著者
土屋 武彦 法村 俊之 山本 久夫 畠山 智
出版者
Japan Health Physics Society
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.279-284, 1985 (Released:2010-02-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

The radiations emitted from the front surface of CRT of a color-television and a personal-computer display were measured by GM-counter. No difference was observed in the radiation dose between the cases with and without application of a high voltage to the CRT. The radiations were also measured by Si- and Ge-semiconductor spectrometers. It was found that the radiations emitted from CRT were composed of β- and γ-rays, and were essentially emitted from 40K and the nuclides of uranium- and thorium- series contained within the front glass of CRT. The exposure dose rate of these radiations at 50cm from the surface of CRT was, however, less than 1.6×10-3mrem/hr, and it was practically negligible in comparison with that of natural background radiations.
著者
欅田 尚樹 法村 俊之 土屋 武彦
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.137-145, 1993-06-01

在阪の某製造業従業員を対象に1984年度がら1990年度健康診断時にTHI (Todai Health Index)質問票を用いて喫煙の健康に及ぼす影響を検討した。その結果,1)本事業所の男性従業員全体の平均年齢は37歳であり,喫煙率ば84年度(62.4%)から'89年度(57.2%)までに5%強,減少した。以下の解析は,飲酒の影響を除くために,全く酒を飲まない244名を除いた男性1260名の回答結果について行った。2)THI尺度得点では「呼吸器」,「消化器」,「循環器」,「生活不規則性」,「多愁訴」,「直情径行性」において喫煙により訴えの増加を認めた。3)THIの個々の質問項目としては,咳,痰,のどが痛む・詰った感じ,歯をみがくときの吐き気,食欲不振,胃痛,胸やけ,下痢,歯ぐきの色が悪い,口臭,まぶたが重い,皮膚が痒い,顔色が悪い,息切れ,動悸,体が熱っぽい,背中が痛む,早寝早起きでない,仕事がきつい,横になって休みたい,食事が不規則,イライラするなどの種々の訴えが喫煙により増加傾向を示した。予防医学の立場からもこれら身近な自覚症状に及ぼす喫煙の影響について,健康教育等でアピールしていく必要がある。
著者
馬田 敏幸 法村 俊之
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第51回大会
巻号頁・発行日
pp.202, 2008 (Released:2008-10-15)

p53野生型マウスにトリチウム水一回投与によるβ線照射、あるいはセシウム-137γ線をシミュレーション照射法(トリチウムの実効半減期に従って線量率を連続的に減少させながら照射)により3Gyの 全身照射を行ったとき、T細胞のTCR遺伝子の突然変異誘発率は、γ線では上昇しなかったがトリチウムβ線では有意に上昇した。この差異の原因がp53の活性量の違いにあるのかを明らかにするために、次の実験を行った。8週齢のC57BL/6Nマウスの腹腔内に、270MBqのトリチウム水を注射し19日間飼育した。この間にマウスは低線量率で3Gyの被ばくを受けることになる。γ線はシミュレーション照射法で7日間照射し、その後12日間飼育した。飼育最終日にマウスに3Gy(0.86 Gy/min)照射し、4時間後に脾臓を摘出しT細胞分離用とアポトーシス解析のためのタネル法の試料とした。ウェスタンブロット法によりp53の発現量とリン酸化p53の存在量を比較した。p53の活性量とアポトーシス活性を現在解析中であり、突然変異の除去機構について考察を行う。
著者
大津山 彰 岡崎 龍史 法村 俊之
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第50回大会
巻号頁・発行日
pp.35, 2007 (Released:2007-10-20)

