著者
市橋 則明 吉田 正樹
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.461-464, 1993-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
8
被引用文献数
5 4

A study was conducted to determine the minimum quantity of leg exercise required to prevent disuse atrophy of the quadriceps femoris muscle during bed rest. The subjects were 10 normal young university students with a mean age of 21.1 years. First, analysis of rectified filtered electromyography (RFEMG) was performed on the rectus femoris and vastus medialis during walking with cadences of 100 steps/min and 150 steps/min. Then, the effects of straight leg raising (SLR), patella setting (PS), knee extension-flexion in a supine position (KEF) and knee extension in a sitting position (KE) were analysed for each muscle using the same method. Based on the value of RFEMG for each muscle during walking, the repetition number for each exercise was calculated. For the rectus femoris, the repetition number for each exercise corresponding to 10000 steps with a cadence of 100 steps/min was 289 for SLR, 466 for PS, 1255 for LEF and 1663 for KE. For the vastus medialis, the corresponding numbers were 1223, 381, 6367 and 2170, respectively. When the cadence increased to 150 steps/min, the repetition number of each exercise for each muscle also increased. These results indicate that high repetition exercise is recommendable to prevent disuse atrophy of the quadriceps femoris muscle. Therefore, the activity of patients should be increased to stimulate weakened muscles such as the quadriceps femoris during hospitalization.
著者
小栢 進也 建内 宏重 高島 慎吾 市橋 則明
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.97-104, 2011-04-20
被引用文献数
1

【目的】筋の作用は解剖学的肢位で考えられることが多いが,実際の運動では関節角度変化に伴い,筋の作用や発揮できる筋力が異なる。本研究では数学的モデルを用いて角度変化に伴う股関節周囲筋の屈伸トルクを検討した。【方法】股関節周囲筋を対象とし,生理学的断面積,羽状角,モーメントアーム,筋線維長から股関節屈曲角度を変化させた際に筋が発揮する屈伸トルクを求めた。なお,大殿筋下部線維,縫工筋,腸腰筋は走行変化点を考慮したモデルを用いた。【結果】大腿直筋は屈曲10〜30°で大きな屈曲トルクを有し,伸展域や深い屈曲域ではトルクが小さくなった。一方,腸腰筋は深い屈曲域で強い力を発揮し,伸展域でもトルクは維持された。また,ハムストリングスは屈曲域で大きな伸展トルクを発揮するが,伸展につれて急激に小さくなり,伸展域では大殿筋下部線維が主動筋となることがわかった。内転筋は伸展域で屈筋,屈曲域で伸筋になる筋が多かった。【結論】関節角度によって変化する筋の発揮トルク特性を考慮することで,弱化した筋の特定など筋力の詳細な評価が可能になると考えられる。
著者
岩下 篤司 市橋 則明 池添 冬芽 大畑 光司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
巻号頁・発行日
pp.A0129, 2004 (Released:2004-04-23)

【目的】 我々はこれまで、ペダリング動作における負荷量や回転数の変化が膝・足関節筋の筋活動量に及ぼす影響を検討してきた。しかし、体幹および股関節周囲筋の筋活動については未解明であった。本研究の目的は、負荷量と回転数を変化させてペダリング動作を行ったときの体幹および股関節周囲筋の筋活動を検討することである。【対象と方法】 対象は健常成人9名(年齢25.0±2.7歳、身長164.8±6.7cm、体重56.0±7.9kg)とした。筋電図の測定筋は右側の脊柱起立筋、腹直筋、外腹斜筋、大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋、大腿直筋、半膜様筋の8筋とした。表面筋電図を双極導出するため銀塩化銀電極(直径8mm)2個を電極中心間距離20mmで筋線維の走行に沿って貼付した。筋電図の測定にはフルサワ・ラボ社製筋電計を使用し、整流平滑化筋電図(Rectified Filtered electromyography:以下RFEMG)を求め、AD変換しパソコンに入力した。自転車エルゴメーターはコンビ社製のPOWER MAX Vを使用し、サドルの高さは、下死点にて膝屈曲30度に設定した。また、体幹の前方傾斜角度を60度とした。負荷量1.0kp、2.0kp、3.0kpと、回転数60rpm、120rpmの組み合わせにて、6設定とした。ペダリング動作を行ったときのRFEMGを測定し、5周期分の筋活動量をデータとして用いた。筋電図データは、各筋の最大等尺性収縮時の筋活動を100%として正規化した。統計処理には反復測定二元配置分散分析及び、Tukeyの多重比較を用いて、負荷量と回転数を変化させたときの影響を分析した。【結果及び考察】 負荷量と回転数の変化により、脊柱起立筋の%RFEMGは9.4~22.3%、腹直筋は21.4~80.7%、外腹斜筋は28.9~74.4%、大殿筋は12.1~46.2%、中殿筋は7.2~30.9%、大腿筋膜張筋は9.1~37.4%、大腿直筋は15.4~39.9%、半膜様筋は13.2~40.7%の筋活動量を示した。回転数を増加させることにより、全ての筋で有意に筋活動量は増加した。負荷量を増加することにより、外腹斜筋を除く全ての筋で有意に筋活動量は増加した。多重比較の結果、脊柱起立筋と腹直筋は1.0kpから2.0kpへ増加しても有意な影響を認めなかった。大殿筋は2.0kpから3.0kpへ増加しても有意な影響を認めなかった。中殿筋と大腿筋膜張筋、大腿直筋と半膜様筋は全ての負荷量増加で有意に筋活動量は増加した。今回の結果、負荷量2.0kpと回転数120rpmにおいて腹直筋と外腹斜筋は77.4~80.7%と高い筋活動量を示し、高負荷でのペダリング動作では体幹屈筋の高い筋活動が必要であることが示唆された。また外腹斜筋の筋活動量を高めるには負荷量よりも回転数を増加させるほうが有効であると考えられた。
著者
高橋 佳苗 長尾 能雅 足立 由起 森本 剛 市橋 則明 坪山 直生 大森 崇 佐藤 俊哉
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.11-20, 2011 (Released:2011-10-05)
参考文献数
27
被引用文献数
3 3

Objective:It is well known that the use of benzodiazepines is associated with falling in elderly people, but there have been few researches focused on changes in the dose of benzodiazepines and falls. If the association between changes in the dose of benzodiazepines and falling becomes clear, we may take an action to prevent falling.In this study, we investigated the association between changes in the dose of benzodiazepines and falling among elderly inpatients in an acute-care hospital.Design:Falling generally results from an interaction of multiple and diverse risk factors and situations, and medication history of each subject must be considered in this study. We conducted a case-crossover study in which a case was used as his/her own control at different time periods. Therefore covariates that were not time-dependent were automatically adjusted in this study.Methods:Subjects were patients who had falling at one hospital between April 1, 2008 and November 30, 2009. Data were collected from incident report forms and medical records. Odds ratio for changes in the dose of benzodiazepines were calculated using conditional logistic regression analyses.Results:A total of 422 falling by elderly people were eligible for this study. The odds ratio for increased amounts of benzodiazepines was 2.02(95% Confidence Interval(CI):1.15, 3.56). On the other hand, the odds ratio for decreased amounts of benzodiazepines was 1.11(95%CI:0.63,1.97).Conclusion:There was an association between increased amounts of benzodiazepines and falling. Hence, it is considered meaningful to pay attention to falling when amounts of benzodiazepines are increased to prevent falling in hospitals.
