力低下、かすみ、中心部が見にくい、つかれ眼などの症状、訴えが最も多い。眼は診断にもっとも役に立つ器官である。何故ならば定量的に障害が測定出来るからである。現在特に患者が多いのは新築により生じた症例が中心をなしている。現代人は過去100年前には無かった合成の化学物質の蓄積が既に高く生体の解毒システムがそれに動員されているので、本来ならば反応しない低いレベルの物質でも閾値が低く反応が起こり発症する可能性が強い。現在我々の周囲の環境劣化は健康問題一つとっても21世紀には絶対に放置出来ない所まで来てしまっている。Sick House, MCS問題で悩んでいる患者もこの環境劣化現象の結果現れた可能性が強く今後我々も真摯な立場で環境問題に対処する必要がある事を強調した。
著者
清水 みはる 中村 桂子 奥村 智人 澤 ふみ子 濱村 美恵子 稲泉 令巳子 筒井 亜由美 南 稔治 江富 朋彦 菅澤 淳
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.99-105, 2006-08-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
6

はじめに:近年、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)などの軽度発達障害児の問題は教育的な領域でクローズアップされてきている。大阪医科大学LDセンターで視知覚訓練などを行っている児童を対象に、眼疾患のための視知覚の発達の遅れが疑われる症例に関して、LDセンターと連携して眼疾患の検討を行う取り組みを始めているので報告する。対象・方法:対象は軽度発達障害児22名(男児16名、女児6名)で、小児科で知能検査WISC-IIIを行い、眼科にて精密検査を行い眼疾患を有する場合は治療を行った。結果:対象児のWISC-III知能検査の結果は言語性IQが88.7、動作性IQが78.4であった。視覚運動系の発達がやや悪い結果を示し、見る作業が苦手な傾向にあった。視知覚に影響するような眼疾患としては間歇性外斜視および外斜視が12名で、そのうち輻輳不全を伴うものが8名、内斜視2名、上斜筋麻痺1名、眼振2名、屈折異常があり眼鏡処方を行ったのは14名、そのうち弱視治療を行ったものは3名、斜視手術施行したのは3名であった。結論:軽度発達障害児は視知覚の遅れを伴うものが多いが、原因が眼疾患によるものか、発達の遅れによるものか鑑別は難しい。今回の結果より視知覚に問題を持つ軽度発達障害児には治療の必要な眼位異常や屈折異常が多く見られ、今後眼科と小児科や発達に関わる専門機関との連携が必要と思われた。
著者
筑田 昌一 村井 保一
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.69-72, 1988-11-30 (Released:2009-10-29)
参考文献数
4
被引用文献数
8 11

A case of the manifest esotropia after viewing a stereoscopic movie was reported.This case was 4-years-old boy at that time.When he got home after viewing a stereoscopic movie, his mother recognized a manifest esotropia on his right eye.Glasses were prescribed and continued to wear, however, esotropia was unchanged.An operation of the deviating eye was performed, and binocular function following surgery was almost normal.
著者
魚里 博
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.61-66, 2006-08-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
9
被引用文献数
1

視力や屈折などの視機能の測定は、眼科検査の最初の必須項目であるが、その評価手順は簡単ではなく生理学的および心理学的な多くの要因の相互作用も要求される。瞳孔径はこのような屈折や視力などの視機能検査に関係する重要な因子であるが、その効果は複雑である。我々は瞳孔径や収差が両眼視下や単眼視下の視機能検査に及ぼす影響を検討した。視力やコントラスト感度測定中における瞳孔径を経時的に連続測定した。収差測定はOPD-Scanにより行い、得られたゼルニケ係数をSchweigerling法により両眼視下あるいは単眼視下の瞳孔径に合わせた径で再計算した。両眼視下のコントラスト感度(logCS)は単眼視下のものより有意に高い感度を得た。両眼視下の視力は単眼視下より有意に良好であった。平均瞳孔径は両眼視下で単眼視下よりも有意に小さかった。瞳孔径が減少するに従い、光学収差は有意に増加した。このことは、単眼から両眼への瞳孔径の減少(縮瞳)は、眼球光学系の光学収差を減少させ、ひいては自覚的な視機能を改善するのに貢献していると考えられた。単眼視から両眼視下あるいはその逆に伴う瞳孔径の変化は、日常臨床における各種視機能検査へ重要な影響を与えることを常に考慮すべきである。
著者
深井 小久子
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.49-61, 1998-07-10 (Released:2009-10-29)
参考文献数
32
被引用文献数
3 3

