著者
島内 節
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.189-201, 1986-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20

パーキンソン病患者は神経難病の中で最多であり, その多くが在宅療養者であるにもかかわらず在宅ケアの実践例からケア課題やケア効果をとらえた研究例は, きわめて少ない.そこでパーキンソン病患者の社会環境条件と在宅ケア顆題の特徴を明らかにし在宅ケアについて評価を行った.東京都立神経病院在宅診療班が1975~1983年の期間に在宅ケアを開始していたパーキンソン病患者69例について在宅ケア開始期を中心として患者の属性・社会環境条件, 症状・障害, 病状経過ADL, 精神能力, 介護実態, 介護困難を分析した.その際, 一般寝たきり老人, 寝たきりでない疾病老人をコントロール群とした.その結果次のようなことが明らかになった. (1) パーキンソン病在宅ケア患者は難病, 障害者, 高齢の条件が重なり身体障害者手帳1, 2級所持者は28例 (40.6%) を占め, 全例にADLが著しく低下し, 大多数にコミュニケーション障害, 精神症状, 痂呆, 意欲低下など精神能力も障害されていた.2) 在宅ケアの対象となり, その効果が期待できる症状・障害は, 失禁・排尿障害, 蒸下障害, 精神症状 (幻覚, 失認, 徘徊など) , 意識障害, 呼吸異常, 褥瘡などであり, また処置としては経管栄養, 膀胱留置カテーテル, 吸引, 呼吸管理などであった. (3) パーキンソン病老人は一般寝たきり老人に較べて, 平均年齢は5.5歳低いにもかかわらず前記症状・障害, 処置の必要度が有意に高く認められ, 介護困難も有意に高い. (4) パーキンソン病患者のADL, 精神能力のいずれも女よりも男において有意に低い.この傾向は他文献とも一致した. (5) 介護能力・介護条件は, 介護者によって異なる.このうち緊急問題解決能力は嫁・娘>妻>夫・その他 (老母, 老姉妹) の順で, 日常介護能力・条件は, 妻・嫁>娘>夫・その他 (老母, 老姉妹) の順である.そこで介護者が男性や高齢者の場合に介護上の問題が多い. (6) 介護上の問題は症状・障害に伴う介護知識や技術に困難度が強い. (7) 在宅ケアにおいては上記の問題への対応の他に, 医療費など諸制度の活用, 専門職・非専門職への照会など医療上, 生活上の諸問題や介護者の心身の健康管理などの対応課題があげられる. (8) 専門家による在宅ケアの効果は患者の医療確保に合わせてケアによって症状・障害の緩和, 病状進行を遅延させうることがわかった.また介護者の健康管理によい結果をもたらしていた.
著者
福島 道子 北岡 英子 大木 正隆 島内 節 森田 久美子 清水 洋子 勝田 恵子 黛 満 奥富 幸至 菅原 哲男 藤尾 静枝 山口 亜幸子
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.38-46, 2004-03-25

都内某保健所において児童虐待事例として援助した家族8例,および関東圏某児童養護施設において虐待事例として入所した児童の家族17例を対象に,「家族生活力量」の概念に基づいて事例検討し,児童虐待が発生している家族の問題状況を分析した.各事例を「家族生活力量アセスメントスケール」や家族システム論を用いて分析した後,全体像を短文で記述し,それをグルーピングしたところ,「精神疾患から虐待が発生し,それに伴って生活困難が生じている」「不健全な夫婦関係が虐待問題をより解決困難にしている」「生活基盤が弱いことによってネグレクトが生じている」「家族形態が成立しないまま出産し,出産直後から育児放棄している」「世代間境界の曖昧さが虐待問題をより解決困難にしている」「未成熟な家族ゆえに虐待が発生している」の6つに類型化された.また,「家族生活力量アセスメントスケール」で家族の生活力量を測定した結果,虐待が発生している家族は家族生活力量が低値であり,特に「役割再配分・補完力」と「関係調整・統合力」が顕著に低かった.虐待事例各々についてスケールの得点をみると,同スケール9領域のいずれかが0%である事例が21例みられた.虐待支援に当たっては,家族生活力量を査定したうえで働きかけることが必要であることが考えられた.本研究の限界として,事例数が少なく,虐待重症度や対象選定機関等に偏りがある.今後は,地域保健・福祉機関からの事例を積み上げていきたい.
著者
小野 恵子 片倉 直子 島内 節
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.64-69, 2010-03-31

