- 著者
-
大野 尚仁
- 出版者
- 日本細菌学会
- 雑誌
- 日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.3, pp.527-537, 2000-08-25
- 参考文献数
- 48
- 被引用文献数
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βゲルカンは真菌, 細菌, 植物など自然界に広く分布している。βグルカンは各々の生物において生物学的な機能を発揮するのは勿論の事, 生物間のやり取りにおいても様々な役割を演じ, あるいは産業上も重要な素材であることから注目されている。ここではβ-1,3-グルカンの構造と生体防御系修飾作用について我々の実験成績を中心に要約した。真菌βグルカンは細胞壁成分として存在する不溶性βグルカン並びに, 菌体外に放出される可溶性βグルカンに大別される。βグルカンは特徴的な高次構造をとり, 可溶性高分子では一重並びに三重螺旋構造をとる。βグルカンは様々な生物活性を示すが, その中には高次構造依存的なもの, 例えば, マクロファージからの酸化窒素産生やリムルスG因子の活性化, 並びに非依存的なものがある。βグルカンが示す活性の多くは免疫薬理学的に有用なものが多いが, 喘息の増悪因子としての作用や非ステロイド性抗炎症薬の副作用増強作用などの有害作用も示す。更にβグルカンは体内に分解系が無いので蓄積する傾向を示し, その期間は数ヶ月以上にわたる。またこの間, 活性の一部は持続的に発揮する。一方で, βグルカンの生物活性を適切に評価できる <i>in vitro</i> 評価系は少なく, βグルカンの免疫修飾作用を分子レベルで解析するには, 新たな評価系の開発が望まれる。