著者
井上 賢治 森 美紀 志村 和可 千葉 マリ 桑波田 謙 間瀬 樹省
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.9, pp.4, 2008

【目的】ロービジョン者ならびに高齢者が、駅からお茶の水・井上眼科クリニックまでのアクセス環境において、不便に感じていることはないかを調査した。<BR>【方法】JRお茶の水駅あるいは東京メトロ千代田線新御茶ノ水駅を通院のために利用しているロービジョン者あるいは高齢者20名(男性9名、女性11名)を対象とした。「駅から当クリニックに来るまでに困っていること」を駅構内、横断歩道、ビル入り口までの通路・階段、ビル入り口からのエレベーターに分けて、各地点の不便を調査した。<BR>【結果】JRお茶の水駅を利用している患者10名(男性5名、女性5名)は、平均年齢74.0±7.4歳、疾患は緑内障および白内障7名、糖尿病性網膜症 2名、黄斑上膜 1名であった。駅からクリニックまでに困っている場所は、駅構内80%、通路・階段50%、横断歩道30%、ビル入り口からのエレベーター 10%で、駅構内が一番多く、特にホーム・階段が狭い、案内が見づらいなどの声が多かった。東京メトロ新御茶ノ水駅を利用している患者10名(男性4名、女性6名)は、平均年齢70.8±5.4歳、疾患は緑内障8名、糖尿病性網膜症 1名、ぶどう膜炎1名であった。駅からクリニックまでに困っている場所は、駅構内70%、通路・階段 50%、ビル入り口からのエレベーター 30%で、駅構内が一番多く、特に千代田線のお茶の水口は駅ホームから改札までが長いエスカレーターのため不便と言う声が多かった。<BR>【結論】JR、東京メトロ利用者に共通していたのは、駅構内で困っていることが多かった。特に駅ホームから改札へのアクセスが階段や長いエスカレーターのみで利用しづらく、案内表示が見づらいと感じていた。患者さんのことを考えると、クリニック内にとどまらず、まち全体のユニバーサルデザイン化を検討すべきである。
著者
桑波田 謙
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第65回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.212-213, 2018 (Released:2018-06-21)

多様な人々へサービスを提供する公共施設は、利用者中心のデザインが求められる。そのデザインは、様々な利用者の身体性から導かれた根拠に基づくデザインである。現在、バリアフリー法等の整備により、公共施設においても誰もが利用しやすい施設を目指して整備が進んでいる。その一方で、画一的なバリアフリー整備による利用者間の利害摩擦(コンフリクト)が課題となっている。「お茶の水・井上眼科クリニック」は、視機能に障害を抱える患者が、受付から検査、診察、会計への一連の移動をおこなえるように、患者の身体性に着目した実践的な調査が行われ、その成果が施設デザインに生かされてきた。そして、そこで獲得した多くの知見は、幾つかの庁舎施設のデザインへと展開されている。いずれの施設も、目の見えづらい利用者にも分かりやすいサイン基準による視覚情報と床材による触覚情報等を連携させ、視覚障害者の利用を前提とした複数の感覚情報による情報提供が特徴的である。コンフリクトの解消を意識したこれらの事例をもとに、様々な利用者の身体性に着目したエビデンス・ベースド・デザインによる情報提供の重要性について考察する。
著者
井上 賢治 間瀬 樹省 桑波田 謙
出版者
一般社団法人日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.A1-A13, 2011-07-15

お茶の水・井上眼科クリニックの開院時にユニバーサルデザインの観点から高齢者やロービジョン者にも分かりやすいサインを目指した。文字フォント、案内表示、トイレピクトグラム、フロアマップの調査を4回行った。クリニック職員220名、緑内障、白内障患者及び高齢者91名を対象とした。パフォーマンス測定法、リカード法、SD法で評価した。文字フォントはロダン、数字フォントはセンチュリーゴシック、誘導サインは濃い青の背景に白文字、フロアマップは最も情報量の少ない形、トイレピクトグラムは男性が標準形、女性がスカートを広くした形、多目的トイレピクトグラムは男女を上段にしたものを採用した。利用者による調査を基にサインを作成し、高齢者やロービジョン者に分かりやすいサインが完成した。
著者
桑波田 謙 間瀬 樹省 原 利明 千葉 マリ 南雲 幹 石井 祐子 大石 奈々子 井上 賢治
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第9回日本ロービジョン学会学術総会
巻号頁・発行日
pp.5, 2008 (Released:2009-01-17)

【目的】白杖を利用する視覚障害者の誘導について、屋外では点字ブロックの整備が進んでいるが、公共施設や病院等の屋内では点字ブロックは限定的な整備に留まっている。白杖利用者がより自由に行動でき、同時に高齢者や車椅子利用者等にとっても負担の掛からない新たな仕組みを目指して、床の素材差による誘導の有効性を調査した。【方法】タイルカーペット敷きの空間に点字ブロックとホモジニアスビニル床タイル(以下床タイルとする)による2通りの経路(距離6m、幅50cmのL字型誘導ライン)を設置した。被験者(全て晴眼者)は全員アイマスクを装着し、オリエンテーションの後白杖を使ってそれぞれの経路をエンド部まで辿り、辿りつけるかの成否、掛かった時間、エラーの場所と回数を計測した。学習効果による優位性を考慮し、調査の先行は点字ブロックと床タイルを交互に変えて行った。調査後それぞれの印象についてSD法、リカート法による評価を行った。被験者は52名(男性26名、女性26名)、平均年齢は39.4歳±12.6歳であった。【結果】エンド部まで辿りつけなかった人数は点字ブロック2名、床タイル4名で、共に高い誘導効果が示された。先行した群での辿りつけなかった人数は、点字ブロック1名に対し床タイル4名で同等だった。到達時間は点字ブロック54秒(±29秒)、床タイル50秒(±24秒)で双方に有意差は無かった。印象についての評価では、SD法、リカート法共に点字ブロックの方が評価が高かった。【結論】健常者を対象にした今回の比較調査では、点字ブロックは誘導効果の高いものであるが、その代替案として屋内空間においてはカーペットにタイルを埋め込む等、床の素材差による誘導も可能であることが示唆された。 しかし、本調査は白杖を使用しての歩行に不慣れな健常者にアイマスクを装着してもらって、実験的に作った空間を歩くという調査の為、実証には、日常的に白杖を使用者している人を対象とした実際的な調査が必要だと思われる。