著者
山中 高光 永井 隆哉 大高 理 植田 千秋 土山 明 田窪 宏
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

プレートの流動現象や、沈み込むスラブの運動を把握するためにはダイナミカルな構造研究をする上で、地殻やマントルの構成鉱物の環境変化(温度・圧力・成分等)に伴って、生じる転移・分解・融解・結晶内イオン交換反応等の諸々の構造変化のカイネティックスや機構を究明することが重要な課題である。本実験ではケイ酸塩鉱物や類似鉱物の圧力誘起による構造変化と逐次観察と動的構造の研究を行った。1.マントルの主構成鉱物であるカンラン石(Mg_2SiO_4)について分子動力学(MD)計算を用いて圧力誘起の構造転移のシミュレーションを行った。室温では35〜40GPa圧力領域で圧力誘起非晶質相転移が生じ、95〜100GPaで未記載な結晶構造に再結晶化することが計算から明らかになった。ダイヤモンドアンビル高圧発生装置と放射光X線を用いた高圧実験でカンラン石のGe置換体のMg_2GeO_4の圧力誘起非晶質相転移を実際に確認した。2.マフィックな珪酸塩鉱物が海洋地殻で水和物に変質し、それらがサブダクションでの低温(<500℃)で応力下での構造安定性を調べ水の挙動を研究する。そのためCa(OH)_2の圧力誘起相転移と準安定相の存在領域を放射光X線回折実験で決定しその機構を解明した。その結果水和鉱物は高圧下では脱水反応はせず、非晶質相として地殻内部にもたらされ、これらがマグマなどに重要な水の起源として考えられる。3.マルチアンビル高圧発生装置に装着し、SiO_2の同一の多形構造転移を示すGeO_2の圧力誘起非晶質相転移した物質についてS波とP波の弾性波速度を測定し、体積圧縮率や剛性率を求めた。これらの弾性波速度の温度・圧力変化の研究はサブダクション・ゾーンで生じる深発地震の発生の解明にも貢献した。また分子動力学から求められた温度圧力関数にした弾性常数の変化と比較し検討した。