著者
澤田 傑 上坂 克彦 加藤 知行 森本 剛史 小寺 泰弘 鳥井 彰人 平井 孝 安井 健三 山村 義孝 紀藤 毅
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.2190-2194, 1996-11-01
参考文献数
17
被引用文献数
4

症例は52歳の女性.1981年7月,S状結腸癌を伴う大腸腺腫症の診断で結腸全摘および直腸低位前方切除術を施行した.1985年8月,CTで腹腔内デスモイド腫瘍が疑われタモキシフェン,スリンダクの内服治療を行い臨床上縮小した.1995年7月,内視鏡にて十二指腸多発性腺腫,および十二指腸下行部のVater乳頭対側に3個の腺腫内癌を診断した.9月7日全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除の予定で開腹したが,小腸間膜を広範に巻き込むデスモイド腫瘍のため再建不能と判断し十二指腸壁を切開し主だった腫瘍を摘出,小ポリープは可能な限り焼灼した.大腸腺腫症に十二指腸病変は高頻度に合併するが,傍乳頭部領域以外の部位から発生した多発性十二指腸癌の報告例はまれである.また,この際腸間膜のデスモイド腫瘍を併発すると外科的治療に制約が加えられることが有りえるので治療法の選択上注意が必要である.