- 著者
-
福島 道子
北岡 英子
大木 正隆
島内 節
森田 久美子
清水 洋子
勝田 恵子
黛 満
奥富 幸至
菅原 哲男
藤尾 静枝
山口 亜幸子
- 出版者
- 日本地域看護学会
- 雑誌
- 日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, no.2, pp.38-46, 2004-03-25
都内某保健所において児童虐待事例として援助した家族8例,および関東圏某児童養護施設において虐待事例として入所した児童の家族17例を対象に,「家族生活力量」の概念に基づいて事例検討し,児童虐待が発生している家族の問題状況を分析した.各事例を「家族生活力量アセスメントスケール」や家族システム論を用いて分析した後,全体像を短文で記述し,それをグルーピングしたところ,「精神疾患から虐待が発生し,それに伴って生活困難が生じている」「不健全な夫婦関係が虐待問題をより解決困難にしている」「生活基盤が弱いことによってネグレクトが生じている」「家族形態が成立しないまま出産し,出産直後から育児放棄している」「世代間境界の曖昧さが虐待問題をより解決困難にしている」「未成熟な家族ゆえに虐待が発生している」の6つに類型化された.また,「家族生活力量アセスメントスケール」で家族の生活力量を測定した結果,虐待が発生している家族は家族生活力量が低値であり,特に「役割再配分・補完力」と「関係調整・統合力」が顕著に低かった.虐待事例各々についてスケールの得点をみると,同スケール9領域のいずれかが0%である事例が21例みられた.虐待支援に当たっては,家族生活力量を査定したうえで働きかけることが必要であることが考えられた.本研究の限界として,事例数が少なく,虐待重症度や対象選定機関等に偏りがある.今後は,地域保健・福祉機関からの事例を積み上げていきたい.