著者
大森 雅子
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシア語ロシア文学研究 (ISSN:03873277)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-8, 2002

ブルガーコフの代表作『巨匠とマルガリータ』(1928-1940)には,彼と同時代の宗教思想家で数学者,また物理学者で芸術学者でもある神父フロレンスキーの著作『幾何学における虚数性』(1922)の影響が見られると言われている。しかしながら,両者の影響関係に関する具体的な研究は皆無に等しい。本稿では,『幾何学における虚数性』で展開されるフロレンスキー独自の宇宙論が,『巨匠とマルガリータ』のプロットとテーマに見出し得ることを明示したい。