著者
吉松 組子 有川 二郎 大洞 嗣子 板倉 智敏
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.863-868, 1997-10-25
被引用文献数
22

重症複合型免疫不全 (SCID) マウスをハンタウイルスHantaan76-118およびSR-11株に感染させ正常マウス, 新生マウスおよびヌードマウスにおける感染経過を比較した. SCIDマウスは両ハンタウイルス感染によって感染後32日から38日目に死亡した. ハンタウイルスによって致死的となる新生マウスの場合と異なり, 神経症状よりも全身の衰弱が顕著であった. 感染後2週間目までにBALB/cマウスから脾細胞を移植することによってSCIDマウスには受け身感染防御が成立した. 免疫組織染色と主要臓器からのウイルス分離によってヌードマウスもSCIDと同様に全身感染が成立していることが明らかとなったが, ヌードマウスは感染後, 観察期間の8週間以上生存した. 以上の結果から, マウスにおける致死的なハンタウイルス感染からの防御には宿主の免疫が重要であることが示された. さらに免疫介在性の病原性についてSCIDマウスへの脾細胞移植によって検討した. 感染後3週目に脾細胞移植を受けたSCIDマウスは, 血中抗ハンタウイルス抗体の出現に伴って血中尿素体窒素 (BUN) の上昇が見られ, 宿主の抗ウイルス免疫が病原性に関わっていると考えられた.