著者
石幡 浩志 島内 英俊 静谷 啓樹 安田 一彦 庄司 茂 山田 志保子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

ISO/IEC15693におけるRFIDの通信周波数は短波帯(13.56MHz)であり,この帯域の電波については生体軟組織を通過することは既に確認されている。本研究以前に、本研究実施者の研究により、歯の内部に無線ICタグが格納された際,比較的電子密度の高い硬組織を電波が通過できる可能性について、中波帯の小型RFIDタグを用い,これをヒト抜去歯内部に格納した際の影響は、5パーセント未満の通信距離の減少にとどまり、少なくともRFIDをヒトの歯の内部に格納しても,外部にあるリーダーとの通信にはさほど影響を与えないことがわかった.そこでまず本研究では、SUICAやエディなどのセキュリティ機能を持つRFIDが使用される周波数帯である13.56MHzにおけるRFIDの口腔内設置を念頭に、ISO/IEC15693(近傍型)RFIDを用いて,直径3mm,長さ8mmの小型無線ICタグを作成,埋め込み前の状態で3cmの通信距離を確保した.これをビーグル犬における歯内療法を実施した犬歯歯髄腔内部に設置したところ,約0.5W出力を有するハンディリーダ・ライター(FPRH100:マイティーカード株式会社)を用いて,口腔周囲組織を介して顔面側方部から口腔外にあるリーダーと通信可能であることが実証された。そしてその際の通信距離は2.5cmと推定された.さらに、この試作したRFIDが口腔内に設置された状態で、携帯電話に内蔵したリーダー通信を実施するため、リーダーの小型化を実施したところ、幅1cm、長さ3cm厚さ2mmのアンテナから、口腔内にあるRFIDへの通信が可能となった。携帯電話と口腔内に設置したRFIDの通信はステルス性が高く、セキュアな本人確認に威力を発揮すると見られるが、充分な通信距離を確保し,かつ情報漏洩を防止する観点から,通信距離を10cm程度にコントロールするのが適切と思われる.