著者
高野 和夫 妹尾 知憲 海野 孝章 笹邊 幸男 多田 幹郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.137-143, 2007 (Released:2007-03-06)
参考文献数
14
被引用文献数
2 4

モモ果実の渋味の近赤外分光法による非破壊測定の方法について検討した.モモの渋味は果肉中の全ポリフェノール濃度と相関が高く,全ポリフェノール濃度が100 g当たり約110 mg以上で強い渋味を感じた.そこで,モモ果実中の全ポリフェノール濃度の推定を400~1100 nmの反射スペクトルから試みたが,誤差が大きく測定不可能と考えられた.しかし,モモのポリフェノールの主要な構成成分であるカテキンとクロロゲン酸水溶液の1100~2500 nmの透過スペクトルを解析すると,1664 nmと1730 nm付近に相関の高い波長域が存在した.そこで,モモ果実の1100~2500 nmの反射スペクトルによる解析を行ったところ,1720 nm付近に全ポリフェノール濃度と相関の高い波長域が存在し,重回帰分析による全ポリフェノール濃度の推定精度はSEP = 14.7 mg・100 g−1FWと比較的高かった.これらの結果から,1100~2500 nmの反射スペクトルを測定することによって,モモ果実の渋味を非破壊的に判別できる可能性が高いと考えられた.
著者
日原 誠介 高野 和夫 妹尾 知憲
出版者
岡山県農業総合センター農業試験場
雑誌
岡山県農業総合センター農業試験場研究報告 (ISSN:13466658)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-8, 2005-07

'あかおにもち'は、岡山県農業総合センター農業試験場において育成された晩生の赤米儒品種で、その来歴及び特徴は次のとおりである。1.1987年に岡山県立農業試験場において、'総社赤米'を母とし、'サイワイモチ'を父として交配を行い、Fl世代からF3世代を集団採種した後、1991年F4世代で個体選抜し、以後系統育種法によって選抜、固定を行って1995年からは岡山赤儒61号の系統名で奨励品種決定予備調査に供試し、あわせて特性検定を実施して栽培特性や加工特性を検討した。その結果、赤米のもち種で、食味が良く、栽培特性も良好であったので、2003年9月に品種登録を申請した。2.出穂、成熟は'総社赤米'とほぼ同じで、育成地では晩生に属するもち種である。3.桿長は'総社赤米'より40cm以上短く、穂数は'サイワイモチ'と同程度で、草型は穂数型に属する。止葉は適度に直立し、籾には赤褐色の長い芒を付け、穂の着粒はやや疎で、脱粒性は中である。4.耐倒伏性は'総社赤米'や'ヤシロモチ'より強いが、穂発芽性は易で、'サイワイモチ'より穂発芽しやすい。5.いもち病真性抵抗性遺伝子型はPia-2を持つとみられ、圃場抵抗性は強い。また、白葉枯病にはやや弱く、縞葉枯病に対しては、抵抗性遺伝子を持たず弱い。6.収量性は、'総社赤米'より高く'ヤシロモチ'より劣る。7.玄米は'総社赤米'に似て、'サイワイモチ'より大きく、粒色は赤で、見かけの品質は'サイワイモチ'と同等である。8.食味は'サイワイモチ'より劣ったが、生もちはピンク色となり、硬化速度は遅い。9.適地は、岡山県南部の標高100m以下の地力中ようから肥沃地で、普通期栽培に適するが、移植期が遅れると減収し、着色も悪くなるので、できるだけ作期を早める。耐倒伏性は強いが、過度の施肥をすると品質が低下するので施肥量は'ヤシロモチ'並とする。また、花粉が飛散して雑種を生じる恐れがあるので、出穂期が近い品種を周辺で栽培しないよう注意する。10.用途としては、紅白もち、赤飯、菓子、観賞用、天然の色素原料などが考えられ、岡山県内の地域特産物として普及が期待される。