著者
市橋 則明 吉田 正樹 篠原 英記 伊藤 浩充
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.487-490, 1992-08-01
被引用文献数
10

健常女性8名を対象に, スクワット動作時の下肢筋(内側広筋, 大腿直筋, 大腿二頭筋, 腓腹筋)の筋活動を測定し, スクワットが各筋に与える影響を検討した。その結果, 30度での片脚スクワットで腓腹筋が36.0%と他の筋に比較して大きな% IEMGを示したが, 他の3筋は10〜20%とほぼ同じ値を示していた。60度での片脚スクワットでは, 4つの筋の有意な差はみられなかった。また, 最大下肢伸展動作時の% IEMGは, 内側広筋と大腿直筋が他の筋に比較し大きな値を示した。さらに, 30度における最大下肢伸展においては内側広筋が大腿直筋よりも有意に大きな値を示した。closed kineic chainでの訓練においては, 各筋の活動状態を知ることが重要である。
著者
八木 優英 建内 宏重 栗生 瑞己 水上 優 本村 芳樹 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
巻号頁・発行日
pp.0278, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】トーマステスト変法(MTT)は片側股関節屈曲により対側股関節を伸展位にし,その際に生じる股関節内外転運動や可動域制限を捉えることで,筋張力が優位に高い股関節屈筋を推定する評価方法である。この推定は各股関節屈筋が有する,解剖学的肢位での股関節屈曲以外の運動作用を基に行われる。しかし股関節伸展位では股関節内外転運動などで,どの股関節屈筋の筋張力が優位に増加するかは明確でないため,MTTの評価結果に科学的な裏付けがあるとは言い難い。そこで股関節伸展位での股関節運動時に筋張力が増加する股関節屈筋を明示し,MTTの解釈についてのエビデンスを得ることを目的として本研究を行った。【方法】対象は健常成人男性12名(23.8±2.7歳)であった。測定肢位は膝関節より遠位をベッドから垂らした背臥位で,骨盤を非弾性ベルトでベッドに固定した。腰椎の前弯が消失するまで非利き足の股関節を屈曲させ,その位置で被験者に両手で大腿部を保持させた。利き足を股関節伸展10°,外転0°,外旋0°,膝屈曲90°の肢位(基準条件)で検者が保持した。利き足股関節角度を基準条件から他動的に動かした外転条件(外転20°),内転条件(内転15°),外旋条件(外旋15°),内旋条件(内旋15°),伸展条件(伸展25°)の5条件と基準条件の計6条件で筋張力を測定した。測定筋は腸骨筋(IL),大腿直筋(RF),縫工筋(SA),大腿筋膜張筋(TFL),長内転筋(AL),中殿筋前部線維(GM)とした。筋へのストレッチ効果を除外するために,条件間に1時間以上休憩し,筋の測定順と測定条件順は無作為に決定した。硬さの指標である筋弾性率により筋張力を推定可能なせん断波エラストグラフィー機能(Super Sonic Imagine社製)を用いて各筋の筋張力を評価した。本研究では伸張による筋張力増加を評価した。そのため各条件で筋張力の増加した筋はMTT時に,測定条件と逆の運動方向に影響することを示す。統計解析は反復測定分散分析後,計画的検定として基準条件と他条件間でWilcoxonの符号付順位検定を用いて筋弾性率を比較した。有意水準は5%とし,計画的検定では筋毎にHolm法で補正した有意水準を用いた。【結果】一元配置分散分析の結果,全筋で条件間に有意差を認めた。ILでは基準条件(23.9:kPa)に比べ外転条件(41.6),外旋条件(35.8),伸展条件(43.0)で,TFLでは基準条件(18.7)に比べ内転条件(43.2)で,RFでは基準条件(30.1)に比べ内転条件(36.7),伸展条件(37.3)で,ALでは基準条件(12.7)に比べ外転条件(20.2)で筋弾性率が有意に高かった。【結論】本研究結果から,MTTでの伸展制限はIL,RFの,外転運動・内転制限はRF,TFLの,内転運動・外転制限はIL,ALの,内旋運動・外旋制限はILの筋緊張亢進または短縮を示す所見であることが示された。本結果は健常成人を対象とした研究ではあるが,MTTの解釈に有用な知見である。
著者
松村 葵 建内 宏重 中村 雅俊 市橋 則明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.81-87, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
38

【目的】運動前後の棘下筋の即時的な筋断面積の変化を比較し,低負荷・低速度での肩関節外旋運動によって棘下筋に対してトレーニングによる刺激を与えることができるかどうかを明らかにすること。【方法】健常男性10 名を対象とし,負荷と運動速度をそれぞれ0.5 kg・5 秒条件,0.5 kg・1 秒条件,2.5 kg・1 秒条件の3 条件で肩関節外旋運動を行い,運動前後に棘下筋の筋断面積を超音波画像診断装置によって撮影した。また表面筋電図を用いて運動中の棘下筋と三角筋後部の筋活動を測定した。【結果】運動後の棘下筋の筋断面積は0.5 kg・5 秒条件で他の2 条件よりも有意に大きく増加した。棘下筋の運動中の平均筋活動量には条件間に有意な差はみられなかったが,運動1 セット中の棘下筋の筋活動量積分値は0.5 kg・5 秒条件で有意に大きかった。【結論】低負荷であっても運動速度を遅くすることで,棘下筋にトレーニング刺激を与えられることが明らかとなった。
著者
後藤 優育 建内 宏重 福元 喜啓 高木 優衣 大塚 直輝 小林 政史 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
巻号頁・発行日
