著者
園田 裕太 大石 風人 熊谷 元 広岡 博之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.1-11, 2019-02-25 (Released:2019-03-27)
参考文献数
89
被引用文献数
4

近年,アニマルウェルフェアと生産性・経済性を考慮した家畜生産が世界的に求められている.本総説では牛肉のフードチェーンにおいてアニマルウェルフェアがどのように牛肉の生産性や消費者のニーズに影響しているかについて主に欧州の先行研究をまとめて検討した.農家レベルではアニマルウェルフェアを考慮することで生産性の向上が見込まれ,輸送・屠畜レベルでは肉量や肉質の損失が軽減されうることが示された.消費者レベルではアニマルウェルフェアを考慮した生産方法による牛肉には付加価値が付与される傾向が認められた.これらの結果から,アニマルウェルフェアはフードチェーンの様々な段階で家畜生産に影響を及ぼすため,今後,アニマルウェルフェアと生産性ならびに消費者のニーズとの関係性を科学的に実証した知見や情報を統合し,学際的・総合的視点からアニマルウェルフェアと生産性・経済性とを両立する生産システムの構築が必要になると考えられた.
著者
瀬戸口 暁 大石 風人 熊谷 元 今井 裕理子 川本 康博 広岡 博之
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-9, 2017

<p>亜熱帯地域における周年放牧肥育生産システムに対して、ライフサイクルアセスメント(LCA)による環境影響評価を実施した。沖縄県石垣地域で行われた集約輪換放牧による褐毛和種去勢肥育生産を評価対象とし、補助飼料として、国内産副産物飼料(ビール粕・砕米)を活用した完全混合飼料(TMR)を給与した生産システムを想定した。機能単位は増体重1 kg あたりとし、エネルギー消費、地球温暖化、酸性化、富栄養化への影響を算出した。評価の結果、想定した生産システムにおいて、副産物飼料の利用により飼料生産・飼料輸送による環境影響を軽減できる一方、放牧地管理がいずれの環境影響項目においても環境影響の大きな割合を占めるということが示唆された。これは、肥育を目的として高生産性を目指した放牧地への多大な施肥により、環境影響が増大したためであると考えられた。副産物飼料からの環境影響の扱い方として、経済アロケーションまたは重量アロケーションを用いた場合、および廃棄物とみなした場合の3 通りを検討した結果、重量アロケーションを用いた場合では、経済アロケーションおよび廃棄物とみなした場合より、エネルギー消費が大きい結果となった。</p>