著者
板谷 浩男 夏川 遼生 守屋 年史
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.185-191, 2022-10-24 (Released:2022-10-31)
参考文献数
27

都市部における人口増加に伴い,人為活動が都市近郊に生息する猛禽類に悪影響を与えることが懸念されている.本研究では,東京都内の都市近郊に生息するオオタカ Accipiter gentilis の繁殖成功率を調査し,立入制限区域内外での占有巣間の繁殖成功率を比較した.その結果,立入制限区域内の巣では区域外の巣よりもおよそ3倍高い繁殖成功率を示した(63.6% vs. 21.4%).この結果は,都市近郊に生息するオオタカであっても人為活動に対して寛容であるとは限らないことを示唆しており,営巣林での人為活動を制限することが重要と考えられる.
著者
三上 かつら 高木 憲太郎 神山 和夫 守屋 年史 植田 睦之
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.112-123, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

本研究では,渡り性の水鳥類の全国的な渡来地について,規模の大きな渡来地や希少種の渡来地が保護区域に指定されているか,日本に渡来するガンカモ類やシギ・チドリ類の生息に各渡来地がどのように寄与しているのかを解析し,重要な渡来地でありながら保護区域に指定されていない場所の抽出を行なった.河川湖沼の鳥の調査サイト84カ所のうち,35.7%が特別地域,22.6%が普通地域,41.7%が未指定であった.干潟の鳥の調査サイト152カ所のうち,10.0%が特別地域,24.7%が普通地域,66.7%が未指定地域であった.個体数,ラムサール基準値(一部フライウェイ基準値)を超えた種数に着目すると,河川湖沼の鳥が多数訪れるサイトは比較的保護されているが,干潟の鳥が多数訪れる場所については保護指定が遅れている状況が示された.また全ての渡来地を希少種の渡来数に対する寄与率で順位づけしたところ,希少種が多数渡来するサイトは限定的であり,全体的に渡来数数の多いサイトが少数あり,渡来数の少ないサイトが残り多数を占めるという傾向がみられた.したがって,ガンカモ類,シギ・チドリ類といった渡り性の水鳥が集団で生息する特性も考慮すると,保護区による保護が効果的であるといえる.今回検出された寄与率の高かったサイト(大授搦,曽根干潟,泡瀬干潟,宇佐海岸,大阪北港南地区,白川河口など)は優先的に保護区域に指定される必要があるだろう.