pp.Ca0219-Ca0219, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 変形性膝関節症(以下、膝OA)は、高齢者において高い有病率を示し、膝OA患者において、疼痛、筋力低下およびROM制限をはじめとする機能低下がみられ、さまざまな日常生活動作が障害される。膝OAの発症・進行は、歩行などの動作時に膝関節内で圧縮ストレスが引き起こされることが原因と考えられている。この圧縮ストレスを反映する指標とされるものには、外的膝屈曲モーメント(以下:KFM)や外的膝内反モーメント(以下:KAM)があり、特に先行研究では、歩行時のKAMについて検討しているものが多い。しかし、実際には膝OA患者は立ち上がり動作や階段昇降で症状を訴えることが多いにも関わらず、これらの各種動作でどの程度のモーメントが膝関節に加わっているのかは不明である。そこで、本研究は膝OA患者の歩行、立ち上がり動作、階段昇降動作に着目し,KFMとKAMの動作による違いを検討することを目的とした。【方法】 対象は地域在住の女性膝OA患者6名(年齢:55.3±4.33歳)とした。対象者の包含基準として、膝OAと診断され、独歩可能な者とした。測定課題は、歩行、椅子からの立ち上がり動作、昇段動作および降段動作とし、全て自由な速度で行った。反射マーカーをPlug in gaitモデルに準じて全身に貼付し、三次元動作解析装置VICON NEXUS(VICON社製,サンプリング周波数200Hz)および床反力計(Kistler社製,サンプリング周波数1000Hz)を使用して解析した。測定下肢はOA側としたが、両側性の膝OAの場合には、より症状の強い方をOA側と定義し測定した。立ち上がり動作時の椅子の高さは下腿(外果~膝関節裂隙)の長さとし、上肢は胸の前で組んで行った。昇段動作および降段動作には17cmの台を1段用い、OA側下肢からの昇段および非OA側下肢からの降段を行った。上肢は胸の前で組み、目線は前方を見るように指示した。各動作は十分な練習を行った後、3回測定した。データの解析区間は、歩行ではOA側の立脚相、立ち上がり動作では殿部が座面から離れてから立位までの間、昇段動作ではOA側下肢が台上についてから非OA側が台上につくまでの間、降段動作では非OA側下肢が台上から離れ、OA側下肢が台上から離れるまでの間とした。各動作時のKFMとKAMのピーク値を体重と身長で除した値(Nm/kg・m)を求め,3回の平均値を解析に使用した。統計検定には一元配置分散分析およびBonferroni法による多重比較を行い、KFMおよびKAMを動作間で比較した。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は本学倫理委員会の承認を得て行われた。対象者には研究の内容を紙面上にて説明した上、同意書に署名を得た。【結果】 各動作におけるKFM(Nm/kg・m)は、歩行では0.32±0.09、立ち上がり動作では0.35±0.16、昇段動作では0.43±0.14、降段動作では0.52±0.18であった。統計処理の結果、降段動作のKFMは歩行、立ち上がり動作より有意に大きかった(p<0.05,p<0.01)。KAM(Nm/kg・m)は、歩行では 0.43±0.10、立ち上がり動作では0.16±0.13、昇段動作では0.50±0.14、降段動作では0.47±0.13であった。統計処理の結果、立ち上がり動作のKAMは歩行、昇段動作、降段動作より有意に小さかった(p<0.05)。また、歩行、昇段動作、降段動作の間には有意差は認めなかった。【考察】 本研究の結果より、KFMは降段動作が歩行や立ち上がり動作よりも大きいということ、また、KAMは、立ち上がり動作では小さく、歩行と階段昇降動作とでは差がないことが明らかとなった。降段動作においてKFMが歩行や立ち上がり動作よりも有意に大きかったことより、歩行や立ち上がり動作よりも降段動作で症状を訴える膝OA患者は、KFMの増大が症状を誘発している可能性が高いと考えらえる。また、KAMについては、一般的に歩行時のKAMが膝OAの進行と関連があると報告されているが、昇段動作および降段動作においても歩行時と同等のKAMが生じており、歩行のみならず階段昇降動作においても着目することの重要性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 本研究で行ったこれらの動作は、膝OA患者のリハビリプログラムや日常生活指導で広く行われる動作である。本研究は、これらの動作間でのKFMおよびKAMを比較しており、患者の訴えに合わせた訓練動作の選択や、動作指導の際に必要な知見になると考えられる。
著者
池添 冬芽 小林 拓也 中村 雅俊 西下 智 荒木 浩二郎 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】近年,低強度の筋力トレーニングであっても疲労困憊までの最大反復回数で行うと,高強度と同程度の筋力増強・筋肥大効果が得られることが報告されている。しかし,疲労困憊までさせずに最大下の反復回数で低強度トレーニングを実施した場合,高強度と同等の筋力増強・筋肥大効果が得られるかどうか,また筋の質的要因に対しても改善効果が得られるかどうかについては明らかではない。本研究の目的は,健常若年男性を対象に低強度・高反復および高強度・低反復の膝関節伸展筋力トレーニングを8週間実施し,1)低強度・高反復トレーニングは高強度と同程度の筋力増強や筋肥大・筋の質改善効果が得られるのか,2)各項目の経時変化に両トレーニングで違いはみられるのかについて明らかにすることである。【方法】対象は下肢に神経学的・整形外科的疾患の既往のない健常若年男性15名とした。対象者を無作為に低強度・高反復トレーニング群(低強度群)と高強度・低反復トレーニング群(高強度群)に分類した。膝関節伸展筋力トレーニングは筋機能運動評価装置(BIODEX社製System4)を用いて,低強度群では30%1RM,高強度群では80%1RMの強度で週3回,8週間実施した。8回の反復運動を1セットとし,低強度群では12セット,高強度群では3セット実施した。介入前および介入2週ごとに1RM・最大等尺性筋力,超音波測定を行った。