著者
西村 秀一 太田 玲子 大宮 卓 北井 優貴 勝見 正道
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.117-124, 2023-07-20 (Released:2023-07-20)
参考文献数
14

周囲への感染リスクを有するCOVID-19感染者を検出するために迅速抗原検査を用いたスクリーニングを行うことの妥当性の有無を知る目的で,COVID-19患者/疑い患者ならびに無症状の患者濃厚接触者から採取した鼻咽頭拭い検体の中で定量的リアルタイムRT-PCR検査でSARS-CoV-2遺伝子が検出された162検体について,ウイルス分離を試み分離陽性検体を101検体得た.また,これらの162検体について本邦で市販されていた5社5種類の簡易迅速抗原検出キット製品を用いた抗原検査を試みた.PCRで得られた検体中のウイルス遺伝子コピー数のデータとウイルス分離成績の結果をあわせ,用いた製品ごとに解析した.その結果,被験者の症状の有無にかかわらず,すべてが感染性ウイルスが分離された検体の95%以上に陽性を示し,このような検査対象集団においては迅速抗原検査に感染伝播リスクの見逃しが少ないことがわかった.
著者
太田 玲子 範 瑀軒 網谷 英樹 飯塚 拓巳 山田 夏鈴 加藤 陽佳 石栗 広志 深瀬 真由美 村木 靖 西村 秀一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.34-38, 2022-03-20 (Released:2022-03-29)
参考文献数
14

手指消毒薬の開封後の使用期間は施設により異なるが,開封から半年と定める所が多い.しかし,アルコール製剤の開封後の殺菌効果については明確な指標はなく,情報も少ない.我々はその根拠となるデータを得るために当院の医療現場で実際に6カ月間使用され残ったゲル状アルコール製剤(ゲル状製剤)を回収し,そのまま室温で保存した後(開封直後から開封後34カ月,残量60から350 mL),その主成分であるエタノール濃度をガスクロマトグラフィー法で測定した.その結果,経過時間,残量に関わらずエタノール濃度はすべて開封直後と同等であった.この結果を検証するためにStaphylococcus aureusとPseudomonas aeruginosaを用いて各製剤の殺菌能を測定し,開封直後の製剤と比較検討した.殺菌能測定ではゲル状製剤の対照剤として液状製剤についても測定した.方法は製剤と菌液を30秒と5分間反応させた後に生菌数を求め,精製水を用いた対照実験に対する減少率とlog10 reduction(対数減少値)で評価した.その結果,殺菌能も経過時間,残量に関わらずすべて開封直後と同等で,エタノール濃度と同様な結果であった.今回の検討でゲル状製剤は開封後半年,あるいはそれ以上経過しても開封直後と同等のエタノール濃度とS. aureusとP. aeruginosaに対する殺菌能を保持している可能性が示唆された.