- 著者
-
安川 由貴子
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究では、個として確立していくことが重視される現代社会の中で、G.ベイトソンのコミュニケーション論を基軸にして、共同性と個人の問題について生涯学習の観点から考察を行った。それは、自己実現、自己決定といった個への重視が、逆説的にどのように個を疎外していくのかを、もう一方の共同性という概念で対比しつつ、実証的に把握する試みである。ベイトソンは、個という存在をすでに共同性や環境のシステムの中に含みこまれている存在として捉えていくことにより、個人を軸とした近代西欧思想に特有の観念を乗り越えようとしていた。その萌芽は、現在の日本社会の過疎地域における生涯学習的な実践や、アルコール依存症のセルフヘルプ・グループの実践においても見ることができた。