1.視能矯正ニーズの変遷視能矯正は小児の弱視と斜視が主要対象であったが,早期発見と予防・治療の進歩で,重篤な弱視や斜視の感覚運動異常は減少した.1993年には,視能訓練士法に検査業務が明確化され,視能検査が拡充した.21世紀を間近にして視能矯正の社会的ニーズは,乳幼児の健診,成人病検診,リハビリテーション(眼球運動障害),ハビリテーション(Low Vision),高次脳機能(学習障害,重複障害等)の領野に発展がある。本報では高齢社会でニーズが高まっている「後天性眼球運動障害の視能訓練」を報告する.2.どんな後天性眼球運動障害が増加したか23年間の後天性眼球運動障害の視能訓練数は296例であった。その発症原因は,外傷(頭部・眼)が第一位,次いで,炎症や脳血管障害があげられる。これは39歳以下と40歳以上でその頻度は異なる。前者は外傷(頭部・眼)によるものが第一位であり,後者では炎症,脳血管障害による眼球運動障害が増加している。3.教科書どおりの患者はいない後天性眼球運動障害は眼窩機械的,筋性,眼運動神経,核間などの障害で発症し,部位や程度により訓練の適応や効果が異なる。しかし,視能訓練をすすめる前提として「原因は何か」「どんな症状があるか」「何が不自由か」を分析し患者の実際的ニーズを知る。4.効果的な訓練法はなにか相反神経支配の異常と融像異常の状態から視能訓練プログラムを作成した。垂直偏位が水平より大きい場合は眼球運動訓練から輻湊,そして融像訓練にすすむと良好な結果が得られる。5.訓練により“治った”評価296例の結果は,治癒度Iは45%,治癒度IIは約44%であった。訓練の最終目標は,日常生活と社会復帰が“できる”満足度である.従って訓練により“治った”という基準には,日常生活での体験的な評価を含めたものが望ましい.融像の向上と日常生活の不自由度(満足度)の関係は必ずしも一致しなかった。6.視能訓練の社会的意義視能訓練は専門性が高い機能回復訓練であり,これにより社会復帰が可能なものは約88%ある。後天性眼球運動障害は外眼筋自己受容器系の障害であり,融像機能で視覚性と筋性の眼球位置覚を統合させ再建させることができる。この効果を具体的に示し,社会ニーズに応えていくことは,これからの視能矯正の発展につながる.
著者
野口 清子 生田 由美 久保田 伸枝
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.243-247, 2001-07-15 (Released:2009-10-29)
参考文献数
15

調節痙攣は、著明な近視化とそれに伴う輻湊が起こり、学童期の小児にみられることがある。原因は諸説挙げられるが、下垂体腫瘍などの器質的疾患が合併していることもあるため、その除外診断が優先される。今回我々は、視力低下と複視を主訴に来院し、初診時に行った屈折検査のためのサイプレジン®点眼により、複視が劇的に消失した1症例を経験した。当初これらの原因は、調節痙攣と考え、器質的疾患を否定した上で、各種調節検査を経時的に行った。その結果、両眼視下の調節検査と片眼での静的調節検査では、両者の結果に矛盾がみられた。また、静的調節検査で測定毎の検査結果にばらつきがみられたこと、視力検査でもトリック法に反応するなどの心因性の視覚障害と思わせるような結果が得られたこと、欲求不満や環境の変化がみられたことから、心因による一過性の調節痙攣ではないかと思われた。サイプレジン®点眼により複視が劇的に消失したことも心因が関係しているのではないかと考えた。本症例のような原因不明の調節痙攣や内斜視をみた場合、今までの経過や経験を基に、安易に心因性と考え検査や治療に取り組むべきではなく、まず原因の精査と鑑別すべき疾患との鑑別診断をしっかりと行った上で、器質的に何も異常が認められない場合は現症について対処していくべきであると思われた。
著者
原 園江 須藤 聡子 長瀬 良子 橋本 哲也 柱 宗孝
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.157-162, 1990-12-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
8

心因性視力障害と思われる児童29人に,眼科的精査とY-Gテストを行い検討した.小学生では発症人数に性差は見られず,中学生は女児のみであった.視力障害は軽度で,自覚のない者が多く,視野はラセン状視野が59%を占めるが,正常視野も34%見られた.Y-Gテストでは,異常は無かった.視力低下に心因の関与が明確な者は41%と少なく,残りは原因となる環境因子が断定しにくく,視力低下が心因から起因していると思いにくい症例もあった.心因の関与が明確な者も,そうでない者も半数以上改善が見られるが,心因が明確な者の方が僅かに改善率が良い.我々は,精神科の専門教育を受けていないため,なかなか患児や家族から充分な情報を得ることが難しい.心因性の疾患が増加している今日,スタッフの教育を含む病院側の受け入れ態勢の検討が必要だと思われた.
著者
今井 小百合 高崎 裕子 三浦 由紀子 渡辺 好政
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.145-151, 2004-07-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
7

