著者
守隨 治雄
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.13-23_1, 1999-09-15 (Released:2011-02-25)
参考文献数
45
被引用文献数
2 1

地すべり運動が生じると地すべり土塊はより安定な位置へ移行するが, 第三紀層地すべりでは, 繰り返し再活動が生じている。その原因としては, 移動するにつれてすべり面がよりすべり易い性状や鉱物組成に変化している可能性がある。そこで, 本研究は, それらを解明するために, 運動履歴の異なる5つの第三紀層地すべりを選び, 主として, 地質学的観点から, 第三紀層地すべり地におけるすべり面の発達過程とすべり面粘土の生成を調べた。その結果, 粘土化するほど土の摩擦抵抗は低下すること, 粘土の中でもスメクタイトの摩擦抵抗はとくに小さいことを考慮すると, すべり面付近が凝灰岩もしくは凝灰質な地質よりなる第三紀層地すべりが繰り返し再活動する原因は, 移動に伴うすべり面近傍の粘土分の増加と地下水の影響によるスメクタイトの生成にあることがわかった。
著者
釜井 俊孝 寒川 旭 守隨 治雄
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.285-298, 2008-02-10 (Released:2010-03-26)
参考文献数
20
被引用文献数
2

今城塚古墳と西求女塚古墳に見られる, 墳丘の地すべりを記載し, 地すべりの発生原因, 移動メカニズムについて考察した. 今城塚古墳では, 新たな年代測定値が得られ, 古墳の崩壊が, 1596年慶長伏見地震によるものであることがほぼ確実となった. トレンチでの観察から, 地すべりの過程は, 震動による盛土のブロック化→基盤粘土中のすべり面の形成 (地すべりの発生) →長距離移動 (基盤粘土の流化) のプロセスをたどったと推定される. また, こうした推定は, 盛土と基盤粘土の土質試験結果からも支持される. 西求女塚古墳では, トレンチでの観察と基盤砂層の動的変形試験結果から, 古墳の南半分が載っていた基盤砂層の液状化によって, 盛土が引きずり落とされるように滑ったものと推定される. 古墳自体は入念に作られたものであり, 多くの場合, 古墳における崩壊・地すべりの主な原因は, 基礎地盤の問題であると考えられる. すなわち, 古墳の地すべりは, わが国のような活発な変動帯に立地する都市において, 基礎地盤情報の収集が, 災害のリスク評価の精度を左右する, 極めて重要な要因であることを示している.