著者
杉田 裕一 澤田 直司 根本 学 大河原 治平
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.500-502, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
4

【はじめに】今回, 幸帽児に対して, 現場で破膜処置を施した症例を経験したので報告する。【症例】30代の1経産婦。妊娠36週で陣痛を訴え救急要請となった。観察開始から17分後に児が娩出されたが, 破水せず羊膜に包まれた状態であったため, 救急救命士が破膜処置を実施した。【考察】本症例について産婦人科医を交えて事後検証した結果, 卵膜が被膜したままでは新生児の死亡や高次脳機能障害を招くため, 児の救命を目的として速やかに破膜処置を行った判断および処置は適切な活動であったとされた。一方, 救急救命士に許可されている産婦人科領域の救急救命処置に破膜処置はなく, 今回の活動は救急救命士法に抵触する可能性が指摘された。【結語】破膜処置が許可されていない現行の法制度では, 救急現場で娩出された幸帽児の生命が脅かされる可能性があることから, 産婦人科領域の救急救命処置に破膜処置を加える検討がなされることが必要と考える。
著者
小野 和幸 大河原 治平 阪本 敏久
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.64-68, 2017-02-28 (Released:2017-02-28)
参考文献数
12

現場での心肺蘇生拒否(do not attempt resuscitation,以下DNARと略す)の意向をもつ家族等に対応するための「救急隊員が行う応急処置に関する要望書」(以下,要望書と略す)について,その使用状況を調査した。平成18年から24年の間に現場でDNARの要望があった対象例を検討した。調査期間中のDNAR対象は12件あり,11件で要望書が提出された。年齢は72歳から100歳まで,性別は男7名,女5名,DNAR意思確認書類を事前に提出されたのは1名,心肺蘇生実施4名,搬送実施9名であった。要望書はDNARの搬送のほか,特定行為を拒否し一次救命処置のみでの搬送や不搬送とすべき傷病者で活用されていた。傷病者の医療拒否権について合意形成がない中でも現場でDNARに遭遇することがあり,要望書は現状の解決策の1つと思われる。解決策として救急業務実施基準等の改定が望まれる。