著者
大宮 卓 佐藤 光 西村 秀一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.463-467, 2020-07-25 (Released:2020-09-05)
参考文献数
9

鼻腔拭い液等の臨床検体からのイムノクロマトグラフィーを原理としたインフルエンザウイルス抗原の迅速検出キット(以下,迅速キット)は,多くの医療施設で使用されている。こうした迅速キットを用いた試験では結果として偽陰性が起こることは,よく知られている。一方で偽陽性反応も,まれではあるが起こる。今回我々は,迅速キットでA,B両型の陽性を示したものの,ウイルス分離及び遺伝子検査でインフルエンザウイルスが陰性で,その後,用いた臨床検体からRSウイルスが分離された事例を経験した。我々はこれを迅速キットの偽陽性反応と考えた。この偽陽性の原因について我々は,検体中に含まれる患者由来の抗体以外の何らかの成分が迅速キットで用いられているマウス由来の抗体に対し反応し,あたかもウイルス抗原が反応したかのような陽性ラインが出現したという仮説をたてた。そして,その証明を目的として,競合試験として当該患者検体に精製マウスIgGを反応させたのち迅速キットにかけたところ,陽性反応ラインは出現しなくなった。これにより,本例が患者由来の何らかの成分とマウス抗体との反応による偽陽性であったことが,強く示唆された。
著者
大宮 卓 小野 智子 菅原 正和 OMIYA Takushi ONO Chieko SUGAWARA Masakazu
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.99-109, 2012-03-31

茶道の歴史は長く、古くは奈良時代にまでさかのぼる。茶ははじめ、薬用として用いられたが、時代が変わると、茶を飲用だけに使うのではなく、作法と茶の精神を合わせた「茶の湯」となった。これが現代で言う茶道である。茶道の精神は「和敬清寂」にあらわされ、和して敬い合い、清らかな心を持ち、不動の精神と心を持つことによって、何事にも動じない、どんなことにもゆとりを持つだけの心の広さが生じることを指向する。そして、日常の喧騒と雑事から一時離れ、ささやかな、いっぷくのお茶をとおして"well-being"たらんとする。本研究の目的は長年茶道をたしなんできた人々(SV)と、茶道部学生(GS)、一般学生(CS)のSWB 並びにその下位6因子の相違を探求することにより、茶道が有するSWB(Subjective Wellbeing)への影響を明らかにしようとすることであった。分析の結果、SWB に影響を与える要因は加齢と茶道歴の双方であり、加齢と茶道歴のどちらか片方のみでは、SWB に影響を与えることがないことが明らかとなった。
著者
西村 秀一 太田 玲子 大宮 卓 北井 優貴 勝見 正道
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.117-124, 2023-07-20 (Released:2023-07-20)
参考文献数
14

周囲への感染リスクを有するCOVID-19感染者を検出するために迅速抗原検査を用いたスクリーニングを行うことの妥当性の有無を知る目的で,COVID-19患者/疑い患者ならびに無症状の患者濃厚接触者から採取した鼻咽頭拭い検体の中で定量的リアルタイムRT-PCR検査でSARS-CoV-2遺伝子が検出された162検体について,ウイルス分離を試み分離陽性検体を101検体得た.また,これらの162検体について本邦で市販されていた5社5種類の簡易迅速抗原検出キット製品を用いた抗原検査を試みた.PCRで得られた検体中のウイルス遺伝子コピー数のデータとウイルス分離成績の結果をあわせ,用いた製品ごとに解析した.その結果,被験者の症状の有無にかかわらず,すべてが感染性ウイルスが分離された検体の95%以上に陽性を示し,このような検査対象集団においては迅速抗原検査に感染伝播リスクの見逃しが少ないことがわかった.