- 著者
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西村 純
市橋 則明
日下部 虎夫
奥田 良樹
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2005, pp.C0297-C0297, 2006
【目的】ラグビーは短距離走を繰り返す競技であり、ハムストリングスに大きな負荷が生じるため、肉離れの発生頻度は高い。その主原因は膝屈曲筋力低下、膝屈伸筋力のバランス不良、すなわち伸展筋力に対して屈曲筋力が低い、あるいは膝屈曲筋力の左右差が大きくなると発生率が高くなるとされている。本研究の目的は、肉離れを生じたラグビー選手の運動能力・膝関節屈伸筋力・下肢柔軟性に他の選手との違いがあるかを明らかにすることである。<BR>【対象および方法】対象はラグビー部(関西大学Bリーグ)に所属する男子学生22名(平均年齢20.2±1.1歳、身長171.9±5.3cm、体重72.8±7.7kg)とした。体力測定として筋力測定、運動能力テスト、長坐体前屈テストを行い、さらに測定後の1年間での肉離れの発生の有無を追跡調査した。筋力測定には等速性筋力評価訓練装置MYORET(川崎重工業株式会社製RZ450)を用い、角速度60、180、300deg/secでの等速性膝屈伸筋力を測定した。3回の膝屈伸動作の最高値をピークトルクとし、さらにトルク体重比(ピークトルク/体重)および屈曲筋力と伸展筋力の比(H/Q比)を求めた。運動能力テストは片脚垂直跳び、片脚幅跳び、片脚三段跳びの3種目とした。また、長坐体前屈を下肢柔軟性の尺度として用いた。また、アンケート調査により体力測定後の1年間で、ハムストリングスの肉離れを生じた群(St群)と生じなかった群(Con群)に分類し、膝関節屈伸筋力(ピークトルク、トルク体重比、H/Q比)、運動能力テストおよび長坐体前屈の結果を比較した。統計処理にはt検定を用い、有意水準は5%とした。<BR>【結果および考察】肉離れを生じたのは22名中6名で、ポジションはバックスが5名、フォワードが1名であった。生じなかったのは16名で、バックスが8名、フォワードが8名であった。両群間で年齢、身長、体重に差は無かった。膝屈伸筋力では、ピークトルクには有意差は認められなかったものの、60 deg/secでの屈曲トルク体重比は、St群(1.50±0.37 Nm/kg)はCon群(1.86±0.34Nm/kg)より有意に低い値を示した。また、180 deg/secでのH/Q比は、St群(0.71±0.08)はCon群(0.82±0.15)より有意に低い値を示した。St群で屈曲筋力の左右差を比較すると、受傷側と反対側との間には全ての角速度において有意差は無かった。運動能力テストでは3種目とも両群間で有意な差は認められなかった。長坐位体前屈は有意な差は認められなかったものの、St群(28.3±4.6cm)はCon群(33.5±6.5cm)に比べ低い傾向を示した。今回の結果から、肉離れを生じる選手は運動能力に大きな差はないが、膝関節屈曲筋力のトルク体重比の低下とH/Q比の低下を認めることが示唆された。