著者
高橋 啓子 奥村 恭男 永嶋 孝一 園田 和正 古川 力丈 佐々木 直子 磯 一貴 黒川 早矢香 大久保 公恵 中井 俊子 渡辺 一郎 平山 篤志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SUPPL.2, pp.S2_6-S2_14, 2016-12-30 (Released:2018-08-15)
参考文献数
7

症例は41歳男性.B型WPW症候群に伴うwide QRS頻拍に対し,電気生理学的検査を施行した.心室連続刺激中の心房最早期興奮部位はHis束電位記録部位であったが,心室早期刺激で左側後壁副伝導路の存在が示唆された.心室早期刺激でclinical wide QRS頻拍(SVT1)が誘発され,右側側壁副伝導路を順行,房室結節を逆行する逆行性房室回帰性頻拍と診断した.SVT1は室房伝導時間が短縮し,His束電位が心室(V)波に重なるSVT2へと変化した.その間,His –心房(A)波間隔は一定であったことからSVT1の室房伝導は機能的右脚ブロックであったのに対し,SVT2ではそれが解除されたと考えられた.さらにその後の心室早期刺激でwide QRS頻拍SVT3が出現し,これは室房伝導の順序は変化しないまま,narrow QRS頻拍SVT4に変化した.これらは房室結節を順行,左房後壁副伝導路を逆行する順行性房室回帰性頻拍と診断した.wideからnarrowへの変化はCoumel現象による左脚ブロックが解除されたためと考えられた.さらに副伝導路間を旋回するSVT5と,通常型slow-fast房室結節回帰性頻拍(SVT6)も誘発された.以上より,順伝導のみの右側副伝導路,潜在性左側副伝導路,房室結節遅伝導路を焼灼し終了した.
著者
八幡 貴治 神田 弘太郎 益岡 啓子 井上 尊文 小堀 容史 細川 緑 海津 嘉蔵 大岩 功治 平山 篤志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.470-476, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
15

症例は69歳, 維持透析患者の男性. 透析中や自転車走行中に胸部圧迫感が出現するようになり, 当院に紹介受診し, 急性冠症候群の疑いで同日入院した. しかし, 炎症反応上昇とBNPの上昇が顕著となり, なんらかの感染症による心不全を疑い治療を行った. 抗生剤を2剤併用して治療し, 感染源の検索を行ったが, 明らかな原因をつかめなかった. 第11病日に心エコー・胸部CTで心嚢液貯留を認め, 心膜炎を疑い非ステロイド系抗炎症薬の内服を追加したが改善はなかった. 第19病日には呼吸困難増悪・血圧の低下が出現し, 心エコーにて著明な心嚢液の貯留を認め, 心タンポナーデと診断した. 緊急心嚢穿刺・心嚢ドレーン留置術を施行し, 処置後は血圧も胸部症状も改善した. 心嚢液性状は血性で細胞診はClass Ⅱ, 細菌培養は陰性, アデノシンデミナーゼが高値であったため結核性心膜炎を強く疑った. 後日, 心嚢液で結核菌PCR陽性・抗酸菌培養でmycobacterium tuberculosisが検出され結核性心膜炎と確定診断した. 本症例では, 抗結核剤3剤 (リファンピシン, イソニアジド, エタンブトール) に併用して, 予後と再発予防を期待してプレドニゾロンを使用した. 稀な結核性心膜炎に心タンポナーデを併発し重症化した症例を経験し, 治療に際し初期よりステロイドを併用して良好な経過を得たので文献的考察を加えて報告する.
著者
古川 力丈 奥村 恭男 渡辺 一郎 園田 和正 佐々木 直子 磯 一貴 高橋 啓子 大久保 公恵 中井 俊子 國本 聡 平山 篤志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.SUPPL.2, pp.S2_93-S2_100, 2015 (Released:2016-12-16)
参考文献数
8

症例1 : 74歳男性. 繰り返す上室頻拍のため, 心臓電気生理学的検査 (EPS) を行い, slow-intermediate型の房室結節回帰性頻拍 (AVNRT) が誘発された. 解剖学的遅伝導路 (SP) 部位に対して焼灼を行ったが, その後もAVNRTが誘発されるため, 冠状静脈洞 (CS) 内およびSPの左房側より通電したところ誘発不能となった. 症例2 : 77歳女性. 動悸のため来院. 動悸時の心電図ではRR間隔が交互に変化する上室頻拍を認めた. EPS上, 室房伝導はなく, 洞調律1拍に対してAH間隔の異なる心室応答が2拍出現したことにより, 房室二重伝導路によるdouble ventricular response (DVR) と診断した. 右房側より解剖学的SP部位を焼灼したが無効であり, CS内, 左房側より通電しDVRは消失した. 後日再発したため, 再度EPSを行った. 解剖学的SP, CS内, 左房側より通電したが, DVRの消失には至らなかった. 通電により, 一時的にWenckebach型房室ブロックとなったため, それ以上の通電を行わず終了した. 通電は不十分であったが, 現在は頻拍の再発なく経過している.
著者
有本 宗仁 瀬在 明 中田 金一 大幸 俊司 石井 雄介 八百板 寛子 畑 博明 塩野 元美 樋口 義治 平山 篤志 岡田 京子 山田 勉
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.186-190, 2015-08-01 (Released:2016-01-25)
参考文献数
15

