著者
今井 祐之 浜野 晋一郎 野田 洋子 奈良 隆寛 小川 恵弘 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.494-499, 1997-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

劇症型亜急性硬化性全脳炎の3歳男児例を報告した.本児は, 9カ月時に麻疹肺炎に罹患し, 2歳4カ月時にMMRワクチンを接種している.3歳4カ月時に傾眠と左片麻痺で発症し, 第10病日には昏睡状態となり, 1カ月半で除皮質硬直位となった.髄液の麻疹抗体価の異常高値からSSPEを考え, inosine pranobexの投与を行ったが効果はなく, 発症3カ月目に多発性脳出血をきたし, 全経過4カ月で死亡した.剖検では, 乏突起膠細胞内に抗麻疹抗体陽性の封入体を認め, 血管周囲の白血球浸潤, グリア結節や白質のグリオーシスなどの典型的病理所見のほかに小血管の内膜の肥厚, 閉塞像・再疎通像など血管炎の関与を示唆する所見がみられたのが特徴的であった.
著者
奈良 隆寛
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
BME (ISSN:09137556)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.20-29, 1998-07-10 (Released:2011-09-21)
参考文献数
32
著者
奈良 隆寛 浜野 晋一郎 野崎 秀次 田中 佳子 清水 正樹 野田 洋子 厚川 清美 有田 二郎 堀田 秀樹 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.261-267, 2000-05-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15
被引用文献数
2

例の急性脳炎 (60例)・脳症 (10例) のてんかんの発症について検討した.23例がてんかんに移行した.23例中18例は脳炎発症から平均7カ月間の期間をおいて (潜伏期あり) てんかんを発症した.また, 23例中5例は急性期からそのままてんかんに移行 (潜伏期なし) した症例がみられた.潜伏期を経ててんかんを発症した症例の中では, 髄液のneuron-specific enolase (NSE) 活性が高い症例はてんかんが難治で, てんかんを惹起する病理に神経組織の崩壊が関与することが示唆された.一方, 潜伏期なしでてんかんに移行した症例は急性期の発作の回数が多く, てんかんは難治性であったが, 髄液のNSE活性は正常であった.この一群は, 潜伏期を経ててんかんを発症する症例とは別の機序で, てんかん原性焦点の活動が増強されたものと考えられた.
著者
浜野 晋一郎 奈良 隆寛 野崎 秀次 福島 清美 今井 祐之 熊谷 公明 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.58-64, 1991-01-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
20

N-isopropyl-p-I-123-iodoamphetamineによるsingle photon emission computed tomography (SPECT) を用いて25例の片麻痺の小児におけるcrossed cerebellar diaschisis (CCD) の出現について検討した.対象の25例のうち, 7例は脳性麻痺で, 18例は発症年齢10カ月から14歳の後天性脳障害である.その結果5例20%にCCDが認められた.CCDの認められた5例は7歳以後の発症で, それ以前の発症の後天性脳障害と脳性麻痺では認められなかった.Ipsilateral cerebellar diaschisisは3歳以下の発症の片麻痺の3例と脳性麻痺の2例に認められた.以上の結果から, diaschisisは3-7歳の間を境に出現の様式が異なり, 7歳以後には成人と同様のcrossed cerebellar diaschisisが認められると考えられた.
著者
田中 学 浜野 晋一郎 今井 祐之 奈良 隆寛
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.269-275, 1999-05-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

滑脳症I型は無脳回と厚脳回が混在する型の脳皮質形成異常である.本症の乳児例を5例経験し, 頭部CT所見に基づいた形態学的な重症度分類を用いて, てんかん発症当時の発作間欠時脳波, 発作型および臨床症状を検討した.てんかんの発症は生後2カ月から4カ月で, 広汎性無脳回の症例は全身強直発作で発症し, 厚脳回の混在する例では, 部分発作やtonic spasmsで発症した.全例とも発作はその後tonic spasmsに移行した.頭部CTにおいて脳表に占める厚脳回の比率が増すほど, 脳波では無脳回の症例に多いα波よりも高振幅δ波が優位になる傾向がみられた.その他に全例を通して多焦点性の高振幅徐波, 棘波や鋭波がみられた.これらは厚脳回の形成が不規則であることの影響と考えられ, 画像所見との相関が示唆された.
著者
中江 陽一郎 後藤 昇 奈良 隆寛
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.434-439, 1989-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
9

週齢の異なるヒト胎児脳の各構造別の体積値を求め, その発達の様相について検討した.対象は胎週齢16~27のヒト胎児脳5例, および成人脳2例である.各例毎に連続水平断切片を作成し, 画像解析装置を用いて大脳の各構造の面積を測定し, 体積を算出した.大脳の中では間脳が最も早い時期に体積の増加を示し, 大脳髄質, 大脳基底核がこれに続き, 大脳皮質の発達が最も遅かった.連続切片を作成し, 画像解析装置を用いて脳の体積を算出する方法は, 数値の正確性などの面ですぐれているだけでなく, 発達を数量的に評価する点で客観性があり, また, 得られたデータは今後の細胞レベルでの研究の基礎となるものである.