著者
等々力 節子 亀谷 宏美 内藤 成弘 木村 啓太郎 根井 大介 萩原 昌司 柿原 芳輝 美濃部 彩子 篠田 有希 水野 亮子 松倉 潮 川本 伸一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.25-29, 2013-01-15 (Released:2013-02-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

食品中放射性セシウムの一般食品の新基準値である100Bq/kg程度の大麦玄麦を焙煎し,標準的な方法で調製した麦茶について放射性セシウムの浸出割合を検討した.焙煎麦から浸出液への放射性セシウムの移行は,浸出時間120分で38 %程度であった.浸出液は焙煎麦に対し約30倍量の水で希釈され,さらに移行率も50%を超えないため,麦茶の放射性セシウム濃度は,1.83Bq/kg程度であり,100Bq/kg程度(138Bq/kg)の玄麦を原料として使っても,飲料の基準の10Bq/kgを大きく下回ることが予想される.
著者
八戸 真弓 内藤 成弘 明石 肇 等々力 節子 松倉 潮 川本 伸一 濱松 潮香
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.34-38, 2014-01-15 (Released:2014-01-31)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

太さの異なる2種類のうどん生麺,太麺(2.5 mm × 3 mm)と細麺(1.5 mm × 1.5 mm)を作成し,それぞれにおいて茹で時間を変えて調理し,麺の太さと茹で時間が放射性セシウムの動態に及ぼす影響を評価した.太麺,細麺ともに茹で調理により,放射性セシウムが有意に低減されることが分かった.しかし,茹で時間の延長による加工係数の変化は,太麺で20分間まで,細麺で4.5分間までは有意に低下したが,それ以降は茹で時間の延長による有意な低下は認められなかった.残存割合は太麺では10分間で,細麺では3分間までは有意な低下が認められたが,それ以降は有意な低下は認められなかった.これらのことから,喫食に適する茹で時間(太麺では20分間,細麺では3-4.5分間)の調理において,茹で麺と茹で湯間の放射性セシウムの濃度勾配が小さくなり,それ以上の茹で時間の延長では,茹で麺の放射性セシウム濃度の有意な低下は起こらないことが明らかとなった.また,細麺のほうが太麺よりもより短い茹で時間で放射性セシウムの低減効果が得られるが,両茹で麺とも茹で調理により80 %以上の放射性セシウムが除去された.
著者
八戸 真弓 濱松 潮香 川本 伸一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-26, 2015-01-15 (Released:2015-02-28)
参考文献数
56
被引用文献数
3 5

The Tokyo Electric Power Company (TEPCO) Fukushima Daiichi nuclear power plant accident caused by the Great East Japan Earthquake on March 11, 2011, resulted in the release of large amounts of radioactive materials (mainly radioactive iodine 131I, and radioactive cesium 134Cs and 137Cs) into the environment that subsequently contaminated agricultural products. Currently, agricultural contamination by radioactive iodine, with a short half-life of 8d, is no longer an issue, since three-and-a-half years have passed since the accident. However, the radioactive cesium isotopes 134Cs and 137Cs have long half-lives (2 years and 30 years), and have maintained 30% and 92% of their initial radioactivity, respectively. Therefore, long-term monitoring of these radionuclides is required with respect to food contamination. Consumers and food manufacturers alike are greatly concerned with the behavior of radioactive materials during the food processing and cooking of raw agricultural materials. Under a wide range of countermeasures to mitigate the consequences of the nuclear accident for agriculture in the affected regions of Japan, the contamination of agricultural products with radioactive cesium has been greatly reduced in the past three-and-a-half years. Furthermore, numerous studies have focused on examining the behavior of radioactive cesium during the processing and cooking of domestic agricultural, livestock, and fishery products. In this paper, we provide an overview of the inspection results of FY2011 to FY2013 on radioactive cesium levels in agricultural, livestock, and fishery products, as well as research results collected to date on radioactive cesium behavior in the processing and cooking of these products. An English version of all figures and tables in this paper is presented in the Appendix.
著者
川本 伸一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-15, 2017-01-15 (Released:2017-01-24)
参考文献数
38
被引用文献数
2 2