目的:開散麻痺は中枢神経系の器質的病変によるものとされているが、単独でおこることも多く、臨床上同様な症状を示す他の疾患と鑑別することは難しい。治療は複視の解消を目的に行われる。我々視能訓練士は臨床上プリズムを使用する頻度は高い。そこで開散麻痺が疑われた内斜視症例に対し行ったプリズム治療について報告する。対象及び方法:対象は過去5年間に開散麻痺様の内斜視を示した初診時年齢39歳から83歳の6例。内科および神経学的検査を行った後、眼位、眼球運動、両眼視機能、融像幅の検査をプリズムあるいは大型弱視鏡、Hess Chartプロジェクタを用いて行った。プリズム度数は遠見時の両眼性複視が解消する最小のものを求めた。最終来院時にはプリズム眼鏡装用による日常生活での自覚的な改善について調査した。結果:開散麻痺が疑われた遠見内斜視により自覚する両眼性複視を解消するためにプリズム治療を行った結果、4例ではプリズムは不要あるいは減少となった。プリズム眼鏡装用により、複視は全例で解消され日常生活の自覚症状は改善された。結論:前駆症状に頭痛があった2例は、早期にプリズム治療を開始できたこともあり遠見内斜視による両眼性複視は解決した。プリズム使用前には、事前の十分な説明と患者の要望に沿った装用練習が必要である。これらを行うことで高齢者でもプリズム眼鏡装用が可能となった。プリズムは日常生活の自覚症状を改善し、複視を解消する選択肢の1つであると確認できた。
著者
宮 友美 浅野 治子 児玉 州平
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.127-131, 2001-07-15 (Released:2009-10-29)
参考文献数
12

我々は、成長期の近視における眼軸長と屈折度の比較検討を行った。眼軸長は年齢と弱い相関を示した。屈折度は年齢と弱い相関を示した。眼軸長には性差があり、男性の眼軸長が女性の眼軸長よりも長い傾向が得られた。眼軸長は屈折度と強い相関を示した。弱度近視、中等度近視、高度近視の3段階に分類して検討を行ったところ、特に中等度近視において強い相関を示した。眼軸長は弱度近視、中等度近視、高度近視の順に近視の度数が増すほど有意差をもって延長が認められた。
著者
長谷部 佳世子 長谷川 明子 井口 敏子 大月 洋 渡邊 好政
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.115-118, 1994-12-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
3

眼精疲労の治療予後を左右すると思われる要因について検討するために,1990年1月から1992年12月の3年間に眼精疲労症状を主訴として当科を受診した215例を対象に,眼位ずれの有無で2群に分類し,初診時の年齢と他科領域の疾患を合併する割合を比較した.さらに,アンケートによる治療予後の追跡調査をおこなった.その結果,1.眼位ずれのない群では,眼位ずれのある群に比べて,40歳以上の者が有意に多く,他科領域の疾患を有する者も有意に多かった.2.眼位ずれのある群の方が,治療予後が良好であった.3.予後不良例では,肉体的・精神的ストレスを感じている例や,体調と眼の調子が関係あると感じている例が多かった.以上のことより,眼精疲労患者の治療においては,個々の症例の環境や他科領域の疾患に注意を払う必要があると思われる.
著者
野口 清子 生田 由美 久保田 伸枝
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
Japanese orthoptic journal (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.243-247, 2001-11-30
被引用文献数
2

調節痙攣は、著明な近視化とそれに伴う輻湊が起こり、学童期の小児にみられることがある。原因は諸説挙げられるが、下垂体腫瘍などの器質的疾患が合併していることもあるため、その除外診断が優先される。<br>今回我々は、視力低下と複視を主訴に来院し、初診時に行った屈折検査のためのサイプレジン<sup>®</sup>点眼により、複視が劇的に消失した1症例を経験した。当初これらの原因は、調節痙攣と考え、器質的疾患を否定した上で、各種調節検査を経時的に行った。その結果、両眼視下の調節検査と片眼での静的調節検査では、両者の結果に矛盾がみられた。また、静的調節検査で測定毎の検査結果にばらつきがみられたこと、視力検査でもトリック法に反応するなどの心因性の視覚障害と思わせるような結果が得られたこと、欲求不満や環境の変化がみられたことから、心因による一過性の調節痙攣ではないかと思われた。サイプレジン<sup>®</sup>点眼により複視が劇的に消失したことも心因が関係しているのではないかと考えた。<br>本症例のような原因不明の調節痙攣や内斜視をみた場合、今までの経過や経験を基に、安易に心因性と考え検査や治療に取り組むべきではなく、まず原因の精査と鑑別すべき疾患との鑑別診断をしっかりと行った上で、器質的に何も異常が認められない場合は現症について対処していくべきであると思われた。
著者
丸尾 敏夫
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
Japanese orthoptic journal (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.9-19, 2010-12-29
被引用文献数
1

