著者
山川 祥秀 守屋 正憲
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.16-21, 1983 (Released:2007-07-05)
参考文献数
17
被引用文献数
4

‘カベネル•フラン’のウイルスフリー樹と汚染樹の果汁成分の経時的変化を, 1982年に, それぞれ4年生の自根樹を用いて調査し, 次の結果を得た.1. 9月下旬, ウイルスフリー樹の果粒は果重2.15g, 果径14.5mm (果房重240g), 汚染樹のそれらは1.80g, 14.0mm (果房重170g) の最大値に達し, ウイルスフリー樹の果粒の方が重かった.2. 汚染樹の果汁糖度は9月上旬12%に達した後, 全く増加が見られなくなった. 一方, ウイルスフリー樹の果汁糖度は9月上旬以降も順調に増加し, 9月下旬18%に達し, 汚染樹のそれを5~6%も上回った.3. 9月30日, 汚染樹のグルコースは5.75%, フラクトースは5.49%であった. 一方, ウイルスフリー樹のグルコースは8.43%, フラクトースは8.96%であって, 汚染樹のそれらを大きく上回った.4. 果汁酸度は9月下旬, 汚染樹の0.90g/100mlに対し, ウイルスフリー樹は0.60g/100mlと低く, 低酸度であった.5. 9月30日, 汚染樹の酒石酸は0.900g/100mlと高く, リンゴ酸は0.388g/100mlであった. 一方, ウイルスフリー樹の酒石酸は0.664g/100ml, リンゴ酸は0.284g/100mlで, 共に汚染樹より低かった.6. 完熟期, ウイルスフリー樹の果汁pHは3.30, 汚染樹のそれは3.20であった.7. 仕込み5か月後の利き酒によると, ウイルスフリーー樹のワインは品種特有のアロマが強いが, 酸味, 渋味がやや不足した. 一方, 汚染樹のワインはアロマが劣るが, 酸味, 渋味は強く, 赤色も濃かった. したがって, 低酸含量となりがちなウイルスフリー樹の場合, 原料果実の収穫, 仕込み時期の選択に問題があるものと思われた.