著者
三上 修 三上 かつら
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.T11-T21, 2010 (Released:2011-01-08)
参考文献数
15
被引用文献数
1

近年,日本においてスズメ Passer montanus がサクラ Prunus sp. の蜜を吸い,その結果,花を落とす行動がよく見られるようになっている.これにより,サクラを愛でる個人や団体が不利益を被ることになる.そこで、,その程度を定量化する方法を考案した.その方法とは,サクラの樹の下に落ちている花を拾い,スズメによって落とされたものかどうかを判定するものである.本論文では,この方法の利点,問題点をまとめた.また,この方法を用いて評価する限り,盛岡市内および近郊の4つのサクラの名所では,スズメによるサクラへの害は軽微であることが示された.
著者
大山 ひかり 斉藤 真衣 三上 かつら 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.235-239, 2020-10-26 (Released:2020-11-20)
参考文献数
13

積雪時に視認性を高めるために道路上に設置された固定式視線誘導柱に,鳥類が営巣することが知られている.しかし詳しい調査記録はない.そこで本研究では,2019年6月に北海道七飯町の湖沼「大沼」を囲む道路の固定式視線誘導柱において,営巣している種と巣の数を調査した.調査した218本中89本に穴が空いており,89本のうち14本で餌運びまたはヒナの鳴き声が聞こえ,10本で営巣していると推測される出入りがあった.確認された種は,スズメPasser montanus,ニュウナイスズメP. rutilans,コムクドリAgropsar philippensisの3種であった.
著者
藤岡 健人 森本 元 三上 かつら 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.153-159, 2021-10-25 (Released:2021-11-12)
参考文献数
25

都市緑地においてカラス類が営巣している場合,利用者がカラス類に襲われないようにするために,自治体によってその巣が撤去される場合がある.しかし,都市緑地からカラス類の巣を撤去すると,撤去されたペア,あるいは本来そこにあったなわばりの防衛効果がなくなり,周囲の電柱への営巣を助長し,停電のリスクを上昇させ,電力会社による撤去コストを増やしてしまう可能性が考えられる.この可能性を検証するために,北海道電力函館支店の2017年から2018年における巣の撤去記録を用い,カラス類が営巣した電柱と緑地分布の関係を解析した.その結果,カラス類の巣があった電柱は緑地から遠いことが示された.このことから,都市緑地にあるカラス類の巣の撤去は,周辺の電柱への営巣を助長する可能性があるので,撤去をすべきかどうか慎重になるべきと考えられる.また,撤去する場合は,ヒトへの攻撃性の高いハシブトガラスCorvus macrorhynchosの巣を優先的に撤去したり,撤去により周辺電柱への営巣可能性が高まることを電力会社と共有したりすることが有効である.
著者
植田 睦之 岩本 富雄 中村 豊 川崎 慎二 今野 怜 佐藤 重穂 高 美喜男 高嶋 敦史 滝沢 和彦 沼野 正博 原田 修 平野 敏明 堀田 昌伸 三上 かつら 柳田 和美 松井 理生 荒木田 義隆 才木 道雄 雪本 晋資
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.F3-F11, 2014-10-01 (Released:2014-10-15)
参考文献数
29

2009年から2013年まで,全国21か所の森林で繁殖期の鳥類の個体数変化についてモニタリングを行なった.98種の鳥が記録され,そのうち10地点以上で記録された25種を対象に解析を行なったところ,薮を生息地とするウグイスとコルリが減少しており,キビタキが増加していた.ウグイスとコルリはシカの植生への影響が顕著な場所で個体数が少なく,シカによる下層植生の減少がこれらの種の減少につながっていることが示唆された.しかし,シカの影響が顕著でない場所でも減少傾向にあり,今後のモニタリングにより減少の原因のさらなる検討が必要である.
著者
田中 正彦 三上 かつら
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.39-46, 2017 (Released:2018-07-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

