著者
吉富 巧修 三村 真弓 大西 潤一 水崎 誠
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、25年前と現在の幼児の歌唱能力と幼児をとりまく音楽的環境との比較を行うことを目的とした。25年前と同一の幼稚園で、25年前と同一の幼児の歌唱能力の調査と幼児をとりまく音楽的環境に関する質問紙調査を行い、両者を比較した。その結果、以下の知見を得た。(1)「メリーさんのひつじ」の無伴奏歌唱の評価は、有意差はないが、25年前の方が好成績であった。(2)音楽的な習い事をしている幼児は、25年前は35.7%、現在は40.0%であった。(3)25年前の習い事をしている幼児としていない幼児の無伴奏歌唱の評価は、3.36と3.84であった。現在の習い事をしている幼児としていない幼児の無伴奏歌唱の評価は、3.97と3.48であった。25年前では習い事をしていない幼児の無伴奏歌唱の評価が高かったのは、当時の幼稚園教育での音楽的活動によって幼児の歌唱能力が高められたからであるといえる。(4)無伴奏歌唱の開始音高の平均は、男児は25年前にはD#4+12cent、現在はC#4+36centであり、25年前のほうが有意に高かった(t(23)=2.56,p=.02)。女児は25年前にはE4+35cent、現在ではD4+88centであった。男児は25年前のほうが176cent(1.76半音)高く、女児も25年前のほうが147cent(1.47半音)高かった。この原因としては、幼児をとりまく音楽的環境のうち,家庭的環境には大きな変化はなく、音楽的な習い事をしている幼児はむしろ現在の方が多いことから、幼稚園での音楽的活動が25年前には非常に充実しており、現在では音楽的活動が質・量ともに不足しているからではないかと推察される。(5)幼児のピッチマッチングは、刺激音の種類によって成績が異なる可能性がある。ピアノ音<女声<女声での「こんにちは」、の順に成績が高かった。(6)幼稚園児の2年間・4回の縦断的調査の結果から、次の知見を得た。無伴奏歌唱の開始音高は、第2回調査<第3回調査<集中的な練習を行った第1回調査<第4回調査の順に高かった。音高弁別能力は、第1回調査<第2回調査<第3回調査<第4回調査であり、発達の道筋を示すものであった。
著者
大西 潤一
出版者
広島大学
雑誌
音楽文化教育学研究紀要 (ISSN:13470205)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.27-35, 2004-03-25

音楽科の大学生, 大学院生17名に基準音(C)に続いてさまざまな音高を, その音高に対応する異名同音的に等価な複数の音名のうち,その音高の呼称として接触する頻度の高い音名のシラブル(C#であれば「ド」)で歌ったもの, 接触する頻度の低い音名のシラブル(同「レ」)で歌ったもの,および統制条件として母音で歌ったものを提示し,口頭およびキーボードの該当する鍵盤を押すことにより音高の同定を行わせた。その結果,口頭,鍵盤いずれの反応方法をとった場合でも,接触する頻度の低い音高シラブルで歌われた場合には,音高の同定に干渉効果が生じることが示された。