著者
池田 英男 大沢 孝也
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.159-166, 1983
被引用文献数
7 17

水耕培養液中のNO<sub>3</sub>とNH<sub>4</sub>の濃度並びに比率がそ菜の生育, 葉中N成分及び培養液のpHに及ぼす影響を検討した. 実験1では, キュウリ, レタスなど10種を供試して, 培養液中のNO<sub>3</sub>/NH<sub>4</sub>比がme/lで3.0/0~0/3.0 (低Nシリーズ) と12/0~0/12 (高Nシリーズ) の各7区を設けた. また実験2では, レタス, キャベッなど4種を供試して, NO<sub>3</sub> (1~24me/l)シリーズ, NH<sub>4</sub> (1~12me/l) シリーズ, NO<sub>3</sub>4me/l+NH<sub>4</sub> (1~12me/l) シリーズ, NO<sub>3</sub>12me/l+NH<sub>4</sub> (2~12me/l) シリーズの計20区を設けた. 実験1, 2ともに培養液のpHは毎日1回測定して, その都度6.0に調節し, 原則として3週間栽培した.<br>NO<sub>3</sub>施用の場合に比べて, NH<sub>4</sub>施用では一般に葉中NH4-N濃度が高く, 生育は阻害された. しかし少量のNO<sub>3</sub>の併用により葉中NH<sub>4</sub>-N濃度は低下し, NH<sub>4</sub>害は軽減あるいは防止された. またNO<sub>3</sub>4あるいは12me/lにNH<sub>4</sub>を併用した場合には, NO<sub>3</sub>のみを施用した場合よりも生育は明らかに促進された.<br>葉中NO<sub>3</sub>-N濃度は, 培養液中のNO<sub>3</sub>濃度が高まるにつれて高くなった. また低Nシリーズでは, いずれの葉菜も培養液中のNH<sub>4</sub>の比率が高まるにつれて葉中NO<sub>3</sub>-N濃度は低下したが, 高Nシリーズではハクサイ,ホウレンソウなどNO<sub>3</sub>を優先的に吸収するそ菜では,培養液中のNH<sub>4</sub>の比率が高まっても葉中NO<sub>3</sub>-N濃度の低下はほとんど認められなかった.<br>培養液のpHはNO<sub>3</sub>のみを施用すると上昇し, NH<sub>4</sub>のみでは著しく低下した. 両N併用の場合, キュウリ, レタスなどNH<sub>4</sub>を優先的に吸収するそ菜では, 培養液中のNO<sub>3</sub>とNH<sub>4</sub>の比率にかかわりなくpHは低下した. 一方, トマト, ホウレンソウなどNO<sub>3</sub>を優先的に吸収するそ菜では, 両Nの比率が適当な値の場合には, 実験期間中培養液のpHはあまり変化しなかった.
著者
高橋 理喜男 大沢 孝也 赤土 攻 菅原 岩雄
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.14-18, 1968-12-29

1.植物に対する大気汚染の影響を調査する一方法として、1966年に大阪地方の樹木の葉中硫黄音量と大気中のSO_2濃度との関係を調べた。2.調査地点として大阪市内に7ケ所、市外に5ケ所を選定し、各地点でサクラ、イチョウ、サンゴジュ、クス、クロマツの葉を5月、9月の2回(サンゴジュでは12月を加えて3回)にわたつて採集し、葉中硫黄含量を測定した。3.時間の経過につれて、各樹種とも葉中に硫黄が蓄積されたが、そのていどは大阪市内(大気汚染地区)の方が市外よりも著しかつた。4.調査地域を大阪市内、大阪市外とに分けて、それぞれの葉中硫黄含量の平均値を比較すると、どの樹種についても、前者の方が高かつた。5.大阪市内で、とくにSO_2濃度の高いと思われる地点の葉中硫黄含量は著しく高く「津守処理場」ではイチョウ(9月)が1.5%をこえた。しかし汚染度が低い郊外地、たとえば河内長野市では、すべての長種について低い値を記録した。6.以上の結果から、葉中硫黄含量は大気中のSO_2濃度とかなり密接な関連があるものと考えられる。また大気汚染度の高い大阪市内などでは、SO_2を主体とする大気汚染による植物の生育障害に注意する必要があると思われる。