2016年9月12日,北海道亀田郡七飯町藤城にてスゲヨシキリ Acrocephalus schoenobaenus 1羽が捕獲された.本種の標識記録としては日本で初めて,確認記録としては日本で2例目である.環境は休耕田で,コヨシキリの群れと行動をともにしていた.当該個体は標識・計測を行った後,性不明幼鳥として放鳥した.
著者
三上 修 三上 かつら 松井 晋 森本 元 上田 恵介
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.A13-A22, 2013 (Released:2013-04-06)
参考文献数
12
被引用文献数
3

近年,日本国内においてスズメ Passer montanus の個体数が減少傾向にあると言われている.この要因として,住宅構造の変化がしばしば挙げられる.具体的には,スズメは住宅など人工物にある隙間に営巣するが,近年になって建てられた住宅は,気密性が高いので,スズメが巣をつくれず,それによってスズメの減少が引き起こされたのではないかというものである.このことは可能性としてはあげられてきたが,実際にそのような影響が本当にあるのか,あるとしてどれくらい影響なのかは,わかっていない.そこで,これらを明らかにするために,岩手県と埼玉県において,1970年代から2000年代のあいだに異なる時期に宅地化された住宅地それぞれのスズメの巣の密度を調べ,比較した.その結果,巣の密度は,岩手県の調査地では,1970年頃にできた古い住宅地は2000年頃にできた新しい住宅地の3.8倍高く,埼玉県の調査地でも,古い住宅地は新しい住宅地の4.8倍高かった.このことから,住宅が新しくなったことで,スズメが巣をつくれなくなり,スズメの減少をもたらした可能性は大きいと考えられる.ただし,住宅が新しくなることによりスズメが営巣しづらくなる詳細なしくみは,岩手県の調査地と埼玉県の調査地のあいだで,異なっていた.今後より広い範囲での調査が必要である.
著者
蛯名 純一 三上 かつら
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1_2, pp.1-9, 2019-12-31 (Released:2021-05-14)
参考文献数
14

青森県下北半島において,2017/2018年の冬から春にかけて,2タイプの声をもつイスカが一つの林に同居していた.片方は通年生息し,繁殖もしている下北個体群のイスカ,もう片方は越冬に訪れた繁殖地不明のイスカである.在来集団については2006年以降標識調査を行っており,計測値を蓄積してきた.今回越冬集団と在来集団について計測値を比較したところ,翼長,尾長,ふしょ長は両者で重複が大きかったが,嘴峰長と体重は偏りがみられた.判別分析でも嘴峰長と体重が寄与しており,在来集団は相対的に嘴が短く体重が軽い,越冬集団は嘴が長く体重が重いという特徴があった.嘴峰長の違いはおそらく繁殖地で多く利用している餌資源の違いを反映しているだろう.越冬集団の重い体重は渡り前に体重を増加させていたためかもしれない.
著者
三上 かつら 植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.T1-T8, 2016 (Released:2016-04-08)
参考文献数
12

亜種サンショウクイと亜種リュウキュウサンショウクイの音声を比較し,両亜種の違いを記述するとともに,簡便な計測および判別方法を開発した.7つの音声要素に着目し,両亜種の平均値を比較したところ,先頭の周波数,第1音素の最大周波数,最高周波数,最大音圧の周波数,最初の音素の最大周波数から最後の音素の最大周波数を引いた値,計5つの要素で有意な違いがみられた.亜種サンショウクイに比べ,亜種リュウキュウサンショウクイのほうが,全体的に音が高く,音色がフラットまたは尻下がり調子になる傾向があるといえる.線形判別関数の利用および特定の変数の値と95%信頼区間を比較するという2つの方法で、判別方法の実用性を確認した.神奈川県で録音された4例の亜種不明サンプルをこれらの方法で判定したところ,4例すべてが亜種リュウキュウサンショウクイであると判定された.今回用いた方法は録音状況があまり良くない音声記録にも用いることができ,サンショウクイ2亜種の判別に有効だと思われる.
著者
伊関 文隆 三上 かつら 佐藤 達夫
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.3-23, 2021-06-30 (Released:2021-07-01)
参考文献数
34