症例は55 歳女性,7 日前より全身倦怠感を認め,かかりつけ医(心療内科)を受診した.その後,症状の増悪を認め,前医に搬送された.心筋逸脱酵素の上昇を認め,緊急心臓カテーテル検査を施行したが,冠動脈の狭窄病変は認めなかった.血行動態が保てず,大動脈バルーンパンピング,経皮的心肺補助装置を挿入し当院へ搬送となった.劇症型心筋炎の診断で,左心補助人工心臓による循環補助を行ったが,右心不全の悪化を認め6 日後に,右心補助人工心臓による補助も施行し,加療を行うも奏功せず入院11 日目,死亡退院となった.劇症型心筋炎は稀な疾患であり,両心室補助人工心臓を施行した1 例を経験したので報告する.

1 0 0 0 OA 6.抗凝固療法

著者
深町 大介 平山 篤志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.238-245, 2017-02-10 (Released:2018-02-10)
参考文献数
13

現在,冠動脈イベント二次予防を目的とする抗血小板療法に,心原性脳塞栓発症予防のための抗凝固療法を併用することで出血性リスクが上昇する問題が生じている.そのような中で,現在,DOAC(direct oral anticoagulant)の有効性は,心房細動(atrial fibrillation:AF)のみでなく,虚血性心疾患においても有効性が期待されており,様々な臨床研究が行われている. 本稿では心筋梗塞の二次予防におけるワルファリンとDOAC,AF合併虚血性心疾患における抗血小板療法とワルファリン,DOACについて概説したい.
著者
渡邉 隆太 渡辺 一郎 奥村 恭男 永嶋 孝一 高橋 啓子 新井 将 若松 雄治 黒川 早矢香 大久保 公恵 中井 俊子 平山 篤志 磯 一貴 國本 聡 園田 和正 園田 和正 戸坂 俊雅
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.33-39, 2019-02-01 (Released:2019-03-30)
参考文献数
30

背景:心房細動 (AF) に対する高周波 (RF), cryoballoon (CB), hotballoon (HB) による肺静脈隔離 (PVI) が心臓自律神経活動に及ぼす効果を検討した. 対象及び方法:AF に対する RF (n = 18),CB (n = 31), HB (n = 16) による PVI 症例で PVI 前後に左房 (LA) 自律 神経叢 (GP) を刺激を施行し,迷走神経反射 (VR) の有無 を検討し,さらに,心拍数および心拍数変動を比較検討 した. 結果:RF-PVI 群,CB-PVI 群,HB-PVI 群で GP 刺激 による VR が 72%,73%,78%で消失した.術後の心 拍数は CB-PVI,HB-PVI 群で有意に増加したが,RFPVI 群では差を認めなかった.心拍数変動の高周波成分 (HF),低周波成分 (LF)/HF には各群とも PVI 前後で差を 認めなかった. 結語:PVI 後早期の心拍数変動は RF, CB, HB の3群 間で同等であったが,心拍数は CB, HB 群において有意 に増加した.PVI 後早期の心臓自律神経活動評価におい て,心拍数増加がバルーンを使用したアブレーションと カテーテルアブレーションとの違いであった.
著者
小船 雅義 渡辺 一郎 芦野 園子 奥村 恭男 高木 康博 山田 健史 小船 達也 大久保 公恵 進藤 敦史 中井 俊子 國本 聡 平山 篤志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.SUPPL.3, pp.S3_114-S3_117, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
4

植込み型除細動器 (ICD) は心室頻拍/細動 (VT/VF) に基づく突然死の1次/2次予防に有効な治療法であることが示されている. しかしながら, ICDの植え込みを施行したにもかかわらず救命困難な症例も存在する. 今回, VFに対しICDが作動したにもかかわらず死亡した2症例を経験したので報告する.  症例1 : 56歳, 男性. 陳旧性心筋梗塞後の低心機能症例で, VTに対しICD植え込みを施行したが, 約1年後, 心肺停止 (CPA) にて搬送され死亡した. ICDの記録にてVFによる作動が確認された.  症例2 : 69歳, 男性. 2004年4月にCPAで当院搬送され救命され, 冠攣縮性狭心症に伴うVFに対しICD植え込みを施行した. 心機能は良好であり狭心症治療薬の服用も励行していたが, 再びCPAとなり死亡した. ICDの記録にてVFによる作動が確認された.  結語 : 冠動脈攣縮に伴うVF症例および虚血性心疾患に基づく重度の低心機能例ではICDが作動してもVT/VFが停止しない場合もあり, 冠攣縮の薬物コントロール, あるいはアブレーションなどの心室性不整脈に対する対策が望まれる.
著者
芦野 園子 渡辺 一郎 小船 雅義 奥村 恭男 大久保 公恵 中井 俊子 平山 篤志
出版者
NIHON UNIVERSITY MEDICAL ASSOCIATION
雑誌
日大醫學雜誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.293-298, 2008-10-01

