- 著者
-
大黒 達也
- 出版者
- 日本神経回路学会
- 雑誌
- 日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.3, pp.135-147, 2022-09-05 (Released:2022-10-05)
- 参考文献数
- 89
音楽の神経科学は,脳機能計測技術の進歩に伴い30年余りで急速に発展した分野である.対象とする内容は,音楽認知,作曲や創造性,演奏など多岐にわたる.音楽処理機構の理解は,音楽特有の現象だけでなく,ヒトの本質を理解する上でも重要な鍵となる.例えば,音楽は,聴覚だけでなく,ヒト一般的な,行動,情動,学習,社会コミュニケーションなどの多くの脳機能と密接に関与している.近年,脳の一般原理である予測処理に基づく「統計学習機能」の観点から,音楽と脳の関係を説明しようという動きが活発化している.本稿では,統計学習と脳の予測が音楽認知にどう関わっているのかについて最近の研究動向を述べる.また,統計的学習の観点から音楽の「創造性」がどのようにして生まれるのかについて今後の研究の展望を議論する.