1RM・最大等尺性筋力測定には筋機能運動評価装置を用い,膝伸展1RMおよび膝関節70°屈曲位での最大等尺性膝伸展筋力を測定した。超音波診断装置(GEメディカルシステム社製LOGIQ e)を用いて,大腿直筋の筋量の指標として筋厚,筋の質の指標として筋輝度を測定した。なお,筋輝度の増加は筋内の脂肪や結合組織といった非収縮組織の増加を反映している。トレーニングの介入効果を検討するために,各項目について分割プロット分散分析(群×時期)を行い,事後検定にはBonferroni法による多重比較を行った。【結果】分割プロット分散分析の結果,1RM・最大等尺性筋力,筋厚および筋輝度のいずれも時期にのみ主効果がみられ,交互作用はみられなかったことから,いずれの項目も2群間で効果の違いはないことが示された。事後検定の結果,両群ともに1RMおよび最大等尺性筋力はPREと比較して2週目以降で有意な増加がみられた。また両群ともに筋厚はPREと比較して4週目以降で有意に増加し,筋輝度は8週目のみ有意に減少した。【結論】本研究の結果,両トレーニング群ともに筋力増強,筋肥大,筋の質の改善がみられ,その変化の程度や経時変化に違いはみられなかったことから,低強度であっても12セットと反復回数を増やすことによって,高強度3セットのトレーニングと同様の筋力,筋量,筋の質の改善効果が得られることが明らかとなった。
著者
朴 文華 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
巻号頁・発行日
pp.C0255-C0255, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】自転車エルゴメーターによるトレーニングは主に持久力のトレーニングとして用いられているが、高負荷で行うことにより筋力トレーニングとして用いることができると報告されている。しかし、高負荷ペダリングトレーニングの下肢筋への影響は、膝伸展筋力に関しては等尺性、等速性ともに意見が一致しておらず、また、体幹筋にどのような影響を及ぼすかについての報告は見当たらない。さらに、これらの報告はトレーニング期間が6~8週で行われており、4週間という短期間で行われたものはない。本研究の目的は、4週間という短期間での高負荷のペダリングトレーニングが下肢および体幹筋力と下肢のパフォーマンスに与える影響を検討することである。【対象と方法】本研究に同意を得た健常学生17名を対象とした。トレーニング群として10名(男5名、女5名:平均年齢22.8±2.8歳、平均体重55.4±6.3kg)に自転車エルゴメーター(COMBI POWERMAX V)によるトレーニングを実施した。残りの7名(男4名、女3名:平均年齢23.6±4.2歳、平均体重60±16.5kg)はコントロール群とした。トレーニング期間は週4回、4週間とし、体重の7.5%の負荷(平均4.2±0.5kp)で30秒間最大速度でのペダリングを30秒間の休息をはさみ4回行わせた。4週間のトレーニング前後に等速性膝屈伸筋力(角速度60,180,300deg/sec)、等尺性膝屈伸筋力、脚伸展筋力(CKC筋力)、腹筋力、背筋力、ストレングスエルゴを用いた回転数20,40,60,100rpmでの最大トルク、エルゴメーターによる体重の7.5%の負荷を用いた最大パワー、パフォーマンステスト(幅跳び、垂直跳び、6m hop、stepping test)を評価した。統計処理にはトレーニング前後で対応のあるt検定を用いた。【結果と考察】等速性の膝屈曲及び伸展筋力においてはどの角速度でも有意差は認められなかった。等尺性伸展筋力は207.5±48.8Nmから222.7±63.8Nmへと、CKC筋力は1144.7±409.8Nから1404.4±197.7Nへと有意に筋力が増加した。また、腹筋力においても143.4±47.7Nから175.0±87.0Nとなり筋力増加が認められたが背筋力は有意な差は認められなかった。ペダリング筋力においては、ストレングスエルゴによる等速性の全ての速度で筋力の変化はなく、エルゴメーターによる最大パワーの変化も見られなかった。パフォーマンステストにおいては6m hop, ステッピングテストにおいて有意にトレーニング効果が認められたが、その他は認められなかった。以上の結果より、4週間の高負荷ペダリングトレーニングは、1)等尺性膝伸展筋力だけでなくCKC筋力と下肢パフォーマンスを改善させることができること、2)下肢だけでなく腹筋筋力を増加させることができることが示唆された。
著者
塚越 累 大畑 光司 福元 喜啓 沖田 祐介 高木 優衣 佐久間 香 高橋 秀明 木村 みさか 市橋 則明
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101012-48101012, 2013

【はじめに、目的】Honda製リズム歩行アシスト装置(以下,歩行アシスト)は,歩行時の股関節の屈曲伸展運動を補助するトルクを負荷することによって歩行障害者の歩行の改善を目指すものである。これまでの我々の研究から,歩行アシスト使用中は下肢関節の角度範囲の増加や関節モーメントの増加が認められているが(日本臨床バイオメカニクス学会:2012),歩行アシストの効果が使用後に残存するか否かは明らかではない。本研究の目的は,若年者および高齢者における歩行アシスト使用後の歩行変化を動作解析および下肢筋活動分析の側面から検証することである。【方法】若年者17名(平均年齢25.1±3.8歳,男性9名)および日常生活と外出が自立している高齢者13名(平均年齢76.9±4.3歳,男性7名)を対象とし,歩行アシスト使用前および使用直後の自由歩行時の三次元動作解析と筋電図解析を行った。歩行アシストが発生させる股関節へのアシストトルクは,屈曲・伸展方向とも6Nmとし,使用時間は3分間とした。三次元動作解析装置および床反力計を使用し,歩行時の下肢関節角度,内的モーメントおよびパワーを測定した。筋電図解析の対象筋は右側の大殿筋,中殿筋,大腿直筋,外側広筋,大腿二頭筋,前脛骨筋,ヒラメ筋とした。