著者
菊森 幹人 西田 伊久男 西村 孝義 安平 公夫 中井 伸子 西口 保幸 岩倉 啓子 長沢 久充 鷲見 信好
出版者
日本毒性学会
雑誌
Journal of toxicological sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.153-163, 1995-12-25
参考文献数
12
被引用文献数
9

Montirelinをマウス, ラットでは静脈内および筋肉内投与, イヌでは静脈内投与した後, 14日間の観察を行い, 単回投与毒性を検討した。1. LD_<50>値は, マウス静脈内投与で雌雄とも500mg/kg以上, ラット静脈内投与で雌雄とも200 mg/kg以上, マウス, ラットの筋肉内投与で雌雄とも20 mg/kg以上と推定された。また, イヌ静脈内投与で最小致死量は雌雄とも200 mg/kg以上であると推定された。2. 一般症状として, マウス静脈内投与では投与中〜投与後30分に振戦, 自発運動の減少が125 mg/kg以上の投与群で認められ, マウス筋肉内投与では投与後5分〜投与後2時間に振戦が5 mg/kg以上の投与群で認められた。ラット静脈内投与では投与中〜投与直後に振戦が50 mg/kg以上の投与群で,自発運動の減少, 失調性歩行が200 mg/kg投与群で認められ, ラット筋肉内投与では投与後5分〜投与後30分に振戦が5 mg/kg以上の投与群で, 流涎が20 mg/kg投与群で認められた。また, イヌ静脈内投与では投与中〜投与後6時間に興奮, かみつき, 発声, 散瞳, 流涎, 排尿, 排便, 舌なめずり, 嘔吐, 心拍数増加, パンティング, 体温上昇, 振戦および結膜充血が12.5mg/kg以上の投与群で認められた。3. 体重, 摂餌・摂水量の推移および病理学的検査では, 被験物質投与に起因したと思われる変化は認められなかった。(試験期間 : マウスi.v. ; 1985年9月17日〜1985年12月10日, マウスi.m. ; 1987年3月2日〜1987年8月31日, ラットi.v. ; 1985年9月17日〜1985年11月30日, ラットi.m. ; 1987年3月2日〜1987年8月31日, イヌi.v. ; 1985年12月10日〜1986年4月30日)
著者
安平 公夫
出版者
京都大学
雑誌
京都大学結核胸部疾患研究所紀要 (ISSN:00093378)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.33-37, 1968-03-30

先の報告(1964)で明らかにされたように, 生後早期に3-Methylcholanthrene (MC)の大量を投与されたマウスでは, そのリンパ組織に著しい障害が現れ, 脾, リンパ腺の芽中心の発育障害, 胸腺皮質の所謂胸腺細胞の消失等が結果される。Mac Lean et al. (1957)によって指摘されたように, 臨床的にも胸腺腫がagammag-lobulinemiaを伴って現れることが屡々みられるが, これは腫瘍発生に当って何等かの免疫障害がみられるかもしれぬとゆう予想を与える材料である。生下時MCを投与された動物にリンパ組織障害があり, またこれらの動物に, 後になって胸腺腫が現れるとゆう著者の実験成績は, 最近リンパ球或はリンパ組織が, 免疫産生を演ずる主役の一つとして注目されてきた点を考慮して, MC投与動物で抗体産生能を明らかにしようとする本実験の企てを招来した。実験にはCF1 Swissマウスを使用。MCはheavy mineral oilに溶解。生後1&acd;8日の動物に, 体重当り0.2mgを腹腔内に注入。其後4&acd;5週目において動物の感作処置を行った。抗原としては結晶卵白アルブミン(EA)を用い, これをcomplete Freund's adjuvantに0.4%の割に溶解。その0.1mlを週1回, 2-3週に亘って腹腔注射し, 対照として同年令の無処置マウスにも同様の感作処置を施した。最後感作処置後15日で動物を屠殺, 採血すると共に臓器を保存し, 後に組織学的検査を行った。血清中の抗体の測定にはOuchterlonyの法を使用し, 抗原としてはEAの5万倍溶液及びtuberculoprotein (TP)の200倍液を使用した。結果は表に示した通りで, MC投与動物では, EAに対する抗体の出現が明らかに抑制されるとゆう成績を得た。しかしその抑制効果は主としてEA 2回感作群にみられたもので, EA感作が3回に及ぶと, かえってその抗体価が高く現れる傾向が伺えた。この矛盾は, EA感作に使用したadjuvautの, 抗体産生臓器剌戟効果によるもののようである。即ち前回の実験で示されたMCのリンパ組織障害効果は本実験では出現せず, かえって脾, リンパ腺の肥大を示す動物が, 抗原剌戟の後に現れた。組織学的にこれを検すると, これらの肥大臓器には幼若骨髄球が多数に出現し, その一部では恰も類白血病的増殖が示された。これらの変化は, adjuvantに含有されている結核死菌の剌戟によって齎されたものと推察されるのであって, これがMC処置動物の低免疫能状態を明らかにしようとした本実験の主要な障害となって現れた。しかしcomplete adjuvantの幼若動物注射によって齎されるこの類白血病性の変化自体は, 新しく提起された別の問題である。発癌剤の注射で惹起される低免疫状態と発癌との関連を明らかにしようとする本実験の手技の改善と共に, この類白血病性変化のその後の進展が, 残された問題として今後研究対象となるであろう。