タカ目の種は初列風切を最内側のP1から最外側のP10へと順番に換羽する標準的な換羽様式を行うと言われていた.しかし,近年タカ目であるツミAccipiter gularisにおいて初列風切の中央を最初に換羽する新たな換羽様式を行うものがいると報告された.しかし,その換羽様式は全容解明には至っておらず,更なる調査が必要である.そこで,著者らはツミの若鳥の換羽様式を調査し,本報ではその順序,時期および雌雄差について報告する.調査は,写真(146例),剥製(56例),飼育された鳥(1例)の3つの材料を用いて翼の換羽データを収集した.そこから換羽の順序を見積もるために2つの異なる方法を用いて解析した.1つは換羽した部位の分布から推定する方法であり,もう1つは非対称の換羽の位置から推定する方法である.換羽における性別,時期別,地理別の違いの有無を調べるために統計解析を行った.これらの解析により,ツミの独特な換羽様式が得られた.いくらかの個体は初列風切の中央から換羽を始め,内側と外側の両側に向かって順番に換羽する散開式換羽を行い,そしてそれは越冬期に行われた.加えて,散開式換羽を行うものは雌より雄の方が換羽が早く行われた.さらに,次列風切ではS2がS1より先に換羽した.このような一般的ではない換羽様式とそれに関連する現象(渡りや換羽時期)の解明は換羽の進化をより深く理解する一助となる可能性があり,更なる調査が必要である.
著者
荒 奏美 三上 かつら 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.43-51, 2019-04-23 (Released:2019-05-14)
参考文献数
23
被引用文献数
1

ハシボソガラスは,硬い殻に包まれたオニグルミの種子を食べるために,しばしば車に轢かせて割る.この行動は,車という人間の作り出した道具を利用する点で興味深い行動である.しかし,これに関する研究は1990年代に仙台市で研究されて以来行われていない.そこで本研究では,2016年の10–12月に函館市内において,この行動の観察を行い,仙台市で観察された行動と比較した.その結果,仙台市で観察されたクルミ割り行動とはいくつかの違いが見られた.特に大きな違いは設置方法についてであった.仙台では信号に止まった車の前にクルミを置く行動が観察されていた.これはクルミを割るには効率的な方法と思われる.しかし本研究の観察では,ハシボソガラスは電線などの高い所からクルミを落として設置していた.函館市におけるハシボソガラスのクルミ割り行動は仙台市の事例に比較するとまだ効率化が進んでいないと推測された.この違いをもたらす要因として,環境条件およびクルミの状態の違いなどが考えられた.
著者
三上 かつら 植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.A33-A44, 2011 (Released:2011-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

アンケートや文献調査から,亜種リュウキュウサンショウクイ Pericrocotus divaricatus tegimae の西日本における分布拡大状況を把握した.1970年代に南九州に生息していた本亜種は,2010年までに九州北部・四国・紀伊半島においても確認されるようになった.生息地では留鳥であるが,一部個体は冬には繁殖地より暖かい中~低標高地へ移動している可能性もある.生息環境について,亜種サンショウクイ P. d. divaricatus と比較すると,両亜種のニッチは似通っているもしくは連続的であった.現在,繁殖期は亜種サンショウクイの方が北の地域に生息しているものの,越冬期は亜種リュウキュウサンショウクイの方が北の地域に生息していることから,両亜種の分布の違いは寒さへの生理的耐性では説明できない.1980年代に亜種サンショウクイが減少し,空いた地域で亜種リュウキュウサンショウクイが夏に繁殖できるようになり,さらに越冬するようになったものと示唆される.環境条件から推定した生息可能域は,関東地方にまでおよぶことがわかった.
著者
三上 かつら 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.227-236, 2015 (Released:2015-12-13)
参考文献数
37
被引用文献数
1