得られた筋電図生波形を全波整流し50msのRoot mean squareを求めた後,最大等尺性収縮を100%として正規化し,それぞれ立脚期と遊脚期の平均値を算出した。歩行課題は各3回測定し,分析には3回の平均値を使用した。各測定項目について,測定時点(使用前,使用後)と群(若年群と高齢群)を2要因とした二元配置分散分析を行った後,交互作用が認められた場合には群内での比較を行った。【倫理的配慮、説明と同意】本研究計画は本学倫理委員会にて承認されており,対象者には研究実施前に研究内容について十分に説明し,書面にて同意を得た。【結果】歩行アシスト使用後に歩行速度は有意に増加した(全体;使用前1.19±0.15m/s,使用後1.27±0.13m/s)。ステップ長には有意な交互作用がみられ,高齢群のみ使用後に有意な増加が認められた(若年群;前0.64±0.06m,後0.65±0.05m,高齢群;前0.58±0.06m,後0.63±0.06m)。歩行率には有意な変化は見られなかったものの,若年群において増加する傾向にあった(若年群;前118±7steps/min,後121±9steps/min,高齢群;前116±11steps/min,後115±12steps/min)。歩行アシスト使用後は,使用前に比べて初期接地時の股関節屈曲角度,立脚後期の股関節最大伸展角度(全体;前12.6±7.2度,後14.6±8.4度)および遊脚期の股関節最大屈曲角度が有意に増大した。また,荷重応答期における股関節伸展モーメントと股関節伸展筋求心性パワーはアシスト使用後に有意に増加したが,立脚後期の股関節屈曲筋遠心性パワーの増加は高齢群のみに認められた。膝関節では,荷重応答期の屈曲角度および伸展モーメントの増加が認められ,遊脚中期の最大屈曲角度も使用後に増大した。一方,遊脚後期の膝関節屈曲モーメントは高齢群のみ有意な増加がみられた。足関節の角度にはアシスト使用前後における有意な変化は無かった。筋電図解析では,立脚期の大殿筋の筋活動が使用後に有意に増加していた。また,立脚期の大腿直筋に有意な交互作用が認められ,高齢群のみ有意な活動増加を示した。【考察】本研究の結果から,歩行アシストは使用直後の歩行速度の増加に対して効果的であることが明らかとなった。統計的に有意ではなかったものの若年者では歩行率が上昇する傾向にあり(p=0.07),高齢者ではステップ長の有意な増加が認められた。このことから,若年者では歩行率,高齢者ではステップ長の増加が歩行速度上昇の主な要因と考えられた。運動学的・運動力学的変化としては,立脚後期の股関節最大伸展角度や荷重応答期の股関節伸展モーメントおよび股関節伸展筋求心性パワーがアシスト使用後に増加していることから,これらが歩行速度の向上に大きく影響した可能性がある。この股関節伸展モーメントの変化と関連する筋活動変化として,大殿筋筋活動が増加したと考えられた。これに加えて,高齢者では立脚後期の股関節屈曲筋遠心性パワーが有意に増加しており,高齢者のみにみられたステップ長の延長に寄与していると思われた。歩行アシスト使用後に歩行動作の変化が見られたことは,この歩行補助装置の有用性の一側面を明らかにしたものと考えられる。【理学療法学研究としての意義】近年,研究開発や臨床応用がすすめられているロボティクスリハビリテーションは,将来的には理学療法の重要な手段となる可能性がある。本研究の結果は,歩行補助ロボットが高齢者や有疾患者の歩行能力の改善を促進させる可能性を示しており,理学療法の発展に寄与すると思われる。
著者
塚越 累 建内 宏重 福元 喜啓 奥村 秀雄 市橋 則明
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.363-369, 2009-12-20
参考文献数
32

【目的】本研究の目的は末期変形性股関節症患者の最大歩行速度に影響を及ぼす因子を明らかにすることである。【方法】片側性の末期変形性股関節症を罹患している女性39名を対象とし,10m最大歩行速度(MWS),患側の股関節可動域(ROM),両側股関節・膝関節周囲筋の最大等尺性筋力および歩行時の疼痛を測定した。MWSに影響を及ぼす因子を決定するために,MWSを従属変数,年齢,ROM,筋力,疼痛および杖使用の有無を独立変数としたステップワイズ重回帰分析を行った。【結果】健側膝関節伸展筋力,患側股関節外転筋力,疼痛および杖使用の有無がMWSを予測する有意な因子として抽出され,その寄与率は62%であった。【結論】健側膝関節伸展筋力は歩行推進力として患側の機能低下を補っていると考えられ,また,患側股関節外転筋力は患側立脚期の体幹・骨盤の安定作用として機能していると考えられる。これら2つの筋力因子および疼痛は末期変形性股関節症患者の歩行において特に重要であることが示唆された。
著者
山本 宏茂 市橋 則明 吉田 正樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.270-273, 1997-07-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究の目的は,大腿筋膜張筋において最大の筋活動が得られる股関節の角度を探り,また,訓練で用いられる動作の筋活動を調べることである。被験者は男性6名,女性4名とした。各股関節角度における股関節外転時の最大等尺性収縮及び4つの動作(椅子からの立ち座り,フルスクワット,膝屈曲60度での片脚起立,両足および片足のブリッジ)を行なったときの整流平滑筋電図を求めた。最大等尺性収縮においては,仰臥位および側臥位において,股関節屈曲0度・45度と股関節外転0度・15度のそれぞれにおいて調べた。その結果,同じ肢位,股関節外転角度において股関節屈曲45度よりも0度の方の筋活動が有意に大きかった。一方,動作の中でもっとも大きな筋活動を示したのは,片足ブリッジ(79%)であった。
著者
遠藤 正樹 建内 宏重 永井 宏達 高島 慎吾 宮坂 淳介 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
