著者
関野 由香 柏 絵理子 中村 丁次
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.101-106, 2010 (Released:2010-07-22)
参考文献数
20
被引用文献数
14 4

社会環境の変化にともない, 夜間生活が一般化してきている。本研究では, 夜遅い時刻の食事摂取が, 食事誘発性熱産生 (DIT) に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。喫煙習慣のない健康な女子大学生 (平均年齢20.5±1.2歳) 33名を対象に, 一律500 kcalの食事を, 7: 00, 13: 00, 19: 00に摂取する朝型と, 13: 00, 19: 00, 1: 00に摂取する夜型の2種類設定し, クロスオーバー法にてDITを測定, 評価した。朝型では7: 00の食事のDITが, 他の時刻の値に比べて有意に高く (p<0.05), 夜型では深夜1:00の食事のDITが, 他の時刻の値に比べて有意に低くなった (p<0.01) 。3食分のDITを合計した3食合計DITは, 夜型が朝型より有意に低くなった (p<0.01) 。このことから, 朝食を欠食し夜食を摂取した夜型化は, DITの低下により1日のエネルギー消費量を減少させ, 肥満の一要因になる可能性が示唆された。
著者
新保 みさ 串田 修 鈴木 志保子 中村 丁次 斎藤 トシ子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.333-341, 2022 (Released:2022-06-01)
参考文献数
19

本研究では、日本栄養士会(栄養士会)の未入会者および栄養士会主催の研修会非参加者の特徴を調べることを目的に、2018年11~12月にインターネット上で横断的な自己記入式質問紙調査を行った。対象者は就業資格を必要とする15,133人だった。調査項目は属性、栄養士会入会有無と理由、栄養士会主催の研修会参加有無と理由とした。栄養士会の未入会者は入会者と比べて、年齢が低く、所有資格が栄養士のみで、最終学歴が大学、雇用形態が派遣や契約社員、勤続年数や年収が低い、勤務先が小・中学校、受託給食、保育所幼稚園等の者が多かった。未入会理由は会費が高いことや忙しい、栄養士会の活動を知らない等が多かった。研修会非参加者も参加者と比べて、未入会者と同様の特徴がみられた。研修会の非参加理由には、日程が合わないことを挙げる者が多かった。栄養士会の未入会者および研修会非参加者は年齢、雇用形態、勤続年数、年収、勤務先等に共通の特徴が見られた。
著者
中村 丁次
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.316-319, 2019 (Released:2020-01-30)
参考文献数
8

我が国の栄養療法は、病院給食を起点にて、医療の近代化、疾病構造の変化、さらに臨床栄養学の進歩により形成されてきた。疾病の予防、治療への有効性を追求した食事療法は、歴史の過程で、栄養が治療効果やquality of life(QOL)、さらに医療費や介護費に影響を与えることを明らかにしたことから、栄養状態の改善も目標にするようになった。食事のみならず静脈経腸栄養が発展する中で、栄養療法は包括的概念へと変化した。疾病が複合化する高齢社会では、栄養療法を実践するマネジメントケアによる総合的栄養管理が必要になった。
著者
串田 修 新保 みさ 鈴木 志保子 中村 丁次 斎藤 トシ子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.581-588, 2021 (Released:2021-10-02)
参考文献数
33

本横断研究では、全国の管理栄養士と栄養士を対象に、基本属性、就業状況と職務満足度を把握し、両者の関連を検討することを目的とした。2018年11月にインターネット調査を実施し、就業資格を必要とする15,133人を解析対象者とした。基本属性では、性別・年齢・最終学歴・勤務地域・日本栄養士会の入会有無・研修会の参加回数を、就業状況では、所有資格・就業有無・就業資格・資格手当・優遇措置・雇用形態・実勤務先・勤務年数・年収を尋ねた。職務満足度は、5項目の尺度で評価した。尺度の得点を合計した結果、職務に満足している者は73.9%であった。職務満足度の高さには、年齢の高さ、大学等の卒業、勤務地域、日本栄養士会の入会、研修会の参加、管理栄養士の資格所有、昇給制度等の優遇措置、勤務年数や年収の多さ、勤務先が関係していた(全てp <0.05)。標本の代表性に課題があり、属性を限定した無作為抽出による追試も必要である。
著者
樫野 いく子 溝上 哲也 由田 克士 上西 一弘 長谷川 祐子 斉藤 裕子 青柳 清治 倉貫 早智 中村 丁次
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.445-450, 2018 (Released:2018-07-26)
参考文献数
12

国民一人ひとりが健康的な食品を特定し、選択することは容易ではない。近年、栄養素密度に基づき食品をランク付けする栄養プロファイリングモデルが各国で開発されている。しかし、わが国ではこのような概念による食品の評価は十分に行われていない。そこで、日本食品標準成分表2015年版に掲載された食品を対象に食品のランク付けを行った。積極的な摂取が推奨される9つの栄養素と、摂取量を制限すべき3つの栄養素を用いて高栄養素食品指数9.3 Nutrient-rich food index 9.3(NRF9.3)を各食品100kcal当たりで算出した。その結果、藻類、野菜類、きのこ類、豆類の食品群順にNRF9.3が高かった。また、同食品群内でも栄養価の高い食品と栄養価の低い食品を区別することができた。食品を購入する際に、栄養価のより高い食品を選択する、あるいは同食品群内で代替食品を選択するにあたり、本指数を参照することは有用であるかもしれない。
著者
山本(前田) 万里 廣澤 孝保 三原 洋一 倉貫 早智 中村 丁次 川本 伸一 大谷 敏郎 田中 俊一 大橋 靖雄
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.23-33, 2017-01-15 (Released:2017-01-24)
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