目的:本研究の目的は,在宅看護学概論の評価であり,具体的な授業の評価内容は,授業の理解度,授業形態の工夫による学習理解への役立ち度,在宅看護の具体的なイメージ化,授業の満足度を明らかにすることである.また,その評価の結果から,在宅看護のイメージに関連する内容,満足度に関連する内容,イメージ化と満足度との関係,授業理解度と授業形態の工夫との関係があるかどうかを明らかにする.対象は,A大学看護学科3年次学生の56名中,調査への同意が得られた者計52名である.調査の結果から,授業の工夫について8割以上の学生が,学習と理解に役立ったと評価していた.しかし「介護保険法」「自立支援法・健康保険法」のような法関連の授業の理解度は,他の授業内容に比べて低かった.これらの授業の理解は在宅看護のイメージ化に関係していたこと,イメージ化と関連した工夫はPRパンフレットだけであったことから,更なる授業の工夫の必要性が示唆された.また,在宅看護のイメージ化と授業の満足度,授業の満足度と授業の理解度,そして授業の理解度と授業形態は,それぞれ関連しており,在宅看護のイメージづくりには,授業の満足度と授業の理解度と授業形態が連鎖していると考える.
著者
島内 節 清水 洋子 福島 道子 佐々木 明子 中谷 久恵 河野 あゆみ 田中 平三 亀井 智子 林 正幸 丸茂 文昭
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

平成10年度〜12年度にかけて「在宅ケアにおける基本的な日常生活行動の自立支援のためのケアプランと評価方法」について研究を行った。平成10年度に日常生活行動の自立を可能にする条件を分析した。結果は2ヵ月で改善可能な内容は着替え、服薬行動、痛み、介護者の心身の疲労であった。同年にケアプランの実施の有無とプラン修正によるニーズ解決を分析した。その結果、ニーズ解決率の高い順位は(1)ケアプランを必要に応じて修正し実施、(2)ケアプラン実施、(3)実施しない、の順であること、ケアプランの修正要因は利用者条件、サービス提供条件、ケアマネージャーの順であった。平成11年度には日常生活行動変化のアウトカム項目をアメリカ合衆国のメディケア機関で義務化されていたOASIS(The Outcome Assessment Information Set)を中心に我々が開発していた日本版在宅ケアアセスメント用紙を組み合せて、在宅ケアの評価を行い、それに基づきケアプランを5機関で行った。平成12年度にはアウトカム項目を確定し、自立度変化とケアプロセスの内容、満足度を評価し、プランを立てて実施後に再度アウトカムとプランを評価する方法の開発、サービス提供者の能力開発と組織力向上の評価方法を開発し、マニュアル化した。なお、利用者アウトカムに関しては、フィンランドとの共同研究を行った。
著者
島内 節 小森 茂 佐々木 明子 友安 直子 森田 久美子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的はFOMAによるテレビ電話を用いて利用効果がでやすい在宅ケアニーズ・利用にあたってのコミュニケーション方法・指導やケア技術内容、を高齢者側とケア提供者の調査により明らかにした。テレケアの有用性評価は37ニーズ項目中27項目にケア効果がみられた。医療処置を多く要する利用者ほど、テレケアの利用によりケアニーズが「改善」あるいは「解決」に向かう傾向がみられた。また本人からは、テレケア機器があることで「訪問看護師とつながっている感じがする」「安心感がある」などの意見が多く聞かれた。また利用者よりもさらに看護師の方がテレケアに対する有用性の評価が高かった。機器を利用することによるケア項目別の有用性の評価で本人が高い上位項目は、「早期発見」「コミュニケーション」「観察」であった。看護師では、「相談」「観察」「早期発見」であった。医療依存度の高い利用者ほど両者ともに「早期発見」「観察」の項目が高かった。FOMAの利用は家族介護者よりも看護師において有効度と満足度がより高い変化を示した。FOMAを用いることを仮定した意識調査では本人の期待値が看護師より高かったが、実際利用するとその逆の傾向が見られた。家族介護者はFOMAの画面が小さすぎて見にくいとの声もあり、高齢者には画面拡大により効果・満足度が高められることが示唆された。