巻号頁・発行日
pp.CcOF2078, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 ADLやスポーツでは、肩関節内・外旋運動が繰り返し行われており、内・外旋運動時の肩甲骨運動と肩関節障害との関連が指摘されている。2nd外旋では、肩甲骨の後傾・上方回旋・外旋、鎖骨の後方並進が生ずるとされているが、機能的な問題が生じやすい内・外旋最終域まで詳細に報告したものは少ない。また胸椎の屈曲・伸展は肩甲骨の運動に関連があると考えられているが、内・外旋運動において胸椎の運動を調査した研究はほとんどない。臨床的にも肩関節疾患において、内・外旋運動の障害は多く見られるため、内・外旋運動時の肩甲骨・鎖骨・胸椎の運動や動態を明らかにできれば、効果的な治療が可能になると考える。よって本研究の目的は、1st、2nd、3rdポジションにおける内・外旋運動時の肩甲骨・鎖骨・胸椎の運動を3次元的に明らかにすることとした。【方法】 対象は健常若年男性17名(23±3.9歳)とし、測定側は利き手上肢とした。測定には6自由度電磁センサーLiberty (Polhemus社製)を用いた。8つのセンサーを肩峰、三角筋粗部、前腕中央、胸骨、鎖骨中央、Th1、Th12、S2に貼付し、肩甲骨・鎖骨・胸椎の運動学的データを収集した。測定課題は座位での1st、2nd、3rdポジションの内・外旋運動とし、最大内旋位から3秒で外旋し、最大外旋位で1秒静止保持させ、3秒で最大内旋位まで内旋する運動とした。測定回数は3回とし、その平均値を解析に用いた。解析区間は最大内旋位~最大外旋位までを100%として、解析区間内において5%毎の肩甲骨・鎖骨・胸椎の運動学的データを算出した。なお、肩甲骨・鎖骨・胸椎の運動角度は、胸郭セグメントに対する肩甲骨・鎖骨セグメント、および胸椎はTh12に対するTh1の相対的なオイラー角を算出した。運動軸の定義として、肩甲骨は内・外旋、上方・下方回旋、前・後傾、鎖骨は前方・後方並進、上・下制について解析を行った.統計分析では、解析区間における肩甲骨・鎖骨の動態、および同一角度における内旋運動時と外旋運動時の肩甲骨・鎖骨の動態の違いを分析するために、反復測定二元配置分散分析を用いた。有意水準は5%とした。【説明と同意】 対象者には研究の内容を紙面上にて説明した上、同意書に署名を得た。なお、本研究は本学倫理委員会の承認を得ている。【結果】 1stの外旋では肩甲骨は約17度外旋、約6度下方回旋、鎖骨は約5度後方並進、胸椎は約5度伸展した。2ndの外旋では肩甲骨は約14度外旋、約7度上方回旋、約19度後傾、鎖骨は約11度後方並進・下制、胸椎は約14度伸展した。3rdの外旋では肩甲骨は約12度外旋、約6度下方回旋、約12度後傾、鎖骨は約5度下制、胸椎は約7度伸展した。また、1st、2ndでは肩甲骨・鎖骨・胸椎の全ての運動で、3rdでは肩甲骨内・外旋、上・下方回旋、鎖骨の挙上・下制、胸椎の屈曲・伸展で交互作用が認められ(P<0.05)、同一角度においても内旋運動中と外旋運動中とでは肩甲骨・鎖骨・胸椎の動態が異なっていた。1st、2nd、3rdポジションの共通の傾向として、内・外旋運動の最終域付近において、肩甲骨・鎖骨・胸椎の運動は急な増大を示した。【考察】 外旋運動において、1stでは肩甲骨の外旋・下方回旋、鎖骨の後方並進、胸椎の伸展、2ndでは肩甲骨の外旋・上方回旋・後傾、鎖骨の後方並進・下制、胸椎の伸展、3rdでは肩甲骨の外旋・下方回旋・後傾、鎖骨の下制、胸椎の伸展が同時に生じていた。内旋運動では逆の運動を同時に示した。胸椎は全てのポジションにおいて、外旋運動時に伸展し、内旋運動時に屈曲が生じており、内・外旋運動においても胸椎と肩甲骨の運動が協調していることが明らかとなった。また、3ポジション全てで外旋運動時に胸椎は伸展したが、特に2ndでの伸展角度が大きく、2nd外旋では胸椎の伸展がより重要であることが示唆された。さらに、同じ角度であっても内旋運動中と外旋運動中とでは肩甲骨・鎖骨・胸椎の運動パターンが異なることが明らかとなった。例を挙げると、外旋最終域付近において、外旋運動中には肩甲骨・鎖骨・胸椎の運動が大きくなるのに対して、内旋運動中には肩甲上腕関節の運動が大きくなる傾向にあった。肩甲骨・鎖骨・胸椎の動態は、内・外旋運動の運動方向を踏まえて理解することが必要である。【理学療法学研究としての意義】 肩関節疾患を有する多くの患者において、内・外旋運動時の肩甲上腕関節の可動域低下だけでなく、肩甲骨運動の異常も観察される。臨床的に問題が生じやすい内・外旋運動時の肩甲骨・鎖骨・胸椎の運動や動態が明らかとなり、患者の治療戦略立案にとって有用な情報になると考える。
著者
山内 大士 松村 葵 中村 雅俊 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
巻号頁・発行日
pp.48101284, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】肩関節疾患患者では僧帽筋上部(UT)の過剰な筋活動と僧帽筋中部(MT)・下部(LT)、前鋸筋(SA)の筋活動量低下が生じることが多い。また肩甲骨運動に関しては、挙上運動時に上方回旋・後傾・外旋が減少すると報告されている。そこで肩甲骨機能の改善を目的とした様々なエクササイズが考案され、臨床現場で実施されている。特に、体幹や股関節の運動を伴ったエクササイズは近位から遠位への運動連鎖を賦活し、肩甲骨機能の改善の一助となると考えられている。しかし、体幹運動を加えた時に実際に肩甲骨運動や肩甲骨周囲筋の筋活動がどのように変化するのかは不明である。本研究の目的は、肩関節エクササイズに対して体幹同側回旋を加えた運動と体幹回旋を行わない運動とを比較し、体幹回旋が肩甲骨運動や肩甲骨周囲筋の筋活動に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】対象は健常男性13 名とし、測定側は利き腕側とした。測定は6 自由度電磁気センサーを用い、肩甲骨・上腕骨の運動学的データを測定した。