ブルガダ症候群 (BS) における心室細動 (VF) の発生機序として,右室流出路心筋活動電位波形の第 1 相の増強とそれに続く活動電位ドームの減高,消失に基 づく phase 2 reentry が注目されている.我々は BS と対照群に対し右室流出路 (RVOT) で単相性活動電位を記 録し,有効不応期 (ERP) および心筋活動電位持続時間 (MAPD) の回復特性について検討を行った.対象は電気生理学的検査で 3 連早期刺激までで VF が誘発された BS 9 例および対照群 8 例.基本周期刺激時における MAPDは 2 群間で有意差がなかった.しかし ERP および最短拡張期間隔における MAPD は BS で有意に短縮していた.また MAPD 回復曲線より算出された最大の傾き (slope max) は BS の方が急峻の傾向を示した.以上より,RVOT における心室早期刺激時の MAPD の短縮および slope max の急峻化が BS の VF 発生に関与していると考えられた.
著者
小船 雅義 渡辺 一郎 芦野 園子 奥村 恭男 小船 達也 大久保 公恵 中井 俊子 國本 聡 平山 篤志
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.290-296, 2009-10-01 (Released:2010-04-20)
参考文献数
36

要旨 背景:致死的な心室性不整脈は Brugada 症候群の特徴であるが,その不整脈発生基盤は心室のみにとどまらず,心房においても同様の変化がみられ,上室性不整脈の基盤を形成していると考えられている.しかしながら,上室性不整脈の電気生理学的背景はあまり知られていない.そこで我々は Brugada 症候群と対照群での心房筋の脱分極と再分極の電気生理学的指標について比較検討した.対象:全例 pilsicainide 負荷試験陽性であったBrugada 症候群 18 症例で,心房細動 (AF) の既往は認めなかった.対照群として,房室結節回帰性頻拍,WPW症候群,右室流出路起源心室頻拍にて心臓電気生理学的検査,カテーテルアブレーションを施行した 11 症例で比較検討した.方法:右心耳よりプログラム刺激を基本刺激周期 600 ms および 400 ms で 2 連早期刺激まで施行した.次に単相性活動電位 (MAP) を高位右房側壁より記録した.心房内伝導時間 (IACT) は刺激スパイクから遠位冠静脈洞内電位で計測した. 結果:対照群では全例 AF は誘発されず,Brugada 症候群では全例 AF が誘発された.対照群と Brugada 症候群間で,基本刺激時における MAP 持続時間 (MAPD) および IACT に有意差はなく,また右房有効不応期にも有意差は認めなかった.最短拡張期における MAPD は,Brugada 症候群で短縮しており,IACT 延長率は Brugada 症候群で有意に延長していた.Brugada 症候群間で MAPD の回復曲線における最大スロープは有意に大きかった.結語:我々の検討では,BS において,最短拡張期における MAPD の短縮,MAPD の回復曲線の最大スロープの増大および,IACTの延長が AF の易誘発性に関与していると考えられた.
著者
芦野 園子 渡辺 一郎 小船 雅義 奥村 恭男 大久保 公恵 中井 俊子 平山 篤志
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.299-303, 2008-10-01 (Released:2011-11-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

症候性ブルガダ症候群 (BS) に対する突然死の予防に関しては現時点では植え込み型除細動器 (ICD) が唯一の有効な治療法とされている.しかし近年 BS のICD 頻回作動例においてキニジンの内服により心室細動 (VF) 発作が抑制されたなど,キニジンの有用性がいくつか報告されている.そこで我々は BS の右室流出路心筋の有効不応期,活動電位持続時間およびその回復特性に対するキニジン静脈内投与の効果について検討を行った.対象は男性の無症候性ブルガダ症候群 5 症例.ST 上昇のタイプは Brugada-type-1 が 1 症例,type-2 が 3 症例,type-3 が 1 症例であった.電気生理学的検査ではコントロール時,全例で VF が誘発された.キニジン投与後 4 例で VF が誘発不能となった.その理由として,キニジン投与後右室流出路の有効不応期は延長し,また活動電位持続時間の回復曲線の最大の傾きが減少したことが VF 発生を抑制したことに関連していると考えられた.