著者
飯島 茂子 小城 一見 髙山 典子
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.362-369, 2020-04-30 (Released:2020-11-24)
参考文献数
9

64歳女。紫外線硬化アクリル樹脂を用いたアクセサリーの作製中に感作されたアレルギー性接触皮膚炎の1例を報告した。患者は布またはポリエチレン手袋を着用していたが,2週間後の2回目の作製後に手指の軽度の腫脹・疼痛・掻痒を感じた。4週間後の3回目の作製時には,水疱を形成する重篤な皮膚炎を生じた。パッチテストの結果から,感作源は,アクリル樹脂中に含まれる2-ヒドロキシエチルアクリレートと考えた。2-ヒドロキシエチルメタクリレートにも弱い交差反応を示し,今後,同様の樹脂を用いる歯科治療,接着剤,ネイルアートなどでも口腔粘膜・皮膚接触部位に皮膚炎を生じる可能性がある。感作を防止するには,アクリルモノマーには直接接触するのを避けること,ディスポーザブル手袋は防護性のないこと,およびネオプレン製工業用手袋でも短時間の作業に留めることを十分理解させることが重要である。(日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):362-369,2020)
著者
足立 厚子 大塚 晴彦 山野 希 濱岡 大 井上 友介 小林 征洋
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.317-322, 2019-04-30 (Released:2019-06-15)
参考文献数
14

多種の魚摂取や, 魚コラーゲンペプチド入り美容ドリンク剤飲用によって, 口腔アレルギー症候群や, 運動が加わると食物依存性運動誘発アナフィラキシーを起こした22歳女性の症例を経験した。測定しうるすべての魚に対する特異的IgE (CAP FEIA法) が陽性であるとともに, プリックテストにて検査したすべての魚, 魚加工品, 美容ドリンク剤および美容ドリンク剤主成分の魚コラーゲンペプチドに強陽性を示した。ELISA法にて自験例の原因アレルゲンは, 主要アレルゲンであるパルブアルブミンではなくコラーゲンであると診断した。コラーゲンペプチドは家畜由来と魚由来とがあり, 産業原料として粉末や水溶液で流通している。コラーゲンペプチドは食品やドリンク剤のみならず, 化粧品にも多く含まれる。魚類アレルギー患者では注意が必要である。
著者
飯島 茂子 小城 一見 高山 典子 角田 孝彦 石井 良征
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.219-225, 2018-07-31 (Released:2019-01-17)
参考文献数
17

41歳女。初診の4ヵ月前から繰り返す頸部の紅斑および顔面の腫脹を主訴に来院した。ジャパニーズスタンドアレルゲン (2008) のパッチテストでfragrance mix陽性。その成分ではcinnamic aldehyde, cinnamic alcohol陽性。アロマオイルを日常的に使用していることが判明し, 使用中の各種香料でパッチテストを施行したところ, ラベンダーオイル, その含有軟膏, 有機シナモンパウダー, シナモン含有オイルで陽性となった。なお, ラベンダーオイルは1%と2%陰性, 5%と10%陽性であった。ラベンダーオイルの主成分であるリナロールおよび酢酸リナリルを用いたパッチテスト, 光パッチテストはすべて陰性であった。自験例は夜, ラベンダーオイルの原液を枕に数滴垂らして寝る習慣から生じた頸部のアレルギー性接触皮膚炎と診断した。また, 空気曝露によって生じる酸化リナロール, 酸化酢酸リナリルによって感作された可能性を推測した。
著者
平井 由花 武井 華子 笠 ゆりな 伊藤 雄太 大歳 晋平 中田 土起丈
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.451-455, 2020-10-30 (Released:2020-11-24)
参考文献数
27

症例1 : 50代男性。1ヵ月前に下肢に掻痒感が出現したため液体ムヒ®S2aを外用, 2週間前には顔面, 頸部にも皮疹が拡大したため, ムヒアルファ®EXに変更したところ症状が増悪した。現症 : 顔面, 頸部に浮腫性紅斑と丘疹を認め, 四肢には丘疹が散在性に多発していた。パッチテストでムヒアルファ®EX (++) 。症例2 : 30代女性。6日前より肩こり, 背部痛に対してアンメルツ®ヨコヨコを外用していたところ, 皮疹が出現。現症 : 左側頸部および上背部に類円形の浮腫性紅斑が多発し, 脊椎両側では褐色の紅斑局面を認めた。パッチテストではアンメルツ®ヨコヨコ (++) 。症例1は接触皮膚炎症候群 (allergic contact dermatitis syndromeのstage 3A) と診断, 症例2は広範囲に皮疹を認めた接触皮膚炎と考えた。OTC薬は患者にとって簡便であるが, 記載が義務づけられている「症状の改善がみられない場合には服用を中止し, 医師, 歯科医師, または薬剤師に相談すること」の啓発が必要と考える。(日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌, 3 (3) : 451-455, 2020)
著者
小猿 恒志 五木田 麻里 堀川 達弥
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.111-115, 2018-04-30 (Released:2019-01-17)
参考文献数
16
被引用文献数
1