都市の生物多様性に対する関心は高まってきており,都市化を測る生き物として,鳥類はしばしば注目される.鳥類が都市の中のある場所において,どこをどのように使っているかという情報は,都市における生物多様性の創出や維持管理のために役立つだろう.都市には多様な環境が含まれており,特に小鳥類にとっては,数m離れた場所は,別の環境を意味することがあると考えられる.しかしながら,都市環境でそういった小さいスケールで特定の鳥類の環境利用を調べた研究例はほとんどない.そこで本研究では,岩手県内の住宅地において,冬期のスズメを対象に,住宅地にどのくらいいて,どのような場所を利用しているのかを調査した.特にスズメがなぜその環境を選んだか,に関わる要因として,季節性と営巣場所に着目した.群れの観察は2012年10月から2013年4月にかけて,営巣場所の探索は2012年と2013年の繁殖期に行った.厳冬期には,スズメの個体数が減り,群れは大きくなった.これはシーズンの進行がスズメの行動に影響することを示している.冬期のスズメの群れは,大部分が古巣または新巣から半径40 m以内でみられた.これは古巣をねぐらとして利用していることと,古巣の近くにまた翌年の巣をつくることが多いことから,スズメが営巣場所周辺に強い執着を持っているものと考えられる.また,餌がとれそうな未舗装の場所をよく利用していた.ただし,地形や構造物など他の要因もかかわっている可能性があり,採餌場所の選択については今後,検証が必要だと思われる.営巣場所への執着が強いことは間違いないと考えられるため,衛生や管理上の目的で,スズメが高頻度に利用する場所をコントロールしたいとき,巣箱の設置が有効である可能性がある.
著者
三上 かつら 平野 敏明 植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.A33-A44, 2018

<p>都市環境の鳥類相は,時間の経過とともに変化する.21世紀初頭の住宅地環境における鳥類群集の特徴を記述するため,特定非営利活動法人バードリサーチが全国的に行なっている参加型調査"ベランダバードウォッチ"のデータを解析した.住宅地の鳥類について,1)記録地点数の多い種は何か,2)記録率の高い種は何か,3)季節によりどのような違いがあるか,4)種数の年変動はどのくらいあるか,5)住宅地で記録された外来種,を明らかにした.その結果,繁殖期,越冬期を通じて,記録地点数,記録率ともに最も高かったのは,スズメとヒヨドリだった.よくみられる種の大部分は,人工構造物,街路樹,植栽に依存する,またはそれらを利用可能な種だったが,そうではない種もあった.季節による種のランクが大きく変動したのはメジロ,カワラヒワ,ハクセキレイ,ウグイスなどで,その理由として,鳥の個体数の変化のほか,行動の季節変化や餌台による誘引,観察者による認識のしやすさが考えられた.長期調査によると,住宅地では,地点ごとに観察される種数は,繁殖期には安定しているが,越冬期は繁殖期よりばらつきが大きいことが示された.調査地点数や調査年数を増やしていくことで更なる発展が望める.そのためには,ベランダバードウォッチは参加型調査であるため,調査結果を定期的に還元するなどの工夫が必要と考えられた.</p>
著者
蛯名 純一 三上 かつら 仲村 昇
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.43-47, 2015

<p>We investigated the structure and materials of two nests of the Common Crossbill <i>Loxia curvirostra</i> collected in Shimokita Peninsula, Aomori Prefecture, Japan. The nest bowl was constructed of pine twigs with bark, shredded bark, wood-chips, other twigs, chemical fiber yarns, staple fibers, grasses, pine needles, feathers, rhizomorphs, animal hairs and fishing line. These materials were utilized in different manner in the exterior and interior nest bowl. Pine twigs with bark were used only for the most exterior portion, whereas the middle and interior parts consisted mainly of shredded bark of <i>Cryptomeria japonica</i>. Harder objects, such as twigs, wood chips and flexible fishing line, used for the middle part, served as a framework to produce a space between fibers and strings, creating a spongy layer of air. The area around the interior nest bowl was composed of thinner bark strings than the middle and outer nest bowl. Chemical fiber yarn, feathers and animal hairs were also found around the interior bowl.</p>
著者
三上 修 三上 かつら 森本 元 上野 裕介
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.A11-A19, 2021 (Released:2021-04-30)
参考文献数
21

