著者
沼倉 久枝 白木 まさ子 寺元 芳子 大石 みどり
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.150-155, 1981-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5

煮物における急速加熱と緩慢加熱のちがいを官能検査および糖, アミノ態窒素の定量などにより検討した. その結果は次のとおりである.1) 急速加熱と緩慢加熱とのちがいは, 煮汁の味においては有意差が認められなかったが, 糖量, アミノ態窒素量の測定では, 緩慢加熱のほうが煮汁への溶出が多かった.2) 緩慢加熱で食品の入れ時を変えた場合, 水から入れるよりも沸騰時に入れるほうが糖, アミノ態窒素の溶出率は大差ないが, 煮汁の色, 泡立ちなどに差がみられ, 官能検査の結果からも沸騰時に食品を入れたほうがあくっぽさが少なかった.3) 食品の味は, 煮汁への溶出の多い緩慢加熱のものが評価が低く, とくにじゃがいもは不評であった.4) 緩慢加熱によってとくに糖が生成されるということは認められなかった.今回は食品を同量ずつ加熱して官能検査の試料としたことと, 緩慢加熱を間接加熱の方法で行ったために, たまねぎの臭いが強く残り, とくに緩慢加熱のほうが好まれなかった. 材料配合をくふうし, 蒸気が自由に揮散できる加熱器具を用いれば, 上記の結果から汁ごと食べるシチューなどでは緩慢加熱のほうが好まれると思われる.ただし, 最初から緩慢に加熱すると酸化酵素の活性化が起こりやすいので, 沸騰までは強火で急速に加熱するか沸騰時に食品を入てから緩慢加熱するほうがよい.