- 著者
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長澤 泰子
太田 真紀
- 出版者
- 学校法人 開智学園 開智国際大学
- 雑誌
- 日本橋学館大学紀要 (ISSN:13480154)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, pp.3-13, 2006-03-30 (Released:2018-02-07)
障害児・者は,障害そのものへの支援と心理面の支援を必要としている。吃音を持つ子ども達も例外ではなく,一般に,公立小学校の通級指導教室,通称ことばの教室において言語と心理の両面からの支援を受けている。しかし,言語の通級指導教室が殆どない中学校へ入学した時点で,この特別の支援は中断してしまう。我々は三論文を通して,ことばの教室における教師と子どもの相互交渉を分析し,よりよい関係を確立するための教師の留意点を報告した。障害の有無にかかわらず,思春期は自己をみつけ悩みながら,自己概念や自尊感情を築き上げる時期である。たとえ,小学校でよい関係を培ったとしても,中学校において吃音を持つ人としての支援がなければ,吃音のある中学生は一人で吃音について悩み,ネガティブな自己概念を作り上げる危険性を抱えている。本研究は,思春期の吃音児の実態や支援に対する要望を把握することを目的とし,2つの調査を実施し,その結果を報告するものである。調査1は,通級指導教室を持つ公立小学校657校に対して行われた。そのうち,小学校の通級指導教室の指導を終了し,自己概念尺度および吃音指導,直面している問題,相談する相手などに関する質問紙に回答することに同意した吃音のある中学生12名と彼らを指導した小学校通級指導教室の教師が本研究の対象である。生徒はみな卒業時に,「指導を受けなくても,もう大丈夫」と言っていた。生徒が記入した調査結果に対して,教師のコメントや分析を求めた。結果は以下の通りである。1) 対象者は全て小学校時代に「もう大丈夫」と言った生徒たちであったが,約半数の生徒は再び吃音を気にして,中学校でも支援を受けたいと思っていた。2) 対象児の中には,吃音に対し十分な指導を受けられなかったと不満を感じている者がいた。調査2は,調査1の参加者である一名の生徒を対象に,小学校4年生からの約3年間の追跡調査である。結果次の通りである。1) 彼の自己評価に影響を及ぼしていた要因は,学級の雰囲気,学校における経験,教師や親からの支援であった。2) 彼の中学校の全生徒は同じ小学校出身であったため,彼は良好な友人関係の中で中学生活をおくっていた。しかし,中学校にことばの教室があるならば,そこで支援を受けたいと感じていた。