著者
大栗 隆行 文 昇大 矢原 勝哉 欅田 尚樹 法村 俊之 興梠 征典
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

温熱療法と高気圧酸素治療は、それぞれ抗癌剤の治療効果を増感することが確認されているが、両者を抗癌剤に併用した場合に治療効果の増感が得られるかの検討はなされていない。抗癌剤(カルボプラチン)に温熱療法および高気圧酸素療法の両者を併用した際の効果をマウスに移植した腫瘍を用いて検討した。結果としてカルボプラチン・温熱・高気圧の3者を併用した場合、最も腫瘍成長の遅延が生じる点が確認され、有効な治療法となる可能性が示された。
著者
大栗 隆行
出版者
日本ハイパーサーミア学会
雑誌
Thermal Medicine (ISSN:18822576)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.5-12, 2015-06-30 (Released:2015-09-04)
参考文献数
43
被引用文献数
1 5

本邦では1990年より放射線治療併用時にのみ電磁波温熱療法は健康保険適応となり, 1996年以降は保険適応の拡大により全面収載された. 以降, 改定なく浅在性悪性腫瘍または深在性悪性腫瘍に対する一連の加温につき保険点数が設定されている. しかしながら, 電磁波温熱療法は週に1~2回の治療を何度も継続することで効果が発現されることが多く, 経済的・運営面の悪さから本療法が敬遠され普及が阻まれているものと思われる.メタアナリシスまたはランダム化比較試験に基づくレベルIエビデンスとして, 放射線治療との併用で頭頸部癌, 乳癌, 悪性黒色腫, 非小細胞肺癌, 食道癌, 子宮頸癌, 直腸癌, 膀胱癌と多くの疾患群において局所制御率や腫瘍完全消失率の有意な改善が確認されている. 化学療法との併用では, 高悪性度軟部肉腫や肝臓癌においてレベル Iエビデンスが認められる. 全生存率までの有意な改善は, 子宮頸癌と直腸癌では放射線治療との併用において, 高悪性度軟部肉腫では化学療法との併用, 食道癌では化学放射線療法との併用において得られている. 近年, 他の癌腫においても有望なPhase II studyの結果が, 温熱化学療法や温熱化学放射線療法において報告されている.本稿では, 診療報酬改定の根拠となりうる上述の温熱療法の臨床試験の概要や, 現在進行中の温熱療法の臨床試験に関し概説する.