内臓脂肪を減少させメタボリックシンドローム(MetS)を予防する食品は有用であり,MetS改善作用の評価は,農産物単品にとどまってきたため,日常消費される組み合わせ食品としての有用性の検証が必要である.肥満傾向を有する健常な成人の昼食に,機能性農産物を組み合わせた機能性弁当を継続摂取させ,機能性農産物を使用していないプラセボ弁当を摂取した場合と比較して,腹部内臓脂肪の減少効果について検証した.BMIが25以上30未満および内臓脂肪面積が100cm2以上の肥満傾向を有する健常な成人を対象に,ランダム化プラセボ対照試験を行った.被験食品は,機能性農産物を使用した「おかず」,「べにふうき緑茶」および「米飯」(50%大麦ご飯および玄米),プラセボ対照食品は,機能性農産物を使用しない「おかず」,「茶」(麦茶)および「米飯」(白飯)であり,3因子の多因子要因1/2実施デザインを採用して,試験群は機能性の「おかず」「茶」「米飯」それぞれ1要素のみ被験食品とする3群とすべての機能性要素で構成される被験食品1群の計4群とした.平日の昼食時に12週間摂取した.主要評価項目は,内臓脂肪面積,副次評価項目は,ヘモグロビンA1c (HbA1c),グリコアルブミン,1,5-AG(アンヒドログルシトール)などとした.159名が登録され中途脱落はなかった.全期間の80%以上の日で弁当の配布を受けたPPS (Pre Protocol Set)解析対象者は137名であった.試験に入ることによる効果はPPSで-8.98cm2と臨床的にも統計的にも有意であった(p=0.017)).主要評価項目のサブグループ解析の結果,試験開始時の内臓脂肪面積が中央値100∼127cm2の被験者で,被験米飯の効果はPPS で平均-7.9cm2であり,p値は0.053とほぼ有意であった.被験米飯については女性でも有意な(平均値-14.9cm2,p=0.012)減少効果が観察された.副次評価項目では,1,5-AG に関してべにふうき緑茶の飲用で有意差が認められた.また,安全性に関して特筆すべき問題は生じなかった.食生活全体の変化と機能性農産物を使用した機能性弁当の連続摂取により,内臓脂肪面積の低減効果等の可能性が示唆された.
著者
中村 丁次
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.750-758, 2012 (Released:2013-11-01)
被引用文献数
1 1

食べ物と健康や疾病との関係は、世界中で多種多様の方法で論じられながら、栄養学のみが生命科学の一分野として存続できた。その理由は、栄養素という生命の素を発見し、栄養素の生成に関連する成分を食物から分析したからである。栄養学は、食料不足や偏食により発生した多くの栄養失調症の予防、治療に貢献した。わが国は、第二次世界大戦前後、栄養失調症に悩まされたが、集団給食を介した食料の適正な分配と栄養教育により、短期間に問題を解決した。しかし、1980年以降は過剰栄養による肥満、生活習慣病が問題となる一方で、若年女子を中心としたダイエットによる極端なやせや貧血、さらに傷病者や高齢者の低栄養障害が問題となってきた。このような傾向は、世界中でみられ、Double Burden Malnutrition(DBM)と呼ばれている。DBMとは、同じ国に、同じ地域に、同じ家族に、さらに同じ人物に過剰栄養と低栄養が共存している状態をいう。食生活の欧米化や、家庭や地域で習慣的に伝承されてきた伝統的な食習慣が崩壊し、栄養問題は複雑化、個別化してきている。このような問題を解決するために、人間栄養学を基本とした新たな栄養管理の方法が開発され、栄養・食事の改善を目的にした大規模な介入研究が行われ、その有効性と限界性が議論されている。また近年、同じ栄養量でありながら食品の種類、組み合わせ、調理法、食べる時間や速さ、食物の物性、さらに食べる順位などの食べ方が生体へ及ぼす影響の研究も始まった。栄養や食事が疾病を予防する目的を果たすには「何を、どのくらい食べるか」だけではなく、「どのように食べるか」を議論していく必要がある。
著者
板垣 康治 中村 丁次 土橋 朗 鈴木 志保子 杉山 久仁子
出版者
(財)神奈川科学技術アカデミー
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

魚類の主要なアレルゲンであるパルブアルブミン(PA)に着目して、約130魚種のPA 含有量を調べたところ、魚種によって含有量が大きく異なり、検出限界以下の魚種もあった。また調理・加工によってもアレルゲン性が低減されることが明らかとなった。得られた情報を属性に基づいて整理し、データベース化を行った。また、構築したデータベースを活用するのに先立ち、教育、行政、医療現場等における食物アレルギーの対応状況について現状把握を行った。今後、食物アレルギーの治療に活用するとともに、保健、栄養指導などにおいて、予防にも役立てたい。