著者
大石 奈々
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.549-566, 2018 (Released:2019-03-31)
参考文献数
61
被引用文献数
6 5

近年熾烈化していた「高度人材をめぐるグローバル競争」は, ナショナリズムの高まりから陰りがみられ, 各国で受入れの門戸が徐々に狭まりつつある, しかし日本においてはこうした収縮方向の「制度的同型化」はみられず, 急速に進む少子高齢化と労働力不足を背景に高度人材の受入れ政策が逆に深化している. 政府は2012年にポイント制を導入し, 「高度人材」として認定された外国人に様々な優遇措置を付与することで受入れを推進している. 一方, 高度人材および専門人材 (専門的・技術的分野の外国人) の数は拡大しているが, 他の先進諸国と比較するとまだ数は少なく, 来日した人材の流出も続いている.本稿は, 「制度的同型 (institutional isomorphism)」および「非移住政策 (nonmigration policies)」をキー概念に, 開放的な制度の「模倣的同型化」が結果としての収斂につながっていない要因を社会的・経済的・組織的・制度的な角度から分析する. また国家戦略特区による「外国人受入れの地域化」等, 地域のニーズに沿った新しい人材受入れ政策の展開を俯瞰しつつ, 今後の研究課題を提示する.
著者
桑波田 謙 間瀬 樹省 原 利明 千葉 マリ 南雲 幹 石井 祐子 大石 奈々子 井上 賢治
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第9回日本ロービジョン学会学術総会
巻号頁・発行日
pp.5, 2008 (Released:2009-01-17)

【目的】白杖を利用する視覚障害者の誘導について、屋外では点字ブロックの整備が進んでいるが、公共施設や病院等の屋内では点字ブロックは限定的な整備に留まっている。白杖利用者がより自由に行動でき、同時に高齢者や車椅子利用者等にとっても負担の掛からない新たな仕組みを目指して、床の素材差による誘導の有効性を調査した。【方法】タイルカーペット敷きの空間に点字ブロックとホモジニアスビニル床タイル(以下床タイルとする)による2通りの経路(距離6m、幅50cmのL字型誘導ライン)を設置した。被験者(全て晴眼者)は全員アイマスクを装着し、オリエンテーションの後白杖を使ってそれぞれの経路をエンド部まで辿り、辿りつけるかの成否、掛かった時間、エラーの場所と回数を計測した。学習効果による優位性を考慮し、調査の先行は点字ブロックと床タイルを交互に変えて行った。調査後それぞれの印象についてSD法、リカート法による評価を行った。被験者は52名(男性26名、女性26名)、平均年齢は39.4歳±12.6歳であった。【結果】エンド部まで辿りつけなかった人数は点字ブロック2名、床タイル4名で、共に高い誘導効果が示された。先行した群での辿りつけなかった人数は、点字ブロック1名に対し床タイル4名で同等だった。到達時間は点字ブロック54秒(±29秒)、床タイル50秒(±24秒)で双方に有意差は無かった。印象についての評価では、SD法、リカート法共に点字ブロックの方が評価が高かった。【結論】健常者を対象にした今回の比較調査では、点字ブロックは誘導効果の高いものであるが、その代替案として屋内空間においてはカーペットにタイルを埋め込む等、床の素材差による誘導も可能であることが示唆された。 しかし、本調査は白杖を使用しての歩行に不慣れな健常者にアイマスクを装着してもらって、実験的に作った空間を歩くという調査の為、実証には、日常的に白杖を使用者している人を対象とした実際的な調査が必要だと思われる。