著者
山口 満 安井 一郎
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

戦後初期の中学校における日常生活課程の実践事例として、(1)甲府北中プラン、(2)福井三国中プラン、(3)岩手黒沢尻プランの3つ取り上げ、資料収集、当時の関係者からの聞き取り調査、卒業生を対象にしたアンケート調査などを実施した。(1)については、既に前年度中に調査を行い、それに基づく研究論文を発表しているので今年後は(2)と(3)の研究を中心にして進めた。その研究の成果を平成4年10月に文教大学で行われた日本特別活動学会第一回大会で「戦後初期における教科外活動の教育課程化に関する一考察ー日常生活課程の成立と展開に着目してー」と題して発表するとともに、筑波大学教育学系論集および名古屋学院大学論集に発表した。このような研究活動を通して、およそ次のような知見が得られている。1.日常生活課程の実践は、「個性豊かな民主的実践人」の育成をはかるという戦後の教育の課題に応える学校づくりの過程で生まれてきている。2.小学校の日常生活課程と比較したばあい、中学校の実践では、(ア)教科学習との正別が明瞭である、(イ)生徒会活動との結びつきがつよい、(ウ)個別的なガイダンスとの関係が問題になっている、(エ)職業教育との関連がつよいなどの特色がある。実践的な活動の分野として取り上げやすいものと取り上げにくいものがはっきりとしており、すっきりとする反面、内容のバラエティに欠けるという問題がみられた。3.甲府北中、福井三国中、黒沢尻中のいずれにおいても、地域の中学校におけるカリキュラム改造運動に一定の影響を与えるとともに、今日に至るまで特別活動の指導の分野でその影響が残っている。4.戦後の教科外活動の教育課程化の論理や実践形態を明らかにする上で、日常生活課程に注目することの重要性が改めて確認された。