- 著者
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大藪 俊志
- 出版者
- 佛教大学社会学部
- 雑誌
- 社会学部論集 (ISSN:09189424)
- 巻号頁・発行日
- no.69, pp.17-32, 2019-09-01
本稿の目的は,国家機能の拡大に伴う行政活動の変化の様相を概観したうえで,行政活動を見直す取組み(行政改革)の特徴を考察することにある。現代国家の性格が「福祉国家」「行政国家」と呼ばれるものに変化するなかで,行政の活動領域は急速に拡大していった。その後,肥大化した行政活動は様々な課題を抱えるようになり,1980年代以降,先進国では行政のあり方を見直し,効率化と公共サービスの質の向上を目指す様々な改革手法(NPM など)を導入するようになった。これまでに先進国が実行してきた行政改革は,各国における統治構造の見直しと関連するパブリック・ガバナンスの改革と捉えられるものであり,(1)行政が効率性,柔軟性や透明性を意識するようになり,顧客(市民)志向を強めたこと,(2)行政改革の取組みでは,行政を一国のガバナンス構造の枠組みの中に位置づけ,全政府的(whole-of-government)なアプローチを必要とすること,(3)行政改革は社会経済の変化に対応し続けなければならないため継続的な取組みとなること,などの教訓が得られている。福祉国家行政国家行政改革パブリック・ガバナンス