著者
大舩 ちさと 和栗 夏海 フロリンダ アンパロ A パルマヒル フランチェスカ M ヴェントゥーラ
出版者
独立行政法人国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.7, pp.135-150, 2011-03

フィリピンでは2009年6月から教育省により日本語が選択外国語科目として試験的に導入されたことを 受け、報告者らは高校生向け日本語リソース型教材の開発に取り組んでいる。教育省の掲げる目標を受 け、本教材ではフィリピンの高校生が身に付けるべき力を、「Curiosity」を有し「Self-improvement」し ながら、「Discover and Fulfill one's MISSION」を目指すものと位置づけた。そして、これらの力を身に 付けたか否かを確認する方法として、【内省する力】、【学習をモニターする力】、【管理する力】を見 ることにした。学校教育では期末試験として筆記試験が実施されることが多いが、これらの力の評価に は適さないため、報告者らは筆記試験では測れない力を測る評価ツールの開発を試みた。本稿では、こ の評価ツールの概要と開発にあたり考慮した点、現場からのフィードバックについて報告する。
著者
大舩 ちさと
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.175, pp.100-114, 2020-04-25 (Released:2022-04-26)
参考文献数
31

海外における日本語教育の最大の層は,中等教育段階における日本語教育 (以下,海外の中等日本語教育) であるが,日本国内では研究の蓄積の乏しい領域である。本稿では学会誌及び国際交流基金発行の学術雑誌3誌に掲載された海外の中等日本語教育に関する論考 (報告を含む) 155本を対象とし,研究動向を分析した。その結果,先行する政策を実現するために実践が試行錯誤される政策誘導型の特徴が見られ,制度構築を主眼に置いた研究が多く,実践の行われる国・地域の範囲内で考察が詳細に行われるという特徴が浮かび上がった。一方,海外の中等日本語教育の独自性を追求し,国・地域や政策の枠組みを超えて多様な実践を理論的・包括的に捉える研究は極めて少なく,1970年代から理論構築の必要性は論じられてきたが,実際には進んでいないことが明らかになった。海外の中等日本語教育のよりよい実践を生み出していくために理論構築が必要なことを示した。