都市に生息する鳥類は,大量にある電柱電線を足場として利用している.その止まり方にパターンがあるかどうかを国内7都市で調査した.その結果,次のことが明らかになった.(1)止まる場所全体に対する電柱および電線を利用する割合は,種によって違っていた.(2)鳥類は,越冬期よりも繁殖期に,電柱および電線に頻繁に止まっていた.(3)体重が重い鳥種ほど,電線よりも電柱に止まる傾向があり,また,電線に止まる場合でも,電柱に近い部分に止まっていた.(4)多くの鳥種が最上段の線によく止まっていた.
著者
荒 奏美 三上 かつら 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.43-51, 2019

<p>ハシボソガラスは,硬い殻に包まれたオニグルミの種子を食べるために,しばしば車に轢かせて割る.この行動は,車という人間の作り出した道具を利用する点で興味深い行動である.しかし,これに関する研究は1990年代に仙台市で研究されて以来行われていない.そこで本研究では,2016年の10–12月に函館市内において,この行動の観察を行い,仙台市で観察された行動と比較した.その結果,仙台市で観察されたクルミ割り行動とはいくつかの違いが見られた.特に大きな違いは設置方法についてであった.仙台では信号に止まった車の前にクルミを置く行動が観察されていた.これはクルミを割るには効率的な方法と思われる.しかし本研究の観察では,ハシボソガラスは電線などの高い所からクルミを落として設置していた.函館市におけるハシボソガラスのクルミ割り行動は仙台市の事例に比較するとまだ効率化が進んでいないと推測された.この違いをもたらす要因として,環境条件およびクルミの状態の違いなどが考えられた.</p>
著者
嶋田 哲郎 植田 睦之 高橋 佑亮 内田 聖 時田 賢一 杉野目 斉 三上 かつら 矢澤 正人
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.A1-A12, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
9

GPS-TXは発信機内のGPSにより得た位置情報を無線で受信機に送信し,受信機で記録を残すシステムである.位置精度の誤差は6m,測定範囲は平地など開けた環境では受信機の位置を中心に半径10km以上の範囲をカバーするため,開けた環境で活動するガンカモ類を詳細に追跡するときに有効である.またGPS-TXではリアルタイムに位置情報を取得することができるため,位置情報を得られた時点の環境をすみやかに確認できる利点もある.こうした特性を生かし,2015/16年と2017/18年の越冬期における伊豆沼・内沼周辺のオオハクチョウ Cygnus cygnus,オナガガモ Anas acuta,マガモ A. platyrhynchosの環境選択をGPS-TXによって明らかにした.オオハクチョウは昼行性でハス群落の分布する岸よりの水面や給餌場所に滞在したほか,沼周辺の農地でも活動した.オナガガモは昼行性,夜行性いずれの特徴もみられ,2015/16年では,給餌場所を中心に分布しながらも,沼の北部から東部の農地へ夜間移動した例もあった.夜間に移動した農地までの距離は伊豆沼から平均2.5kmであった.2017/18年では,給餌場所を中心に分布し,昼間は餌付けがなされる駐車場付近に多く,夜間は給餌場所の奥まったヨシ群落周辺に分布した.マガモは夜行性で,雌雄とも伊豆沼西部に滞在し,夜間沼北部の農地へ移動した.夜間に移動した農地までの距離は伊豆沼から平均4.5kmであった.農地における土地利用をみると,オオハクチョウとオナガガモは乾田を,マガモは湛水田を選択した.GPS-TXはガンカモ類の環境選択を明らかにするときに有効な手法であり,さらに多くの種の追跡を行なうことでそれらの越冬生態を明らかにすることができると考えられる.
著者
嶋田 哲郎 植田 睦之 高橋 佑亮 内田 聖 時田 賢一 杉野目 斉 三上 かつら 矢澤 正人
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.A15-A22, 2019 (Released:2019-08-02)
参考文献数
14