また、表面筋電計を用い、UT、MT、LT、SAの筋活動を導出した。動作課題は、1)立位で肩甲骨面挙上運動(scaption)、2)立位で肩関節90 度外転位、肘90 度屈曲位での肩関節外旋運動(2ndER)、3)腹臥位で肩関節90度外転・最大外旋位、肘90 度屈曲位での肩甲帯内転運動(retraction90)、4)腹臥位で肩関節145 度外転位、肘伸展位での肩甲帯内転運動(retraction145)とした。それぞれの運動について体幹を最終域まで運動側に回旋しながら行う場合と、体幹を回旋しない場合の2 条件を行った。運動は開始肢位から最大可動域まで(求心相)を2 秒で行い、1 秒静止した後2 秒で開始肢位に戻り開始肢位で1 秒静止させた。運動速度はメトロノームを用いて規定した。筋電図と電磁センサーは同期させてデータ収集を行った。肩甲骨角度は胸郭セグメントに対する肩甲骨セグメントの オイラー角を算出し、安静時から最大可動域までの運動角度変化量を求めた。筋活動は最大等尺性収縮時を100%として正規化し、求心相の平均筋活動量を求めた。 またMT、LT、SAに対するUTの筋活動比を算出した(UT/MT、UT/LT、UT/SA)。筋活動比は値が小さいほどUTと比較してMT、LT、SAを選択的に活動させていることを示す。統計処理はエクササイズごとにWilcoxon 符号付順位検定を用い、体幹回旋の有無について肩甲骨運動角度の変化量と肩甲骨周囲筋の平均筋活動量と筋活動比を比較した。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】被検者には十分な説明を行い、同意を得たうえで実験を行った。【結果】1)scaptionにおいて、体幹回旋を加えることで肩甲骨外旋・後傾が有意に増加した。筋活動はMT、LTが有意に増大した。筋活動比はUT/MT、UT/LTが有意に減少した。2)2ndERにおいて、体幹回旋を加えることで肩甲骨外旋が有意に増加した。筋活動はUT、MT、LTが有意に増大した。筋活動比はUT/MTが有意に減少した。3) retraction90、4)retraction145 において、体幹回旋を加えても外旋と後傾には変化がなかった。筋活動はUTが有意に減少した。筋活動比はUT/MT、UT/LT が有意に減少した。【考察】体幹の回旋を加えることで1)scaption、2)2ndERにおいてはより大きな肩甲骨外旋や後傾を誘導し、またMT、LT筋活動を増大させることができた。上肢挙上時の上部胸椎の同側回旋と肩甲骨外旋には正の相関があるとされている。よって体幹の同側回旋により上部胸椎の回旋が生じ肩甲骨外旋は増加し、また肩甲骨外旋を引き出すためにMT、LTが促通され筋活動量が増加したと考えた。 MTやLTの活動が低下し、肩甲骨が内旋・前傾する患者にはこれらのエクササイズに体幹同側回旋を加えることが適していると示唆された。3) retraction90、4)retraction145 では体幹を同側回旋させても肩甲骨の外旋や後傾を誘導することはできなかった。retractionは肩甲骨外旋を大きく引き出す運動であると報告されており、そのため体幹回旋を加えたとしてもそれ以上の肩甲骨運動の変化は見られなかったと考えられる。しかし、UTと比較しMTやLTが選択的に筋活動しやすくなるため、UTを抑制しつつMTやLTの筋活動を高めたい場合には適していると示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究で行った体幹回旋を加えたエクササイズエクササイズを肩関節疾患患者に対する従来のリハビリと組み合わせて用いることで、より効果的な理学療法を行うことができる可能性があり、臨床に生かせる理学療法研究として、本研究の意義は大きい。
著者
池添 冬芽 小林 拓也 中村 雅俊 西下 智 荒木 浩二郎 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
巻号頁・発行日
pp.0376, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】近年,低強度の筋力トレーニングであっても疲労困憊までの最大反復回数で行うと,高強度と同程度の筋力増強・筋肥大効果が得られることが報告されている。しかし,疲労困憊までさせずに最大下の反復回数で低強度トレーニングを実施した場合,高強度と同等の筋力増強・筋肥大効果が得られるかどうか,また筋の質的要因に対しても改善効果が得られるかどうかについては明らかではない。本研究の目的は,健常若年男性を対象に低強度・高反復および高強度・低反復の膝関節伸展筋力トレーニングを8週間実施し,1)低強度・高反復トレーニングは高強度と同程度の筋力増強や筋肥大・筋の質改善効果が得られるのか,2)各項目の経時変化に両トレーニングで違いはみられるのかについて明らかにすることである。【方法】対象は下肢に神経学的・整形外科的疾患の既往のない健常若年男性15名とした。対象者を無作為に低強度・高反復トレーニング群(低強度群)と高強度・低反復トレーニング群(高強度群)に分類した。膝関節伸展筋力トレーニングは筋機能運動評価装置(BIODEX社製System4)を用いて,低強度群では30%1RM,高強度群では80%1RMの強度で週3回,8週間実施した。8回の反復運動を1セットとし,低強度群では12セット,高強度群では3セット実施した。介入前および介入2週ごとに1RM・最大等尺性筋力,超音波測定を行った。1RM・最大等尺性筋力測定には筋機能運動評価装置を用い,膝伸展1RMおよび膝関節70°屈曲位での最大等尺性膝伸展筋力を測定した。超音波診断装置(GEメディカルシステム社製LOGIQ e)を用いて,大腿直筋の筋量の指標として筋厚,筋の質の指標として筋輝度を測定した。なお,筋輝度の増加は筋内の脂肪や結合組織といった非収縮組織の増加を反映している。トレーニングの介入効果を検討するために,各項目について分割プロット分散分析(群×時期)を行い,事後検定にはBonferroni法による多重比較を行った。【結果】分割プロット分散分析の結果,1RM・最大等尺性筋力,筋厚および筋輝度のいずれも時期にのみ主効果がみられ,交互作用はみられなかったことから,いずれの項目も2群間で効果の違いはないことが示された。事後検定の結果,両群ともに1RMおよび最大等尺性筋力はPREと比較して2週目以降で有意な増加がみられた。また両群ともに筋厚はPREと比較して4週目以降で有意に増加し,筋輝度は8週目のみ有意に減少した。【結論】本研究の結果,両トレーニング群ともに筋力増強,筋肥大,筋の質の改善がみられ,その変化の程度や経時変化に違いはみられなかったことから,低強度であっても12セットと反復回数を増やすことによって,高強度3セットのトレーニングと同様の筋力,筋量,筋の質の改善効果が得られることが明らかとなった。
