著者
ジャニス パオラ 大野 始 大川 清
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.287-293, 2004
被引用文献数
2

観賞用ヒマワリ18品種の開花反応と生長に及ぼす日長の影響を調べた.ヒマワリは16時間の長日 (LD) 条件または11.5時間の短日 (SD) 条件のガラス温室で栽培した.調査した品種のうちの12品種 (66.7%) では, LDよりもSDで発蕾が有意に早かった.すべての品種がSD条件, LD条件の両方で開花した.しかし, 16品種 (88.9%) は量的短日反応を示した.すなわち, それらの開花はLDで有意に遅くなった.LD下における開花の遅れは品種によって異なり, 11品種では14日またはそれ以上となった.日長は'ジャンボリー'の開花には影響を及ぼさず, この品種は明らかに中性 (DN) 植物としての反応を示した.'セーラームーン'はLD反応を示し, その開花はLD下で早くなった.SD反応を示した品種のうちの14品種では, 日長は草丈にも影響を及ぼし, LD下で草丈は高くなった.大部分の品種では, 花の大きさや茎の太さに日長の影響はなかった.
著者
三田 悟 大野 始
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

シンビジウムを25-30℃の高温ストレス下で生育すると花芽が壊死する。これを避けるために、シンビジウム生産者は植物体を標高1,000メートル程度の高い山に避暑させる。これを山上げ栽培といい、生産者にとっては重労働である。高温ストレス下でCyNAC1遺伝子の発現レベルが顕著に高まった。CyNAC1遺伝子を過剰発現させたトマトとシロイヌナズナでは顕著な生育障害が見られたことから、CyNAC1遺伝子は高温ストレス下で、他の遺伝子群の発現を制御しつつ、シンビジウム花芽の壊死を促進する役割を担っていると考えられた。
著者
大川 清 大野 始
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

樋口ら(1993)は開花の主要因により光周期性、温周期性、栄養・生殖生長周期(VR)型の3タイプに分けて、花卉の類型化を行った。この類型は多様な花卉を発育相と開花誘導要因により類別化した画期的なものであるが、世界各国で実施された生育習性および花卉の開花調節の研究の大部分は生育相の視点から研究されておらず、莫大な論文が発表されている割には類別するための肝心なデータが不十分なものが多い。研究代表らが現在までに実施した花卉の生育習性と開花調節のデータから、該当するものはつけ加えた。しかし研究代表らが実施した花卉の中ではアネモネ(発芽と花芽分化・開花に質的要求無し。10℃、4〜5週間処理で切り花本数と品質が高まる)、ステファノティス(花芽分化は中温で促進、高温で抑制。花芽分化後は高温が開花を促進、分化後低温では長日が開花を抑制、短日は著しく抑制、花芽分化に日長は関係しない)、スクテラリア・バイカレンシス(花芽分化・開花に日長と温度に対する質的要求無し)、ヒメヒマワリ(花芽分化と開花に温度に対する要求無し、日長に対しては質的要求性のある長日植物)、カンパニュラ・ラクティフローラ(花芽分化・開花に低温の質的要求無し、日長にたいして質的要求性のある長日植物)などは樋口らの類型に入らないことが明らかになった。竹田(1999)は環境条件によって変化する発育相よりも、環境に対する反応の違いに着目して類型化したほうが応用場面において利便性が高いと考えて、主な栄養生長期間、開花時期、開花に対する温度と日長の影響によって区分している。いずれにしても、花卉の生育習性の類型化に際しては春化や休眠をはじめ用語の明解な定義が必要である。