Food poisoning is a serious threat to public health. During the past decades, society has undergone significant lifestyle changes, including the use of new methods for processing and preparing foods. Surveillance of food poisoning has been emphasized because of the centralization of food production and increased international trade and tourism. The responsibility for food safety has moved from individuals to industries and governments, and these changes have created the potential for outbreaks of food poisoning. In this paper, I provide an overview of the current trends in food poisoning in Japan from 2006 to 2015, focusing on prevalence and mortality with respect to food preparation facilities, causative agents and the food sources involved. This review is based on food poisoning statistics collected in Japan, published by the Ministry of Health, Labor and Welfare of Japan. An English version of all figures and tables in this paper is presented in the Appendix.
著者
山本(前田) 万里 廣澤 孝保 三原 洋一 倉貫 早智 中村 丁次 川本 伸一 大谷 敏郎 田中 俊一 大橋 靖雄
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.23-33, 2017-01-15 (Released:2017-01-24)
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

内臓脂肪を減少させメタボリックシンドローム(MetS)を予防する食品は有用であり,MetS改善作用の評価は,農産物単品にとどまってきたため,日常消費される組み合わせ食品としての有用性の検証が必要である.肥満傾向を有する健常な成人の昼食に,機能性農産物を組み合わせた機能性弁当を継続摂取させ,機能性農産物を使用していないプラセボ弁当を摂取した場合と比較して,腹部内臓脂肪の減少効果について検証した.BMIが25以上30未満および内臓脂肪面積が100cm2以上の肥満傾向を有する健常な成人を対象に,ランダム化プラセボ対照試験を行った.被験食品は,機能性農産物を使用した「おかず」,「べにふうき緑茶」および「米飯」(50%大麦ご飯および玄米),プラセボ対照食品は,機能性農産物を使用しない「おかず」,「茶」(麦茶)および「米飯」(白飯)であり,3因子の多因子要因1/2実施デザインを採用して,試験群は機能性の「おかず」「茶」「米飯」それぞれ1要素のみ被験食品とする3群とすべての機能性要素で構成される被験食品1群の計4群とした.平日の昼食時に12週間摂取した.主要評価項目は,内臓脂肪面積,副次評価項目は,ヘモグロビンA1c (HbA1c),グリコアルブミン,1,5-AG(アンヒドログルシトール)などとした.159名が登録され中途脱落はなかった.全期間の80%以上の日で弁当の配布を受けたPPS (Pre Protocol Set)解析対象者は137名であった.試験に入ることによる効果はPPSで-8.98cm2と臨床的にも統計的にも有意であった(p=0.017)).主要評価項目のサブグループ解析の結果,試験開始時の内臓脂肪面積が中央値100∼127cm2の被験者で,被験米飯の効果はPPS で平均-7.9cm2であり,p値は0.053とほぼ有意であった.被験米飯については女性でも有意な(平均値-14.9cm2,p=0.012)減少効果が観察された.副次評価項目では,1,5-AG に関してべにふうき緑茶の飲用で有意差が認められた.また,安全性に関して特筆すべき問題は生じなかった.食生活全体の変化と機能性農産物を使用した機能性弁当の連続摂取により,内臓脂肪面積の低減効果等の可能性が示唆された.

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著者
川本 伸一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.491, 2017-09-15 (Released:2017-09-22)
参考文献数
1
著者
川崎 友美 村田 容常 冨永 典子 川本 伸一
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.171-177, 2007-12-15 (Released:2008-05-23)
参考文献数
14

接種鶏卵からのサルモネラの回収に関してふき取り法とクラッシュ法との比較検討を行った. 37℃のリン酸緩衝液を用いたクラッシュ法が最も菌の回収率が高く, ふき取り法と比べて10倍高い菌数値を得た. 107 CFU/eggのサルモネラ汚染卵を, 50℃, 200 ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で殺菌処理した場合, ふき取り法は2分間処理で菌数が検出限界以下となったが, クラッシュ法は10分間処理においても最大5オーダーの菌数の減少しか観察できなかった. 洗浄中における有機物の混入を想定して, 次亜塩素酸ナトリウム水溶液200 ppmへの液卵の添加実験 (0~1.0%) を行った. 液卵が0.5%以上混入したときでは有効塩素濃度が直ちに低下した. 液卵を0.5%添加して50℃, 10分間処理を行った場合, ふき取り法による検出では101~102 CFU/eggのサルモネラ菌数が検出された. 一方, クラッシュ法による計測では105~106 CFU/eggのサルモネラ菌数が検出され, ふき取り法での検出結果から期待されるような顕著な殺菌効果は観察されなかった. さらに4,000個の市販鶏卵を購入し, 両方法で微生物汚染レベルを調べたところ, 接種実験と同様にクラッシュ法はふき取り法と比べて10倍高い一般生菌数値を示した. クラッシュ法は卵殻からの菌回収法としてより優れており, 従来のふき取り法では殺菌効果の過大評価や汚染レベルを過小評価している可能性がある.