著者
小栢 進也 建内 宏重 高島 慎吾 市橋 則明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.97-104, 2011-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
25
被引用文献数
3

【目的】筋の作用は解剖学的肢位で考えられることが多いが,実際の運動では関節角度変化に伴い,筋の作用や発揮できる筋力が異なる。本研究では数学的モデルを用いて角度変化に伴う股関節周囲筋の屈伸トルクを検討した。【方法】股関節周囲筋を対象とし,生理学的断面積,羽状角,モーメントアーム,筋線維長から股関節屈曲角度を変化させた際に筋が発揮する屈伸トルクを求めた。なお,大殿筋下部線維,縫工筋,腸腰筋は走行変化点を考慮したモデルを用いた。【結果】大腿直筋は屈曲10〜30°で大きな屈曲トルクを有し,伸展域や深い屈曲域ではトルクが小さくなった。一方,腸腰筋は深い屈曲域で強い力を発揮し,伸展域でもトルクは維持された。また,ハムストリングスは屈曲域で大きな伸展トルクを発揮するが,伸展につれて急激に小さくなり,伸展域では大殿筋下部線維が主動筋となることがわかった。内転筋は伸展域で屈筋,屈曲域で伸筋になる筋が多かった。【結論】関節角度によって変化する筋の発揮トルク特性を考慮することで,弱化した筋の特定など筋力の詳細な評価が可能になると考えられる。
著者
中村 雅俊 池添 冬芽 西下 智 梅原 潤 市橋 則明
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.163-168, 2017-04-01 (Released:2017-03-19)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

Many previous studies have reported that static stretching (SS) may decrease muscle stiffness and compromise muscles’ ability to produce maximal strength. However, the effects of SS at different repetition durations and numbers within a constant total time remain unclear. Therefore, the purpose of this study was to examine whether SS for a constant total time (2 min) with different repetition durations and numbers (e.g., 60 s × 2 times, 30 s × 4 times, and 10 s × 12 times) produces different changes in muscle stiffness and strength. Fifteen healthy males (mean age: 23.3 ± 1.0 years) participated in this study. Muscle stiffness was measured during passive ankle dorsiflexion using dynamometer and ultrasonography. In addition, muscle strength of the plantar flexors was measured using a dynamometer at 0° of plantarflexion with the hip and knee joints fully extended. Muscle stiffness and strength were measured before and immediately after SS. Each experimental protocol was conducted in random order with at least a 1-week interval but no longer than a 2-week interval between testing sessions. The results showed that there were no significant interaction effects on muscle stiffness and strength. However, in all experimental protocols, muscle stiffness and strength immediately decreased after SS. In conclusion, SS for a constant total of 2 min decreases muscle stiffness and strength regardless of repetition durations and numbers of each individual SS.