著者
大藤 弘典
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.84, pp.PM-039-PM-039, 2020

<p>シミュレーション理論によると,他者の心を理解し共有する共感の過程では,相手の心の状態を心内で真似る処理が行われていると考えられており,そのために必要な能力として,他者の身体を自分の身体のように認識する身体化が想定されている。こうした「意識的な身体化」の能力が高い者は,物語を読むといった想像場面において,登場人物の体験を感覚的に捉えることで,その人物の感情を理解することにも優れると考えられる。だが,他者の涙を見てもらい泣きをする場合のように,共感に関わる身体化は意識的に行われるだけでなく,無意識にも起こり得る。本研究では,身体化能力の意識性と共感力の関係を明らかにすることを目的として,(1)意識的な身体化能力と無意識的な身体化能力の間に関連がある,および(2)場面(想像的 vs 知覚的)に応じて2種類の身体化が共感過程に選択的に関与する,という2つの仮説を検証した。検証の結果,両仮説とも支持されなかった。一方で,補足分析から身体化を通した共感の過程で性差が示唆された。</p>
著者
大藤 弘典
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.129, 2014 (Released:2014-10-05)

本研究では空間ワーキングメモリ能力と認知距離の歪みの関係について調べた。実験では、コルシーブロックテストを用いて実験参加者の空間ワーキングメモリ能力が測定された。次いで、彼らは記憶した地図を頼りに、対になった地点間の距離を推定した。2地点の間の通過点数は、0から2であった。推定距離は、空間ワーキングメモリ能力に関係なく、通過点数に応じて増加した。本結果は、先行研究において、視覚ワーキングメモリ能力が高い実験参加者の推定距離では通過点の効果が示されず、視覚ワーキングメモリの能力が低い実験参加者の推定距離では効果が示されたこととは対象的であった。これらの結果は、視覚ワーキングメモリは空間ワーキングメモリと比較して、視覚的に憶えた距離の認知により強く関わるという観点から考察された。