著者
天野 博雄
出版者
岩手医学会
雑誌
岩手医学雑誌 (ISSN:00213284)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.223-228, 2020 (Released:2020-05-31)
参考文献数
6

アトピー性皮膚炎の治療は,副腎皮質ホルモン外用薬,タクロリムス軟膏,保湿外用薬,抗ヒスタミン内服薬の4つが基本である.これらの基本治療を適切に行っても症状が難治な場合に,シクロスポリン内服薬による治療や紫外線療法を行ってきた.2018年にインターロイキン(以下IL)-4とIL-13の両方を抑制する生物学的製剤のデュピクセントが上市されると,重症アトピー性皮膚炎に対する治療は大きく変わった.生物学的製剤の登場により,アトピー性皮膚炎の治療が大きく進歩したことに疑いはないが,治療にあたってアトピー性皮膚炎の診断を適切に行うことは最も重要なことでもある.本稿ではアトピー性皮膚炎の診断と治療について概説する.
著者
花田 美穂 中川 倫代 濱端 明美 三宅 裕志 天野 博雄
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.443-450, 2020-10-30 (Released:2020-11-24)
参考文献数
12

42歳男, 三陸の漁師。2014年エラコの巣に腕を接触し, 以降, エラコを扱うと顔, 上肢に掻痒を伴う皮疹が生じた。2015年, 2016年に, 全身の蕁麻疹, 嘔気, 呼吸苦, 意識レベル低下を伴う原因不明のアナフィラキシー (An) を生じ, 精査目的に当科を受診した。帰宅後, 納豆を自己判断で摂食し11時間後にAnが出現した。納豆によるAnを考え, プリックテスト (PRT) でポリγグルタミン酸 (PGA) 1, 10μg/ml, 1mg/ml, エラコ棲管のニンギョウヒドラ付着部, 納豆の粘稠成分で陽性であった。納豆による遅発性Anと診断した。エラコにはニンギョウヒドラというエダクダクラゲのポリプ世代が共生し, このポリプに刺されることで, クラゲPGAによる経皮感作が成立し遅発性納豆アレルギーを発症したと考えた。PGAは食品, 化粧品に含まれ, エラコ皮膚炎の既往のある人は, PGAによる遅発性Anを発症する危険性があるので注意が必要である。(日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌, 3 (3) : 443-450, 2020)