著者
大神 英裕 実藤 和佳子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.145-154, 2006-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
49

ヒトは誕生直後から社会的認知の萌芽を現し, その後, 飛躍的に発達していく。1975年, 他者が見ている対象を見る現象である視覚的共同注意が, 後続する社会的認知発達に重要であると報告された。以降, 多くの研究が重ねられ, その定義や行動的指標は広義かつ多様になっていった。しかし, 各共同注意行動の出現時期やその発達的関連性はいまだ明らかでない。そこで, 約2,000人の出生児を対象に, 8ヵ月から18ヵ月まで2ヵ月ごとに共同注意に関する縦断的コホート調査を実施した。本稿では, 先行研究の文献とこの調査のデータとをあわせて紹介する。調査の結果, 出現時期の様相が明らかとなり, データの標準化により共同注意尺度を作成した。また共分散構造分析から, 共同注意の発達には「視線の追従」・「行動の追従」・「注意の操作」・「シンボル形成」という4段階があり, 因果的な発達連鎖を持っていることが示唆された。こうした共同注意の定型発達過程の検討は, 乳幼児期における発達評価にも貢献できる。生後18ヵ月時点における定型発達, 知的障害, 自閉症の共同注意行動の特徴について報告するとともに, 自閉症の初期予兆について論じた。