著者
川野 恭雅 仲村 佳彦 村井 映 田中 潤一 西田 武司 水沼 真理子 大田 大樹 石倉 宏恭
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.313-317, 2016-05-01 (Released:2016-05-02)
参考文献数
11

二次性腎性尿崩症の治療の一つにインドメタシンがある。今回,我々は原因薬剤としてリチウムが疑われた腎性尿崩症に対し,高用量のインドメタシンが奏功した症例を経験したので報告する。症例は35歳の女性,双極性障害に対し17年間リチウムを服用していた。フェノバルビタールおよびクロルプロマジンの急性中毒のため当院へ搬送となった後,第2病日より450 ml/hrを超える多尿と血清Na値上昇を来し,バソプレシンに無反応であったため,二次性腎性尿崩症と診断した。病歴より原因薬剤としてリチウムが疑われ,治療としてインドメタシン150 mg/dayを投与したが効果がなかった。多尿に伴いcreatinine clearanceが亢進してインドメタシンの薬物血中濃度が低下している可能性を考慮し,インドメタシンを225 mg/dayまで増量したところ,尿量減少および血清Na値の低下を認めた。高用量のインドメタシンは二次性腎性尿崩症に対し,有効な治療法である可能性が示唆された。
著者
杉村 朋子 鯵坂 和彦 大田 大樹 田中 潤一 喜多村 泰輔 石倉 宏恭
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.213-218, 2011-05-15 (Released:2011-07-23)
参考文献数
11

症例は43歳の女性。30歳時に神経性食思不振症と診断され,精神科への入退院を繰り返していた。今回,自宅にて意識レベルが低下したため,救急車で近医へ搬送された。脱水と低栄養状態であり,低血圧,低血糖に対して高カロリー輸液による水分栄養補給が開始された。しかし,多臓器不全を呈したため,第13病日に当センターへ転院となった。臨床経過から,本患者は慢性の半飢餓状態の代謝に適合しており,低リン血症を補正しないまま糖負荷を行ったことによるrefeeding syndromeと診断した。血清リン濃度(IP)0.5mg/dlと著明な低リン血症を呈していたため,直ちにリンの補充を行い,輸液は低カロリーから開始した。低リン血症改善後,ショックから離脱し多臓器不全も改善傾向を示した。しかし,第27病日に敗血症性ショックを合併し呼吸不全の増悪から,第60病日に死亡退院となった。近年,救急・集中治療の領域においても栄養管理の重要性が認識されているものの,依然としてrefeeding syndromeの存在は広く認知されているとは言い難い。神経性食思不振症患者の栄養管理に際しては,refeeding syndromeを念頭に置き,微量元素を含めた低カロリーから開始する栄養補給により臓器不全を回避しなければならない。