著者
安田 治正 三嶋 正芳 米本 俊良 奥山 裕司
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.327-332, 2010-07-01 (Released:2011-01-25)
参考文献数
14
被引用文献数
4 1

症例は61歳,男性。心筋梗塞に伴う左室自由壁破裂にて修復術を施行,術後心房細動となった。電気的除細動にて回復後,洞調律維持を期してピルジカイニド150 mg·day−1が投与されていた。術後第47病日,高K血症に対し透析を予定したが,心室頻拍を呈しICU再入室となった。高K血症の心室頻拍への関与は否定できず,直ちに持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)を開始した。血清K値は12時間で正常域に復したが,多形性心室頻拍が持続していたため,ピルジカイニドによる催不整脈作用を疑った。不整脈出現中,血中ピルジカイニド濃度は終始高値(最低4.62 μg·ml−1,有効治療域0.2~0.9 μg·ml−1)であった。CHDF開始後36時間で洞調律に復帰した。この時,血中ピルジカイニド濃度は3.36 μg·ml−1と,なお高値であった。CHDFによるピルジカイニドの除去効果は不十分と考えられたが,血中濃度の低下に伴い洞調律復帰が得られた。ピルジカイニド中毒による不整脈の治療に際し,可及的速やかに血中濃度を下げることが有効であり,CHDFの有用性が示された。