著者
安田 浩志 齋藤 豪 中嶋 正之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.255-261, 2009-02-01

工業製品の評価及び映画を含むエンターテイメント分野において,実際の人間による実現が困難な場面でのシミュレーションを行うため,計算機上で人体機構を再現する手法への需要が高まっている.本論文では特に人体のもつ機構特性の一つである関節可動域に注目し,簡略化された球関節人体モデルにおいて関節可動域のもつ解剖学的特性を再現する手法を提案する.多関節筋による影響から,一部の関節可動域は完全に独立ではなく隣接する関節の状態に大きく影響を受ける.しかし,関節ごとを独立に扱う従来の可動域表現ではこの変化を再現することができない.提案手法では,モーションキャプチャ装置を用いて混合正規分布による確率密度関数として関節可動域を決定する.まず,自己組織化マップにより非均一である計測データからの安定した関節可動域推定を実現し,次に正規分布間の共起関係により,複雑な筋骨格モデルを用いることなく多関節筋による影響の近似を可能にした.