著者
大江 由香 亀田 公子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.467-478, 2015 (Released:2016-01-28)
参考文献数
81
被引用文献数
1 1

本稿では, 再犯防止を図るための効果的な指導法を探索することを目的として, 近年重要性が認識されつつあるメタ認知と自己統制力, 自己認識力, 社会適応力との関連について文献研究を行った。メタ認知能力が低い者ほど, 必要な情報を察知できず, 視野の狭い短絡的・感情的・主観的な判断・行動をしやすいと言う。そして, メタ認知能力に乏しいと, 衝動性が高くなり, 自己に関連する情報や他者の非言語的なメッセージを読み誤りやすくなる傾向があることが分かり, 文献研究の結果, メタ認知の能力の乏しさが犯罪・非行への準備性を高める得ることが推察された。メタ認知能力は, 知的障害や発達障害などがあってもトレーニングによって鍛えることができ, マインドフルネスを含む第三世代の認知行動療法などによっても涵養し得ることから, 今後犯罪者・非行少年の処遇にメタ認知の向上を目的とした指導法を積極的に取り入れていくことが重要と考えられた。
著者
大江 由香
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.35-47, 2015-01-05 (Released:2017-07-19)
参考文献数
58
被引用文献数
1

本稿では,特に大きな変化のあった性犯罪者の処遇を例に挙げて,ポジティブ心理学的アプローチが評価されてきた理由と,同アプローチに対する批判的見解の双方の視点から検証し,同アプローチを導入することの利点と注意点について考察した。犯罪者に対する責任や問題点の直面化を重視するという処遇方法には,進め方を誤れば犯罪者の自尊感情の低下を招いたり,処遇に対する動機付けを高めにくかったりするといった短所が少なくないが,ポジティブ心理学の観点が追加されることによってそうした短所を補うことができると見られた。ただし,ポジティブ心理学に対する批判は軽視できないことから,ポジティブ心理学的アプローチはあくまで既存の処遇の浸透性を高めるために補足的に使用することが望ましいと考えられた。
著者
大江 由香 森田 展彰 中谷 陽二
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.1-13, 2008-12-31 (Released:2017-09-30)
参考文献数
38

本研究では,J-SOAP-II (Juvenile Sex Offender Assessment Protocol-II) の尺度を用いて,性犯罪少年の類型を作成し,その再非行リスクアセスメントや処遇選択への適用性を検証することを目的とした。方法:1998年から2006年までの間に,接触する性非行で少年鑑別所に入所した男子115名を対象に,保管されている書類から必要な情報を抽出した。2ステップ・クラスター分析の結果,反社会的・衝動的群,非社会的・性固執群,一過的/潜伏群の3群に分類され,この3群はJ-SOAP-IIの尺度や性格などだけではなく,一般的な非行や性非行の再非行率も異なっていた。これらの特徴の差を考慮すると,各群に適した処遇計画を立てることが適当と考えられ,本研究で得られた類型は臨床で利用可能であると示唆された。
著者
大江 由香 亀田 公子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.467-478, 2015
被引用文献数
1

本稿では, 再犯防止を図るための効果的な指導法を探索することを目的として, 近年重要性が認識されつつあるメタ認知と自己統制力, 自己認識力, 社会適応力との関連について文献研究を行った。メタ認知能力が低い者ほど, 必要な情報を察知できず, 視野の狭い短絡的・感情的・主観的な判断・行動をしやすいと言う。そして, メタ認知能力に乏しいと, 衝動性が高くなり, 自己に関連する情報や他者の非言語的なメッセージを読み誤りやすくなる傾向があることが分かり, 文献研究の結果, メタ認知の能力の乏しさが犯罪・非行への準備性を高める得ることが推察された。メタ認知能力は, 知的障害や発達障害などがあってもトレーニングによって鍛えることができ, マインドフルネスを含む第三世代の認知行動療法などによっても涵養し得ることから, 今後犯罪者・非行少年の処遇にメタ認知の向上を目的とした指導法を積極的に取り入れていくことが重要と考えられた。
著者
大江 由香
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.35-47, 2015

<p>本稿では,特に大きな変化のあった性犯罪者の処遇を例に挙げて,ポジティブ心理学的アプローチが評価されてきた理由と,同アプローチに対する批判的見解の双方の視点から検証し,同アプローチを導入することの利点と注意点について考察した。犯罪者に対する責任や問題点の直面化を重視するという処遇方法には,進め方を誤れば犯罪者の自尊感情の低下を招いたり,処遇に対する動機付けを高めにくかったりするといった短所が少なくないが,ポジティブ心理学の観点が追加されることによってそうした短所を補うことができると見られた。ただし,ポジティブ心理学に対する批判は軽視できないことから,ポジティブ心理学的アプローチはあくまで既存の処遇の浸透性を高めるために補足的に使用することが望ましいと考えられた。</p>