- 著者
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大柿 久美子
吉川 邦夫
石川 本雄
藤野 貴康
- 出版者
- 東京工業大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2005
平成17年度にモニターとして募集した現在子育て中の母親達を対象にエネルギー環境教育を行ない、その前後約3週間ずつ計6週間にわたって、それぞれのモニター家庭において次の記録を依頼した。(1)毎日朝または就寝前のどちらかを各自で選択し、1日1回ほぼ同時刻に、電力、ガス、水道のメータを記録する、(2)ごみ収集日には搬出前に焼却ごみの重量を計測する、(3)家族の一人ひとりについて、家にいなかった時間と睡眠により活動しなかった時間を記録する、(4)来客についても来た時刻、帰った時刻、睡眠時間帯を記録する、(5)使用した暖房器具類を記録する、(6)その他エネルギー消費量等に大きく影響する出来事を記録する、という内容で、協力を得ることが出来た。本年度は、これらの記録に気象データを加えたものを用いて、エネルギー消費量がエネルギー環境教育以降どのように変化したかを数値的に解析することで、教育効果が人の行動にどのような変化をもたらしたか評価を行なった。特に電力消費量について、エネルギー環境教育を実施する前3週間の毎日の電力消費量をそれぞれのモニター家庭における生活のパラメータと気象データを説明変数として重回帰分析を行い、その結果得られた回帰係数を用いてエネルギー環境学習会以後の電力消費量を予測し、実測値との残差を求めることで、教育が電力消費量にどのような変化を与えたかを数値的化した。また、教育効果が有意な行動変化をもたらすことが確認された事を受けて、エネルギー環境教育を個人の生活の中だけでなく、社会構造の変革につなげることが重要であると考え、知識社会への変革を持続可能な社会を実現するDriving Forceとすることが出来たと仮定し、一次エネルギー供給量、最終エネルギー消費量、二酸化炭素排出量の将来予測計算を行なった。この計算にはAim-Trendモデル(国立環境研究所)を用いた。本年度の研究成果として、20名のうち8名のモニター家庭で教育効果が電力消費量の減少という行動変化として確認された。データ数の多さに依存しなくても丁寧な分析を行なうことができれば、教育がもたらした行動の変化を数値的に得られることが示され、今後教育のあり方などに関して定量的な議論が行なえる事を示した。エネルギー環境教育を個人生活の中だけでなく、社会構造の変革につなげることが持続可能な社会の形成につながる。その環境負荷低減効果を知識社会モデルに基づいて試算した。