27歳, 男性。左手の浮腫を主訴に当科初診。数年前から年に6, 7回, 右手あるいは左手に浮腫が出現して, 1日後には改善することを繰り返していた。初診の数日前に家具の組み立てに際して金槌を使用した後に手に軽度の搔痒を伴う浮腫が生じた。初診時に左手背を中心に, 左第2, 3, 4, 5指に浮腫があった。補体とC1インアクチベーター活性は正常であった。左前腕の伸側に試験管振とう器による振動負荷試験を実施した。試験管振とう器の接触部だけではなく, 左前腕全体に潮紅および浮腫を認めた。加えて同部に軽度の搔痒の訴えがあった。7時間後も振動負荷した部位中心に発赤を伴った腫脹が持続した。圧負荷試験は陰性, 皮膚描記法は陽性であった。以上から振動血管性浮腫 (振動蕁麻疹) と診断した。
著者
井上 友介 足立 厚子 白井 成鎬 山野 希
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.313-317, 2020-04-20 (Released:2020-11-24)
参考文献数
9

38歳,男性。30分間のランニングをした後に市販の栄養ドリンク剤を1本服用したところ,30分後に全身に蕁麻疹が出現した。その後意識消失し,救急搬送された。後日,原因精査を希望し当科を受診された。栄養ドリンク剤as isのプリックテストにて陽性を示したため,成分別プリックテストを施行した。合成タウリン(1%)のみ陽性を示し,ほかの成分はすべて陰性であったため,栄養ドリンク剤中の合成タウリンによるアナフィラキシーと診断した。栄養ドリンク剤による即時型アレルギーの報告は少なく,合成タウリンでの報告例は韓国からの1例のみであり,調べ得た限りではわが国で初の報告例である。タウリンは哺乳類の成長に重要な栄養素で,牡蠣やイカなどの食品に天然タウリンとして含まれるほかに,多数の栄養機能食品に配合されている。自験例はイカなど天然タウリンを多く含む食品の摂取制限は必要とせず,合成タウリンを含有する栄養機能食品の禁止のみで,再発はない。(日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):313-317,2020)
著者
飯島 茂子 小城 一見 髙山 典子 沼田 充 佐々木 和実
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.342-348, 2020-04-20 (Released:2020-11-24)
参考文献数
10

52歳女,プラスチック製メガネの先セルによるアレルギー性接触皮膚炎(ACD)の1例を報告した。患者はメガネを半年間使用した後,両耳介上部に掻痒を自覚した。初診時同部に落屑性浸潤性紅斑を認めた。先セルの削り屑のパッチテストを施行したところ陽性であったが,C.I. Solvent Orange 60などの油溶性染料はパッチテスト陰性であった。メガネフレームを分解したところ,金属芯が腐食していた。金属成分の分析を蛍光X線分析法を用いて行ったところ,金属芯および先セル樹脂内にニッケル(Ni)が主要成分として検出された。金属成分のパッチテストではNiが強陽性を示した。以上より,汗・皮脂等により金属芯が腐食し,その結果,Niが先セル樹脂内に拡散,浸透したため発症したNiアレルギーに伴うACDである,と最終診断した。(日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):342-348,2020)
著者
花田 美穂 中川 倫代 濱端 明美 三宅 裕志 天野 博雄
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.443-450, 2020-10-30 (Released:2020-11-24)
参考文献数
12

42歳男, 三陸の漁師。2014年エラコの巣に腕を接触し, 以降, エラコを扱うと顔, 上肢に掻痒を伴う皮疹が生じた。2015年, 2016年に, 全身の蕁麻疹, 嘔気, 呼吸苦, 意識レベル低下を伴う原因不明のアナフィラキシー (An) を生じ, 精査目的に当科を受診した。帰宅後, 納豆を自己判断で摂食し11時間後にAnが出現した。納豆によるAnを考え, プリックテスト (PRT) でポリγグルタミン酸 (PGA) 1, 10μg/ml, 1mg/ml, エラコ棲管のニンギョウヒドラ付着部, 納豆の粘稠成分で陽性であった。納豆による遅発性Anと診断した。エラコにはニンギョウヒドラというエダクダクラゲのポリプ世代が共生し, このポリプに刺されることで, クラゲPGAによる経皮感作が成立し遅発性納豆アレルギーを発症したと考えた。PGAは食品, 化粧品に含まれ, エラコ皮膚炎の既往のある人は, PGAによる遅発性Anを発症する危険性があるので注意が必要である。(日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌, 3 (3) : 443-450, 2020)
著者
大槻 マミ太郎 五十嵐 敦之 勝沼 俊雄 藤澤 隆夫
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.163-176, 2018

<p> アトピー性皮膚炎治療薬であるタクロリムス軟膏の添付文書に記載されている警告に関して, 臨床現場への影響について検証する目的で, アトピー性皮膚炎診療に精通している皮膚科および小児科363名の医師を対象に, ステロイド外用薬の現状も含めた使用実態調査を行った。</p><p> 薬剤の使用理由として「効果が良好だから」は, ステロイド外用薬98.1%, タクロリムス軟膏60.1%に対して, 「副作用が少ないから」は, ステロイド外用薬21.2%, タクロリムス軟膏73.2%であった。タクロリムス軟膏の発がんリスクに対しては, 85.4%の医師が否定的な見解であった。一方で, 発がんリスクの説明による患者 (保護者) からの使用拒否を19.6%の医師が経験していた。添付文書の「発がんリスクの警告に関する説明義務」については, 73.5%の医師が処方の妨げになり, 68.0%の医師が患者の不利益になるとの見解であった。本調査からタクロリムス軟膏の「発がんリスクの警告に関する説明義務」が, 患者が有効な治療を受ける機会を妨げている側面が浮き彫りとなった。</p>