著者
大野 歩
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.13-22, 2012 (Released:2018-10-01)

本研究では、スウェーデンにおける2011年学校改革に関し、 就学前教育領域に課せられた内容を明らかにする。また、生涯学習制度の一部となったスウェーデンの就学前保育・教育の現状を学校改革の背景を交えながら検討する。さらには「学校化」問題について考察することを目的とする。研究の結果、今回の学校改革では、就学前学校が学校の一形態となるために新たな法律の制定やカリキュラムの改訂が行われたことが明らかになった。 国際的に高い評価を受けているスウェーデンの就学前保育・教育政策だが、今後、スウェーデンの就学前学校が、1- 5歳に対する非義務の「学校」教育を担う施設となるのか、生涯学習というヴィジョンを構成する礎石として特有の活動を提供する場になるのかを見定めることが次の課題であろう。
著者
大野 歩
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.11-22, 2010 (Released:2018-10-01)

本研究では、スウェーデンの首相を務めたGöran Persson (1949~ ) の政策と経済という観点から、1981年から1998年にわたる6歳児就学の推進について検討し、国際的に高い評価を得ているスウェーデンの子どもケア政策の実際を明らかにしようとした。その結果、スウェーデンの子どもケアと学校教育の統合化政策が、国家財政を圧迫する子どもケア費の削減のため、子どもケアを教育的な基盤におくことによって 「すべての子どもへの子どもケア保障」 が拡大されるという論理を用い、6歳児の両親に対して子どもを子どもケア施設ではなく学校へ通わせる選択を促そうとした結果、生み出されたことが明らかとなった。さらに、統合化政策においてはPersson が大きな役割を果たしており、彼の「知識国家論」の展開ゆえに、子どもケアすべてを教育省の管轄下へ統合するという、スウェーデン独自の子どもケア政策の特徴が見出されることになったといえよう。
著者
大野 歩
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.150-161, 2014-12-25

本論文の目的は,生涯学習制度を構築したスウェーデンで,2011年教育改革後に導入された保育評価の特徴を検討することにある。方法としては,「教育学的ドキュメンテーション」という評価方法に焦点を当て,先行研究の検討からその特徴を分析した。また,現地調査に基づいて,就学前学校における新しい評価の導入への対応を検討した。検討の結果,「教育学的ドキュメンテーション」はスウェーデンの幼児教育学の研究を基盤に開発された独自の実践手法であり,子どもの学びと保育者の学びという2つの学びのプロセスを観察するという観点から編成されていることが明らかとなった。