50数年前に始まった我が国の現代斜視学では、両眼視機能の回復が重視され、斜視の早期治療が唱えられた。時代は変わっても、大人の斜視は手遅れで治らないとか、片眼視力障害のある斜視はすぐ戻るという理由で手術をしたがらない眼科医が多い。一方、小児では、無意味な斜視視能矯正が漫然と行われている傾向にある。<BR> テレビで活躍している著名な演出家のテリー伊藤氏は3年前外斜視の手術を受け、手術前の診察、手術、手術後の経過がドキュメンタリーで放映された。テリー氏に、斜視患者の悩みと手術の感想を語ってもらった。斜視患者は両眼視機能は問題でなく、外見に最も苦しんだ。手術は痛みより治るという期待の方が大きかった。手術により見掛けばかりでなく、心の斜視も治った。手術後は活躍の場がさらに広がり、斜視眼がどうしてもっと早く治してくれなかったかと語りかけた。<BR> 斜視の治療目標は、眼位の矯正が第一であり、両眼視機能は飽くまで整容的治癒の後に付いてくる二次的のものである。
著者
高橋 弥生 筒井 健太 藤山 由紀子 清水 公也
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.159-163, 2006-08-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
8

非屈折性調節性内斜視の二重焦点眼鏡による治療はエグゼクティブ型眼鏡が一般的と言われる。我々は、二重焦点眼鏡のアイデアル型レンズを処方し、経過良好な1例を経験したので報告する。症例は現在6歳女児。初診時年齢3歳10か月。高AC/A比を認めたため、4歳8か月時に二重焦点眼鏡のエグゼクティブ型レンズを処方した。処方後、眼位の安定は得られたが、レンズが重いこともあり、下方にずれやすく眼鏡近用部を使いこなせなかった。そこで近用部をより使い易くする目的で、小玉径35mmのアイデアル型レンズを用い眼鏡を処方した。その後の眼鏡の装用状態は良好で視機能の改善がみられた。二重焦点眼鏡のアイデアル型レンズの使用は、非屈折性調節性内斜視の治療の1つになり得ると考えられた。
著者
今井 マユミ 三浦 永理 矢部 智紗 陳 志堂 鴨下 泉
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.74-78, 1993-12-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
6

近年糖尿病眼合併症が増加しており,糖尿病患者の視力測定時に,視力低下や,眼鏡が合わないと不安を抱く患者に接することが多い.屈折度変化を論じた報告では,高血糖により近視化となり血糖の改善とともに遠視化の方向をとるものが多いが,近視化したという報告も認められる.そこで今回著者らは,糖尿病教育入院をしたうちから98名を対象に,主に空腹時血糖値と屈折度を測定しその関連を検討した.結果は196眼中84眼(42.9%)に±0.5D以上の屈折度の変動を認め,変動を認めた84眼中56眼(66.7%)は退院時に遠視化を最高+2.125D呈していた.この遠視化の傾向は入院時に高血糖であり,しかも血糖低下幅の大きいものに高率に認められた.血糖調整時の視力矯正には屈折度の変動を念頭におき,眼鏡処方は慎重を期すとともに,患者にも屈折度の変動がおこることを説明し,安心させることが必要であると思われた.
著者
石黒 進 酒井 幸弘 宇陀 恵子 山田 裕子 内藤 尚久 市川 一夫 玉置 明野
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.151-155, 2003
被引用文献数
14 4

近年開発されたレーザー干渉法を利用して非接触で眼軸長を測定する装置Carl Zeiss社製IOL Master™(以下IOL Master)を用いて白内障眼の眼軸長を測定し、従来の超音波A-mode法(TOMEY AL-2000<sup>®</sup>)と比較した。挿入眼内レンズはCanon AQ-110NV<sup>®</sup>およびAQ-310NV<sup>®</sup>で、眼内レンズ度数の算出にはSRK II式とSRK/T式を用い、角膜曲率半径はIOL Masterには同装置の測定値を、A-mode法にはNIDEK社製ARK700A<sup>®</sup>の値を使用した。IOL MasterとA-mode法との眼軸長測定値の平均の差は0.28±0.10mmで、IOL Masterの方が長く測定される傾向があり、IOL Masterで測定不能な症例は206眼中24眼、約11.7%あった。角膜曲率半径の測定値の平均の差は-0.03±0.05mmで、IOL Masterの方が小さく測定される傾向があった。そのためIOL Masterで測定された眼軸長および角膜曲率半径を用いてSRK II式とSRK/T式とで眼内レンズ度数を決定すると、メーカー推奨のA定数では手術後に目標屈折値よりも遠視化する傾向があるため、IOL Masterに最適化したA定数を設定しなおす必要がある。