鳥類や哺乳類の行動調査を目的として開発されたGPS-TXは,発信機内のGPSにより得た位置情報を無線で受信局に送信し,受信局で記録を残すシステムである.2017/18年と2018/19年の越冬期に伊豆沼・内沼周辺においてマガモ Anas platyrhynchos 16個体,カルガモ A. zonorhyncha 2個体のGPS-TXによる追跡を行った.マガモは夜行性で,雄雌ともに夜間の行動パターンにはばらつきがあり,沼内に滞在する個体がいた一方,沼外では伊豆沼から北側に位置するハス田や湛水田,ため池,河川などに分布した.カルガモもマガモと同様に夜行性で,沼から北側の狭い用水路(川幅<5m)やハス田,湛水田などに分布した.河川や広い用水路にはみられず,狭い用水路でみられた割合が高かったことがマガモと異なる点であった.今後,GPS-TXの改良とともに追跡できる対象種が増えていく中で,越冬期のカモ類追跡においてさらなる展開を期待できる.
著者
田中 正彦 三上 かつら
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-15, 2017 (Released:2018-07-25)
参考文献数
9

北海道の渡島半島にある七飯町の休耕田において,1990年から2014年までの間に,標識調査で捕獲された鳥類について報告する.この期間中に,のべ 37,868羽,108種が放鳥された.放鳥数が多かった鳥類種は,上位から,オオジュリン,カシラダカ,アオジ,ツバメであった.本調査地の特徴として,秋季のカシラダカ放鳥数が多いことと,オオジュリンの回収にかかわる記録が多いことが挙げられる.カシラダカは,七飯町を含む渡島半島で秋季には多く見られることから,音声誘引と地形的要因が集中を強化したものと思われる.オオジュリンは,秋季・春季ともに当地で数多く捕獲され,181個体が当地で放鳥され他地域で回収された,359個体が他地域で放鳥され当地で回収された.本調査地を通過するオオジュリンを地図上に可視化させると,初放鳥または再捕獲地点は日本海側・太平洋側を問わず日本全国(一部国外も含む)に及んでいた.七飯町は,日本のオオジュリンにとって,重要な渡りの中継地のひとつとなっていると考えられる.ツバメとショウドウツバメは当地を夏のねぐらとして利用していた.
著者
中川 優奈 三上 かつら 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.133-143, 2017
被引用文献数
4

近年,都市の鳥類多様性に関する注目が高まってきている.河川は鳥類の群集構造に大きな影響を与えうる環境であるにもかかわらず,都市の鳥類多様性にどのような影響を与えるのか,定量的に評価された例は少ない.そこで本研究では,函館市内を流れる亀田川において,上流から下流にかけて,およそ1 kmごとに河川付近に調査地点を設定し,それぞれの地点で見られる鳥の種数と個体数を,繁殖期と越冬期の2つの時期で調査した.ここから,上流下流のどこで種数が多いのか,それらが季節によって異なるのかを検証した.調査の結果,河川沿いと住宅地では,繁殖期,越冬期ともに,河川沿いの方が有意に種数が多かった.このことは亀田川のような河川の存在が都市の鳥類の種の多様性を高めていることを示している.河川沿いにおける種数は,繁殖期には上流ほど種数が多いのに対し,越冬期では逆に下流の方で種数が多かった.これは繁殖期にはカッコウをはじめとした山に近い上流側の環境で繁殖する鳥が多く見られたのに対し,冬季はカモ類が流れの緩やかな下流の環境を利用したためと考えられた.このような種数の多さが季節によって逆転するということは,面積の影響が強くでる孤立した緑地と河川では都市の生物多様性に与える影響が異なっている可能性を示している.