p53遺伝子野生マウスでは、p53依存ならびに非依存性修復能により損傷DNAの修復が行われ、修復不能損傷はp53依存アポトーシスによって細胞ごと排除され、放射線催奇形の実験では低線量放射線(LDR)域でほぼ完全に奇形発生が抑えられる。一方p53遺伝子KOマウスではp53非依存性の修復しか働かず、LDR照射であっても奇形発生は完全に押さえられない。このp53による生体防御機構の一端は放射線での奇形発生のみならず、発がんにも関与すると考えられる。もし野生マウスで、LDR照射でがんが発生せず、KOマウスで高率に生じるとすれば、放射線発がんで常に問題となるしきい値存在の有無がこの機構によって解釈できる。p53遺伝子が野生、ヘテロ、KOマウスの背部皮膚を円盤型β線線源(15Gy/min.)で週3回反復照射をマウスの生涯に渡り行った。実験群は各マウス1 回当り照射線量2.5Gy群と5.0Gy群とした。発生した腫瘍は組織学検査ならびに、DNA抽出後p53遺伝子についてSSCPによる突然変異とLOHの解析を行った。KOマウスでは生存期間内に腫瘍の発生はなかった。ヘテロマウスでは2.5Gy群で8/21、5.0Gy群で25/45の腫瘍発生がみられ、野生マウスでは2.5Gy群で8/22、5.0Gy群で6/33の腫瘍発生がみられ発がん開始時期もヘテロマウスより約150日遅れた。ヘテロマウスの腫瘍のうち14/23例でLOHがみられたが、突然変異はなかった。野生マウスでは7/9例に突然変異がみられ、LOHは3/9例にみられた。p53遺伝子の存在状態は明らかに放射線による発がん率と発生時期に影響し、放射線で生じる変異の型がp53遺伝子の存在状態によって異なることが理由であると考えられた。
著者
清田 恭平 吉居 華子 田野 恵三 大津山 彰 法村 俊之 渡邉 正己
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.36, 2007

p53遺伝子の機能は、ゲノム守護神として、DNA損傷時の細胞周期進行制御やアポトーシス誘導を制御し細胞ががん化する過程を抑制すると考えられているががん化への関与は明確でない。そこで、p53遺伝子欠失と細胞がん化の過程における様々ながん形質の発現動態を調べた。本研究では、p53遺伝子正常(p53<SUP>+/+</SUP>)及びノックアウト(p53<SUP>-/-</SUP>)のC57B系マウス胎児由来細胞を用いた。T75フラスコに10<SUP>6</SUP>細胞を植え込み5日毎に継代培養すると、p53遺伝子機能やX線照射の有無に関わらず、すべての細胞が自然に無限増殖能を獲得し不死化するが、p53<SUP>-/-</SUP>細胞だけが造腫瘍性を示すことが判った。このことは、p53機能が細胞の腫瘍化に密接に関連していることを示唆する。そこで、X線照射したp53<SUP>-/-</SUP>細胞におけるがん形質の発現動態を調べた。その結果、p53<SUP>+/+</SUP>細胞では、被ばくの有無にかかわらず継代初期から染色体の四倍体化が生じ、非照射細胞では40~41継代培養(P40~41)時に60%に達し安定して維持された。照射されたp53<SUP>+/+</SUP>細胞では四倍体化ののち三倍体化が起こり、その頻度は、P40~41に30%に達した。一方、p53<SUP>-/-</SUP>細胞では、照射の有無にかかわらず三倍体化が顕著で照射の有無に関わらず50~60%に達した。そこで、30継代時及び90継代時の細胞をヌードマウスに移植すると、p53<SUP>-/-</SUP>細胞は、すべて造腫瘍性を獲得したが、p53<SUP>+/+</SUP>細胞は、全く腫瘍を形成しなかった。生じた腫瘍由来細胞も移植前の細胞と同様に三倍体であることが分かった。これらの結果から、(1)染色体の三倍体化が細胞の腫瘍化に密接に関係し、p53機能は、(2)染色体の三倍体化を抑制することによって細胞の腫瘍化を抑制することが示唆された。
著者
大栗 隆行 文 昇大 矢原 勝哉 欅田 尚樹 法村 俊之 興梠 征典
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

温熱療法と高気圧酸素治療は、それぞれ抗癌剤の治療効果を増感することが確認されているが、両者を抗癌剤に併用した場合に治療効果の増感が得られるかの検討はなされていない。抗癌剤(カルボプラチン)に温熱療法および高気圧酸素療法の両者を併用した際の効果をマウスに移植した腫瘍を用いて検討した。結果としてカルボプラチン・温熱・高気圧の3者を併用した場合、最も腫瘍成長の遅延が生じる点が確認され、有効な治療法となる可能性が示された。
著者
山本 久夫 法村 俊之 片瀬 彬
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.514-521, 1999-08-15 (Released:2011-03-10)
参考文献数
16

テレビジョンのCRT (cathode ray tube) 前面ガラス中に含まれている40K, トリウムおよびウランの放射能濃度を, γ線スペクトロメトリにより定量した。トリウムおよびウランについては, CRT製造者により約2倍も放射能濃度に差があることが示された。一方, 40Kについては, いずれのCRTガラスについても濃度差はほとんどなかった。また, 得られたγ線スペクトルからCRT前面における線量を算定した結果, トリウムおよびウラン濃度が最も高いガラスでも表面から20cm以上離れれば自然放射線線量の1/10以下となり, 無視できるものであることがわかった。
著者
大西 武雄 小松 賢志 丹羽 太貫 内海 博司 渡邉 正己 法村 俊之
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

(1)センサー・緩照射は、NOを介したバイスタンダー効果により蓄積誘導された正常型p53の衰退を促進し、このp53の衰退促進はHdm2による分解促進であることが示唆された。(福井医大・松本)・低線量放射線照射により誘発されたDNA二重鎖切断の認識は、NBS1がはじめに損傷部位のヒストンを認識してヌクレアーゼを損傷部位にリクルートして、次にヌクレアーゼが損傷DNAに結合する二段階機構が明らかになった。(広大・小松)(2)情報伝達・あらかじめの低線量放射線の線量と、次の致死線量の被曝までのインターバルがマウス個体における適応応答に重要であることを明らかにした。(奈良医大・大西)・極低線量の放射線は細胞核由来の情報伝達経路は活性化せず細胞膜由来のERK1/2を経由する細胞内シグナル伝達系を活性化し、ヒストンH3のリン酸化を起こすことがわかった。(長崎大・渡辺)(3)適応を含む機能発現・放射線高感受性のマウス胸腺リンパ腫由来3SB細胞は、低線量照射後短時間の内にアポトーシスで死滅するが、線量率効果が見られなかった。(広大・鈴木)・低線量率照射での生存率上昇は、KU70欠損では観察されず、RAD54及びATM欠損細胞では観察され、低線量率照射回復は相同組換えではなく非相同組換えが主要な経路であることを明らかにした。(京大・内海)・p53依存性アポトーシスを介した組織修復機構がDNA修復機構と協調して働けば、低線量(率)放射線による少々の遺伝子損傷は効率的に排除され、その蓄積は起こらないことを明らかにした。(産業医大・法村)・低線量放射線により誘発される突然変異の質は、生殖腺細胞では欠失型変異の誘発が少なく、体細胞組織とは異なるDNA修復機構をもっていることが示唆された。(東北大・小野)・低線量放射線照射した精子のDNA損傷は遅延的に体細胞突然変異を誘発した。(京大・丹羽)
著者
土屋 武彦 法村 俊之 須藤 清二 橋本 哲明
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.213-220, 1985-06-01

原子力関連華葉所は一般的に市街地と遠く離れた場所に立地しており, また施設的にも放射線防護の関係から他と隔絶された作業環境となっている. そこでこのような特殊な環境で作業している原子力関連事業所の放射線作業従事者がどのような健康意識をもっているかについて, CMI健康調査表を用いて調査した. その結果, 原子力関連事業所の放射線作業従事者は他の一般工場勤務者あるいは医学関係研究者ならぴに診療放射線技師の放射線作業従事者と比較して, 特に問題となる事象を示すようなものは認められなかった.(1985年2月27日 受付)
著者
小野 哲也 法村 俊之 島田 義也 上原 芳彦 上原 芳彦
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

実験動物ではカロリー制限が放射線による発癌効果を抑制することが分かっているが、そのメカニズムは未解明である。そこで本研究では突然変異、染色体異常、遺伝子発現変化などを指標として解析を行った。その結果、突然変異と染色体異常についてはカロリー制限による影響を見出すことはできなかったが、いくつかの遺伝子の発現の変化からは可能性のあるものがみつかり、今後の解析の手がかりが得られた。